じっくり推理パズル 製作後記

 こんにちは。けーえぬわいです。今年の4月に発売された「じっくり推理パズル」の製作に関わらせていただきました。名だたる推理パズル作家の方々の中で自分も参加させていただく事ができ、とても光栄に思っています。本記事は、それに掲載された、自作のパズル3問の製作後記です。どれも細部までこだわった作品なので、そのこだわりを書きたくなったのです。内容は全て自分語りですが、興味があるなら是非。なお、この記事には自分の問題について多少ネタバレもありますので、解いてからお読みすることをおすすめします。

・全体を通した製作の背景

 製作時期は1月の終わり頃から2月の中旬まででした。2月はちょうど暇だったので、幸い製作時間は潤沢にありました。非マトリックス形式の推理パズルはあまり作った事が無かったので製作は少し難しかったです。特に、「どのような題材で作り、どのような形式のパズルを作るか?」という点で悩みました。ここでいう形式とは、順番を決めるとか、順位を決めるとか、位置を決めるとか、そういった非推理パズルにおける問題の形式です。アイディアは主に散歩をしながら考えていました。散歩中に思いついた題材もあります。
 難しい仕事でしたが、その分やりがいと手応えをかなり感じて楽しかったです。作家としてとてもいい経験になりました。改めて製作に関わらせていただきありがとうございます。
 では、各パズルの製作について話していきます。

・7番「あっぱれネタ祭り」

 とにかくテーマにこだわった作品なので、テーマ関係から話す事にします。私はネタ番組を見るのが好きなので、「ネタ番組を題材にしてどうにか推理パズルを作れないかな~」と考えたのがこの作品が生まれた発端です。ネタ番組を題材にした時点で、問題形式は芸人のネタ順決めに即決しました。
 ところで実はこの問題、いつも楽しませてもらっている、あるネタ番組のオマージュというかパロディというか、そういう作品になっております。テレビ局の名前、番組名、出演者が7組出てきた後にゲストと司会者が感想を言い合う(ここ最近は平均5組に減ってきたかも…?)、そして司会者2人の名前がその要素です。逆に言えば、大元がなく1から考えたのが芸人の名前とゲスト2人の名前です。芸人の名前については、まず実際にいる芸人の名前と被らないのが大前提です。そしてそこからさらにこだわった部分が2つあります。

①6文字以内
 
これは解答欄に芸人の名前を全て書いた場合、名前が長いと書きづらくなると思ったからです。文字数が多いほど自由度が高くなり、実際にいる芸人の名前とも被りづらくなるので、これは思ったよりも厳しい制限でした。

②頭文字を「イロハニホヘト」にする
 お気づきでしょうか?出演芸人の名前がちょうどタテに並んでいるので分かりやすいかと思います。これは解答欄に芸人の頭文字のみを書いた場合、その文字が「イロハニホヘト」で構成されていたら、テストやアンケートなどの解答欄のようになって、それに気づいたときにちょっとした驚きがあるかなと思い、頭文字の制限を付けました。ただ、芸人全員の名前がカタカナから始まると面白くありません。そこで頭文字に使用する文字のベースをカタカナにして、似た形の漢字に変換できるものは漢字に、似た形のひらがなに変換できるものはひらがなにしました。カタカナの「ロ」は漢字の「口」(くち)に、カタカナの「ヘ」はひらがなの「へ」のように、といった具合です。正直いうと、頭文字の制限がないと、逆に付けづらいんですよね。

 このような2つの制限の上で、フィーリングで芸人さんの名前を決めていきました。フィーリングっていうのは、「芸人って印象に残るコンビ名を付けがちだよな」とか、「よく意味の分からない言葉とかありがちだな」とか、そんな感じです。
 続いて、ゲスト2人の名前について。青永さんについては、過去の自作推理パズルの登場人物を再登場させました。「きっちり推理パズル」の45番「この脚本家がすごい!」に名前が出てきた俳優さんです。本別さんについては、本当にいる女優さんの名前と被らないように名前をつけなければならず、それでいて不自然ではない名字にしたいと思いました。そこで、前にパズルスクエアに出題した推理パズルで、「帯広」という名字を使ったら、その名字が実在しない名字だった(KNY調べ)という出来事を思い出しました。「もしかして北海道の地名って名字になってないような名前が多いのでは?地名が由来だと、なんとなく実際にあるような名前みたいになるよね」と思い、北海道の地図を見て、KNY調べで実在しない名字となるような地名を選びました。それが本別です。
 問題の内容ですが、簡単だけど一筋縄ではいかないような問題を目指しました。各順番のネタの種類(漫才、コント)は当てる要素に含む事ができますが、これを最初から決めておく事で、簡単なものに調整しました。また、7組って偶然丁度良い塩梅になっているなと今思います。それと、推理パズルは「このヒントはヒント文を書く時に、自然な流れ、自然な文章で入れられるか?」という事も考えながら作らないといけないので、そこが一番難しかったですね。下手に変なヒントは入れられないという事です。そのヒント文の作成もフィーリングです。ヒントとなる条件を、自然な話の流れに持っていけるようにヒントを出す順番などを調整しながら書いていきました。このヒントの順番はパズル面でも重要となってくるので、両方に気を遣わなければならず難しかったです。ちなみにゲストのセリフは「ネタ番組でゲストに来た俳優って大体こんなこと言ってるよな…」みたいな事を書きました。
  難易度が低い知恵の輪みたいな作品だと思っています。まだ解いていない方は時間があいた時に是非。

30番 8人で集合写真

 送った問題の中で最初に作ったものです。あまり覚えてませんが、「非マトリックス推理パズルならとりあえず位置決め、位置決めといえば集合写真っしょ!」という流れで作ったと思います。気がつけばこの設定で作ってました。
 立ち位置を2段構成にしたところで、「後ろの人は身長が高い方が自然だよね」と思い、例の身長システムを導入しました。可児君が言っているような条件を決めたあとで、8人全員の身長を適当に決めました。適当といっても、「差が5cm以上」は、差が5cmの時は入るのか入らないかという事を考えさせないように、いずれか2人の身長の差が5cmにならないように設定しました。いや、差が5cm以上だったら差が5cmの時もその条件にに含まれるだろうという話ですが、もしかしたら「以上」の意味をを勘違いされている方もいらっしゃるだろうと思ったので調整しました。「まるまる推理パズル」のチュートリアル部分で、「以上と未満の違いに気を付けよう」といった記述があった事から、推理パズルではなるべく以上と未満の違いが分からなくても解けるように設計しています。なるべく、というだけで以上と未満の違いが分からないと解けないような問題も作りますけどね。一般常識だし。
 難易度については、簡単すぎず難しすぎずなMediumを目指しました。その結果、EasyにもHardにも取れない事はなさそうな問題になったので「難易度設定大丈夫かな…」と心配になりました。しかし、掲載された時にはMedium5というちょうどいい感じの難易度に設定されていたので嬉しかったです。
 さて、登場人物となる8人ですが、このうち過去に登場したキャラクターが5人ほどいます。
可児: 気がるに推理パズル3の55番、パズル通信ニコリ174号の推理パズル2番
橘:  気がるに推理パズル3の28番、きっちり推理パズルの67番
若月: パズル通信ニコリ165号の推理パズル3番
宮広: パズル通信ニコリ174号の推理パズル2番
日野: パズル通信ニコリ168号の推理パズル2番
 前に出したキャラクターを登場させるのが好きなので、今回初登場のキャラクターもまた出てくるかもです。ちなみに、泉さんと風間くんはこの問題で初登場ですが、175号の推理パズル2番で再登場しました。
 そんなエゴ丸出しの問題ですが、いい感じに頭をひねる問題だと思っています。是非。

69番 数独を作ろう

 散歩中に推理パズルのネタをこねくり回していたら思いついたもので、帰ってすぐ数独を作り始めたのを覚えています。問題の作り方としては、まず数独のヒント配置を決める。次に重要な条件(推理パズルのヒント)をいくつか決める。3番目と4番目の条件がそれです。そして、それに沿うように数字を縛りながら数独を完成させる。完成した数独の盤面から特徴を見つけ、数字を入れ替えながら(例えば3を6にして、6を3にするなど。数字の代わりにアルファベットで作って、後から数字を当てはめていくという感じに近いです)条件をさらに追加して解けるようにしていく、といったように組み立てました。上手くいかなければ数独作成からやり直しだったのですが、数独作成の部分は数字換え以外手直しがなく、上手く決まって良かったです。
 推理パズルのヒントですが、合計を考えさせる時は、あまりカックロの手筋的な考えを使わせないようにしました。例えば、ある列に◯が3つあって、その◯に入る数字の合計が23だと、その丸に入るのは6,8,9のいずれかとなる、といった考え方です。それだと推理パズルじゃなくてカックロみたいになってしまうので避けました(もちろんカックロにも出てくるような計算が絡む考え方はありますが)。そのために、一度完成した物をもう1回ヒント文作成の段階から作り直しています。あとのこだわりですが、論理的な道筋で解ける事と、なるべくややこしくないヒント文を入れるように努力しました。
 なお、完成した数独の問題についてですが、数独に初めて触れる方のために、難易度はEasyとなっております。数字の配置の制約もあったので、ここの難易度調整が難しかったです。
 一問で二度おいしい問題となっております。推理パズルも数独もよろしくね。

最後に

 問題文やヒント文などですが、二コリの編集部の方々によって、私が送ったものよりさらに分かりやすくなっております。ニコリ編集部の方々には頭が上がりません。この場を借りてお礼を申し上げます。
 フジテレビ系の「ネタパレ」というネタ番組が面白いので是非。若手の芸人さんのネタがほどよく見れます。なぜこの話をここでしているのかはお察しください。
 以上で製作後記は終わりです。ありがとうございました。まだ購入されていない方は是非。

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