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農を食と職に!農スクールの活動紹介【前編】農をセーフティネットに

こんにちは。日頃働きづらさを感じていたり、農業で働くことに関心を持たれた方に読んで頂きたいです。

今年4月に下記のような調査結果が報道されました。

農業従事者 5年で46万人減 49歳以下8.5万人減 新規就農定着へ検討会-農水省
農林水産省は4月27日、「2020年農林業センサス」の確定値を公表した。農業従事者は2015(平成27)年から2020(令和2)年の5年間で46万人減少し152万人となった。産業として農業を持続させていくには多様な若者を農業に呼び込む必要があることから、農水省は新規就農者を確保し定着に向け5月に検討会を設置することを明らかにした。
農業協同組合新聞2021年4月28日 https://www.jacom.or.jp/nousei/news/2021/04/210428-51026.php

また、こんなニュースもありました。

農業で働きたい人が急増 コロナで収入減や働き方の変化背景に
農業で働きたいと希望している人がことし1月までの1年間でおよそ10倍に急増していることが、大手人材情報会社のデータで分かりました。(中略)また、この会社によりますと、登録者の中には副業としての農業を希望する人も多く、東京や大阪などの都市部に住む人なども目立つということです。
会社では、農業を希望する人が急増している理由について新型コロナウイルスの影響で、収入が減少したり、リモートワークなどが広がり、働く場所にこだわらず仕事ができるようになったりしたことなどが背景にあるのではないかと分析しています。
NHK NEWSWEB 2021年4月12日 10時41分 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210412/k10012969391000.html

現在、農業従事者はすごい勢いで減っています。
それと同時に新型コロナウイルスによって、農業に興味を持たれた方も多いかと思います。

我々NPO法人農スクールは、人手不足の農業界と働きづらさを抱える人とをつなげる活動を行う団体です。コロナ禍を背景に当団体に対して興味を持っていただいたということやコロナ禍の緊急支援対策の事業を行うということもありました。(現在進行中です)

この様な背景で、この1~2年で活動の幅が広がり、HPに書かれていることだけでは我々が行っている活動の全体が分からなくなってきたため、一度ここで活動内容をまとめて紹介させてもらいたいと思いました。

こちら【前編】は当団体が何を目指して活動をしているかを、【後編】で具体的に行っている活動内容を2つに分けてまとめました。

そもそも農業者数が減ることは問題なのか?

この活動を行っていると、食料自給率の上昇や、耕作放棄地の減少を目的にしていると思われることがあるのですが、我々が主眼に置いているところは違います。

よく、農業従事者数の減少が問題だと言われることがあるのですが、減少の結果起こると言われていることに関しては主眼を置いておらず、農業従事者数の減少が起こる原因に主眼を置いています。

分かりづらいので、少し表にするとこんな感じです。原因(A)としての農業従事者数の減少は主眼ではなく、結果(B)としての農業従事者数の減少に主眼を置いています。

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※結果Aや原因Bで他に考えられるものがあれば教えて頂けると幸いです。ちなみに「高齢化」を原因Bに入れていないのは、所得が高い産業だとそこに若い人が入ってくるため、業界全体の高齢化は進まないはずであり、業界全体の高齢化の原因も他の産業と比べ所得が少ないことであると考えるためです。

少し前に話題になった記事があるのですが、その記事は農業従事者数が減ることを問題視する理由を下記のように挙げています。

多過ぎる農家が日本の農業をダメにする
1,食料自給率の低下
2,耕作放棄地の増加による景観の悪化
3,農地の多面的機能の喪失
引用元: TREE&NORF  2020/02/28 https://treeandnorf.com/too-much-farmer-in-japan/ 

また、その理由に反論を述べ「農家の減少は、危惧すべき日本農業の課題ではありません。」と結論付けています。

我々自身、原因としての農業従事者数減少はあまり問題だとは考えていません。理由はこの記事でも書かれている通り、

「減少しているのは、農家の大半を占めるが売り上げは少ない農家です。彼らが離農することによって使われなくなった農地をプロ農家が集積・活用することによって、同じ農地でも格段に生産性の高い農業が実践され、結果的に農業GDPが向上しているわけです。」

という理由からです。

しかし、農業従事者数が減らざるを得ないという社会の変化は生き方の選択肢が1つ減っていることを意味しており問題だと考えています。引用ばかりで申し訳ないですが、話の整理のため、下記の分類を使わせてもらいます。

小熊英二さん「もうもたない!? 社会のしくみを変えるには」
「大企業型」は、毎年、賃金が年功序列で上がっていく人たち。大学を出て大企業の正社員や官僚になった人などが代表です。「地元型」は、地元にとどまっている人。地元の学校を卒業して、農業や自営業、地方公務員、建設業などで働いている人が多いです。「大企業型」は、所得は多いものの、長時間労働や通勤時間が長く、地域社会につながりが薄い人が多い。「地元型」は、所得は比較的少ないものの、地域コミュニティーを担い、持ち家や田んぼがあったり、人間関係が豊かだったりします。ただ、平成の時代に増加してきたのが、所得も低く、人間関係も希薄という「残余型」。都市部の非正規労働者などがその象徴です。
これらの3つの類型を先行研究などをもとに2017年のデータで推計したところ、「大企業型」が約26%、「地元型」が約36%、「残余型」が約38%となりました。(中略)言われるほど正社員の数も減っていないし、正社員の中で、年功序列で賃金が上がっていく人たちの比率もほとんど変化がない。しかしそれは上の約3割の話で、下の約7割は変化している。自営業が減って非正規が増え、地域社会の安定が低下して、貧困が増えています。」
NHK https://www3.nhk.or.jp/news/special/heisei/interview/interview_08.html

こちらのインタビュー(とインタビューの元になっている本『日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学』講談社現代新書 小熊 英二 著)では、日本人の働き方、生き方を「大企業型」、「地元型」、「残余型」に分けています。
また、社会の変化として実は「大企業型」はあまり変化がなく、「地元型」が減り「残余型」が増えているという傾向があるとのことです。

こちらに書かれていることは、上記した農業従事者数減少の話とリンクします。地元型である農業者、「所得は比較的少ないものの、地域コミュニティーを担い、持ち家や田んぼがあったり、人間関係が豊かだったり」する人が減り、都市部の非正規労働者など、所得も低く、人間関係も希薄という残余型である人が増えているという社会の変化です。

我々農スクールが農業従事者数を増やす活動をしている理由

この様な社会の変化を受け、我々農スクールが目指すのは、残余型であるでその生活から抜け出したいと思う人の行先をつくることです。

我々が農スクールのプログラムで対象にしている人は、都会で働きづらさや生きづらさを抱えた方たちです。その人たちの行先をつくることです。

我々は「地元型」の生き方に希望を見出します。ただし、社会の変化によって減ってきた以前の「地元型」ではなく、農業の産業構造が変化していることに合わせた新たな「地元型」を作ることが出来ないかと考えています。

・自営業型で他産業並みの賃金を得ることは困難であるため、雇用型の就農のサポートを行い、地方の農業組織を勤め先にできないか
・家はあるが仕事に就くことが難しい方や、生活保護以上に賃金を稼ぐことが難しい方が、人口減少や高齢化で空きが出てきた田んぼなどを引継ぎ、半自給的に生きていけないか

そんなことを考えながら活動を行っています。
我々の掛け声「農を食と職に!」は、食を作るという点と、生きていくための職業にするという点で農業は我々の生活を支えており、セーフティネットであることを表しています。

そしてその農業のセーフティネットとしての側面を活かすために活動をしています。

では実際に何を行っているのか、具体的な活動は【後編】へ!

<補足>よくある誤解とその回答


(1)「農業なら他に行くとこない人でも働ける」って農業の仕事をなめてんじゃねーのか?
⇒我々の活動は、地方の農業組織へ勤める方を輩出することを目的にしており、その為には賃金以上の働きをする必要があること、そしてそれは他の産業と変わらず、大変な事であるとプログラム受講生に伝えています。また、都市での働き方に困難さを感じている方の中で、農業という仕事にフィットする方はこれまで少なからずいらっしゃったので、農業という仕事が大変であることを知った上で自分たちの活動に意義はあると思っています。また、上記した最低賃金を得ることに困難を感じる方の生きるすべとしては、補助を受けつつ自分の食べる分の野菜は作るなど、そういった道はないものかと探っております。例として挙げると、自分が生きていくためのお金(例えば20万円)を野菜販売で得る事と比べ、自分の食べる野菜を育てる事は負担が少ないと考えています。


(2)残余型の人を救うのは制度的な補助(公助)であるべきで、農スクールは自助を促しているのではないか?
⇒公助と自助は同時に進めるべきものと考えます。公助や共助は新たな制度ができ救われる人が出るまでに時間がかかるため、現状の制度で対応できない人は自助や互助で対応するしかないものと考えます。

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