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What color?

「オレンジってこむぎっぽい」

その人はわたしのテラコッタに塗った爪を見てつぶやいた。「ネイル変えた?」

この時以外にも度々、オレンジ系を見れば「こむぎの色だ~」と言った。
どうやらこの人にはわたしがオレンジに映っているらしい。

他人から自分がどう見えているかなんてわからないものだけれど、この人のなんてことない言葉からは、"わたしってそう見えるんだ"と驚かされることがたまにあった。いい意味で。
このやりとりからもそれを感じた。
少しこそばゆいけれど嬉しいものだな。
オレンジか、そっか。


社会人2年目のとき、ひとつ年上の先輩が誕生日に一冊の写真集をくれた。

「本屋さんで一目見て、『わ!こむぎさんだ!』って思ったの」

その写真集がこちら。

なんて素敵な写真なんだろう。
先輩はこれをわたしみたいだと言ってくれるんだ。胸の奥がギュッとなって、なんだかこみ上げるものがあった。

盛り上げ役に回ることが多いわたしと違い、先輩はいつも凛としていて物静かで上品な人だった。

わたしは先輩が大好きだったし憧れていたけれど、周りのおじさん達から比べられいじられるうちに、彼女みたいな人が女性として『正解』で、わたしは不正解なんだろうな、というコンプレックスを抱いていたりもした。
わたしも若く繊細だったのだ。

なのに。
わたしが白い百合のようだと思う大好きな先輩は、わたしのことをこんな風に、ひまわりみたいな花に見てくれていたらしい。泣いちゃうな。


あの頃のわたしは盛り上げなきゃ、いつも笑顔でいなきゃと気を張って生きていたので、黄色なんて良く言い過ぎですよ‥ちょっと無理してるし‥と思ったりもした。

いまはそういう気張りとかキャピキャピ感が削がれて来て、落ち着きが出てきたかなと思う。たぶん、昔よりは。

20代前半で黄色だったわたしが
30代になった今テラコッタオレンジだとしたら、いい年の取り方をしてるんじゃないかな。

色々あったし、
今だってそれなりに悩みはあるけれど、
私の人生、今のところ悪くないのかもしれない。


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