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色々な形の農福連携とそれぞれができることのまとめ

11月と1月に農福連携に関する講演会を藤沢市と一緒に開催いたしました。


のべ450名ほどの方にご参加いただき、農業と福祉の連携に多くの方が関心を持たれているのだなと感じました。

私は農スクールのスタッフとして農福連携に4年ほど前から携わっていますが、特にこの1年は農福連携に関してとても考えさせられることになりました。

農福連携に携わる中、いつも感じていたことがあります。

それは、農業と福祉どちらの言葉にもいろんな意味があり、一言に「農福連携」に興味があると言っても、それぞれの対象とする人や求めていることが違っているなと。

農福連携に興味を持って何かしら取り組む人が増えて欲しいと思っています。ですので、これまで学んだことをまとめ、「農福連携」という言葉に含まれる意味を整理して、地図のような記事を作りたいと思いました。

もちろん、すべてが網羅できるとは思ってもいませんし、偏りもあると思います。そのあたりは、ご指導ご鞭撻いただけると幸いです。

・多様な対象(者)

まず、「農福連携」という言葉の対象(者)は誰(何)なのか?以下のような人や組織が挙げられると思います。

<農>
農業者(集団)
農作業
地域や国
<福>
障がいを持たれた方
生活困窮者(ホームレス状態の人)
引きこもりの方
高齢者
病気になった人
福祉サービス事業所
属性に関わらず色んな人

・求めること(福祉側)

次に、農福連携に携わる人が求めていることを表にまとめてみます。

農福連携図

左の列は「色んな人が何かしら農業に求めていること」、上の行は「農業者が求めていること」「地域や国が求めていること」になります。

では、どのような連携があるのか。

大まかに、「農福連携」と聞いた時、イメージされるのは以下のどれかではないでしょうか。

(1)障がいをもつ方が農家へ就職したり、福祉サービス事業所が農業を始める。

(2)生活困窮者や引きこもりの方が農地(農作業)を利用して就労訓練を行う。

(3)高齢者や病気になった方が農地(農作業)を利用してリハビリや、居場所づくりを行う。

(1)の障がいをもつ方が農家へ就職したり、福祉サービス事業所が農業を始める連携という形は、表の中ではAかBに当たるかと思います。

画像3

Aは農業者が障がいを持った方を直接雇用すること。Bは福祉サービス事業所が単独で農業を行ったり、農業者と請負契約を結んだりすることが当たります。

(2)の生活困窮者や引きこもりの方が農地(農作業)を利用して就労訓練を行う連携という形は、主にCに該当し、訓練後Aになることがあり得ます。

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我々の農スクールのプログラムがこれに近い形です。

農作業を利用し、トレーナーとスクール生とが一緒になって農作業を行います。また、希望者があれば近くの農家さんの手伝いに出てみたり、さらにインターンシップ制度を利用し、色々な農家さんの元で働いてみたりする経験を積みます。

その後、農業の道に進みたいという方が就農することもあります。

(3)の高齢者や病気になった方が農地(農作業)を利用してリハビリや、居場所づくりを行う連携という形は、主にDに該当するかと思います。

画像5

野菜作りを活用しリハビリや認知症予防を行ったり、市民農園などを借り、そこを居場所作りにしたりします。

また、農業者の仕事の一部をボランティアとして手伝うという形をとり、その集まりがサークルのように居場所になることもありえます。

・求めること(農業側)

農福連携で農業側が求めるものは「人手」と言われています。

ここのところが注意が必要で、農業者の人手不足と言われるとき、誰の何目線で不足しているかがごっちゃになっているような気がします。

1つは、地域や国が、農業の担い手が減っていることや耕作放棄地が増えていることへの対策として農業者を増やそうという目線です。

農福地域

もう1つは、農家(農業法人の経営者)が一緒に働いてくれる人、後を継いでくれる人、手伝ってくれる人が欲しいという目線です。

農福農業

地域や国の目線で言うと、福祉サービス事業所が単独で農業を行ったり、農業者と請負契約を結んだり、就労訓練やリハビリなどに農地(農作業)を生かすことが求められます。

農家の目線で言うと、しっかり働いてくれて、組織に利益を出す人が求められます。

・色んな農福連携の具体例

具体的にどんな連携があるのか、少し紹介いたします。

(1)障がいをもつ方が農家へ就職したり、福祉サービス事業所が農業を始める。

有名な例として、京丸園さんなどの取り組みがあります。こちらの記事がよくまとまっているかと思います。

また、こちらに事例がいくつもまとめられています。

農福連携事例集(令和元年10月)

11月の講演会でお話しいただいたJA共済総合研究所の濱田健司氏が様々な論文・レポートを出されているので、より詳しく知りたい方はそちらもオススメです。


(2)生活困窮者や引きこもりの方が農地(農作業)を利用して就労訓練を行う。

全国的に(1)の障がいをもつ方と農業者との連携が一番多いようです。

それと比べ数は少ないですが、だんだんと生活困窮者や引きこもりの方を対象とした取り組みも生まれてきております。

下記に何例かまとまっていました。

農業分野における 生活困窮者への就労支援の 現状と課題

さらに、2020年度から国の制度として「引きこもりなどが理由で長く仕事に就いていない人に、農家で短期間の農業体験をしてもらい、本格的な就労のための準備を後押しする」取り組みを始めるそうです。

(3)高齢者や病気になった方が農地(農作業)を利用してリハビリや、居場所づくりを行う。

就労という形ではなく、園芸療法など、高齢者や病気になった人が農作業を行い、癒しを得ることを農福連携の形としてイメージされる方もいらっしゃるかもしれません。

園芸療法とは、“花と緑で人を癒す”療法です。

いいかえると、草花や野菜などの園芸植物や、身の回りにある自然とのかかわりを通して、心の健康、体の健康、社会生活における健康の回復を図る療法といえます。
兵庫県立淡路景観園芸学校HP https://www.awaji.ac.jp/htcp/about

また、認知症の予防として農作業を活用する例も出てきています。

リハビリは昨年10月、同町の大悟病院内の畑で実施。認知症の入院患者ら約10人が1カ月間農作業に取り組み、体力などを前後の月と比較した。同協議会の作業療法士やトレーナーによると、握力や歩行速度が向上。普段歩きたがらない人がはいつくばって草むしりをするなど、積極的に作業する様子も見られたという。
WAM NET 農作業、心身に好影響 認知症リハビリ報告 宮崎日日新聞 2019年2月28日(木)
https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/fukushiiryounews/20190228_102300.html

以上のことは、高齢者や病気になった人に限らず、植物の世話をすることで癒されたり、複数人で農地に集まることが居場所になったり、属性に関わらずどんな人にでも良い効果があるのではないかと思っています。

(4)さらに広い意味での農福連携

あまり農福連携という言葉からイメージされる方は少ないかもしれませんが、農業はそもそもすべての人の福祉を支えているという側面があります。

1月の講演会で橋本大二郎氏が紹介されていましたが、昨年亡くなられたペシャワール会現地代表の中村哲氏の取り組み。中村氏はもともと医師でしたが、それだけでは埒があかないと水不足、食糧不足の問題に取り組まれました。

当初、アフガンの地はボロボロだった。1978年以降、断続的に続くアフガン紛争の影響により、難民は増え続け医療は足りず、農地は荒廃していた。また人口の8割が農民と言われる土地で慢性的な食糧不足が起こり、水不足により赤痢やコレラが発生し、農民の健康状態は悪化の一途を辿っていた。

特に2000年の大干ばつを受け、医療活動と平行して水源確保事業を開始した。2002年からは「緑の大地計画」として、食料増産モデルの確立を目指した大規模な開墾事業を開始。灌漑用水路の建設や、地域の教育機関の設置などを行い、推定15万人もの難民が農村に定着することができたという
Forbes JAPAN 2019/12/05 https://forbesjapan.com/articles/detail/31079/3/1/1

中村氏の活動から改めて農業など食糧生産は、社会福祉の基礎となるものだなと思いました。

またこちらも紹介されていましたが、日本でも貧困対策としてJAと子ども食堂が連携する例が増えているようです。

その後も子ども食堂は全国的に増え続け、子どもの貧困対策にとどまらず、食育推進や子育て支援、世代間交流、地域活性化等の様々な方向性を持つ子ども食堂が誕生している。 こども食堂安心・安全向上委員会が昨年度実施した調査では、全国の子ども食堂は少なくとも2,286か所に達し、2016年7月に朝日新聞が報じた件数(319か所)と単純に比較すると、ここ2年の間に7倍以上に増えているという。JAにおいても、子ども食堂に関する取組みは増加の傾向にあり、今年度はこれまでの食材提供をメインとした支援から、JA女性部が主体となって運営する子ども食堂の開設 等の新たな動きがみられた。
JAによる子ども食堂の展開 福田 いずみ
https://www.jkri.or.jp/PDF/2018/Rep161fukuda.pdf

・それぞれができること

以上が農福連携のまとめとなります。次にそれぞれの課題や、各々ができることまで突っ込んでいきたいのですが、何かを提言できるほど、自分のやっていること以外の農福連携の形に詳しくありません。

ただ、一つだけ連携する上で大事だなと感じていることがあります。

ニーバーの祈りというものがあるのですが、いい言葉でしたので少しご紹介を。その一文に、

「変えることのできるものとできないものを見分ける賢さを与えてください。」

という文章があります。

連携する上で大事なのは、相手に変わって欲しいと思っても相手を変えることはできないので、自分のやることを変えるしかない、というスタンスなのかなと考えております。

私は未熟者なので、相手にこうやって欲しいなってことが叶わないと、「ちぇっ、なんだよ」となることがあります。これは誰かと連携する上でよくないなと反省しています。

例えばなんですが、雇用を求めている農業者の元に居場所を求めていくと、うまくいかないことは想像できるかと思います。

そこでその農業者に自分の居場所を作るよう望んでも無理な話なので、次は農地を使って欲しい別の人を探したり、自分のやることを変えることが必要ですよね。

もう一度先ほどの表を持ってきます。それぞれがどういうことを望んでいて、何ができそうか考える参考になれば幸いです。

農福連携図

農業者:人手が欲しい際に地域の福祉事業所に声をかけたり、より働きやすい環境を整備したりすることになるのかなと思います。

地域や国:農地を利用して欲しい際には、参入しやすい制度を作ったり、サポートする制度を作ったりすることなどでしょう。

例えば、こういう取り組みを始めるそうです。

就労したい人:体力つけたり、技術を磨いたり、就労先を探したりするのが良いと思います。

サポートする人:より良いプログラムの作成をするなどが挙げられると思います。

当団体の代表は農での就労をサポートをする人(農キャリアトレーナー)の育成講座を行っています!
http://www.eto-na-en.com/jichitai
(自治体の皆様へ、となっていますが一般の方も受けられます。)

リハビリや予防をしたい人、単に元気になりたい人:近くの市民農園で野菜作りを始めてみるのも一つの手かと。

農福連携に関わりたいけどどうすればいいか分からないという方は、小さく始めるのがいいなぁなんて思います!

小さく始められた方の例を少しご紹介。

それでは!よい連携に恵まれることを祈ります!

書いた人:山田直明
岡山県出身。北海道大学卒業。弓道参段。卒業後大手メーカーにてマーケティング部に所属。会社に勤めながら体験農園に通い、野菜作りの面白さを知る。会社を辞めた後、神奈川県藤沢市の有機農家相原農場にて農業研修を受ける。その後、株式会社えと菜園、NPO法人農スクールに所属。現在は、首都圏の農業を使った就労支援プログラムの講師を務める。

#農福連携 #農業 #福祉


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生活保護を受けられている方や長く引きこもられている方、働きづらさを抱える方など様々な方が、“農”を通じた様々なプログラムを体験を通して「やりがい」や「仕事観」「自己肯定感」を得ながら、基礎的な農業のイロハを学ぶことで、農業界への就労機会を生み出していく取り組みです。

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