海外研修とコロナが私を変えた━━私が復業美容師になるまで
厳しい校則の中、休日にできるおしゃれが至福だった
━━伊東さんが美容師になったきっかけを教えてください。
伊東:私はもともと、美容師志望ではありませんでした。建築科の高校に進学し、将来は、設計士やインテリアに携わることを夢見ていました。
でも……いざ勉強してみると、自分にまったく合わなかったんです。
学業の傍ら、野球部のマネージャーをしていました。やけになって、とにかく部活に明け暮れていましたね(笑)。
━━なるほど……。
伊東:校則がとても厳しい学校でした。休日にしか”おしゃれ”を堪能できませんでしたが、逆に、この瞬間がとても至福で。
ふと、これだなと直感的に思いましたね。そこで、美容の道に進むことにしました。
大好きなファッション業界での就職も検討しましたが、専門学校の「美容師研修」がとても楽しかったんです。そこで、美容師になることを決意しました。
━━最終的に、自分の「これがしたい!」が見つかってよかったですね。実際に、美容師の道はいかがでしたか?
伊東:とても楽しいですし、美容師を選択してよかったです。
上京する前は、地元の大分県にあるサロンで、美容師のイロハを4年間学べました。
ここのオーナーが本当にいい人で……。「師匠」と呼ばせてもらっています。技術はもちろんですが、お客様にもメンバーにもあたたかく接してくれる方でした。
プロとしての技術、人としての魅力が「要」になるのだと学びましたね。ここでの教訓は今でも活きていて、本当に財産です。
ずっとこのあたたかい環境で、美容師をするのもよかったと思います。
ただ、一度きりの人生なので上京もしたくて。師匠の「応援しているよ、いってらっしゃい」という言葉を胸に、思い切って上京をしました。
ニューヨークでの学びをきっかけに、”複業”美容師へ
伊東:東京に来てからは、いろいろありましたね。
人には恵まれたものの、サロンの経営難で2度の退職を余儀なくされました。サロンを移転してから、アシスタントから始まったこともありました。
━━それは、大変でしたね。
伊東:そうですね。紆余曲折ありましたが、日々の練習を大切にした結果、賞をいただけて。サロンの代表として、貴重な「ニューヨーク研修」に参加できることになりました。
そこで、今までの価値観がぐらっと変わったんです。
━━どういった経験をされましたか?
伊東:美容師の「技術のすごさ」を目の当たりにしました。
と同時に、自分の無力さも痛感しましたね。このままではいけないな、と。とても悔しくて、大きなターニングポイントになりました。
研修に帰ってきてから、もう一度「今後のプラン」を内省して考えました。
高校生の頃からずっと、ヘアメイクも好きだったんですね。好きなら、やってしまおうと。
サロンでスタイリストを継続しながら、「復業」として、ブライダルで”ヘアメイク”も両立することにしました。
━━すごい……。すでに多忙なスケジュールだったと思いますが、よく踏み切りましたね。
伊東:当時を振り返ってみると、自分でもよくやったなと思いますね(笑)。
ヘアメイクははじめてだったので、また下っ端からのスタートでしたが、技術を学ぶのがとにかく楽しくて。一日でもはやく、一人前になりたかったという想いだけでした。
ブライダルの仕事でも、自分に指名が来るように。両立ができないなくらいになったので、より自分の働き方にカスタマイズするために、フリーランス美容師へ転身しました。
サロンビレッジというシェアサロンで、現在活動しています。
コロナが直撃し強制ストップ。そこから、訪問美容師の資格を取得
━━美容師×スタイリストの複業スタイルは、今もつづけているのでしょうか?
伊東:今は、違った複業をしています。コロナの影響で、これまでの施術ができなくなってしまって……。
━━コロナ禍だと、美容師もブライダルも大きな打撃を受けそうですね。
伊東:そうですね、直撃です(笑)。
せわしく過ぎる日々の中、突然のことだったので、私も焦ってしまいました。自粛中、必然的に考える時間が増えたので、ここでも今後のことを内省しました。
結論からお伝えすると、今は「訪問美容師」の資格を取得し、美容師と両立しています。
━━大きくシフトチェンジしましたね。訪問美容師を選んだ理由を教えてください。
伊東:私は大分県出身で、子どもの頃から、おじいちゃん・おばあちゃんと一緒にいることが多くて。いつか、地元にも貢献できるればと思っているのですが、訪問美容師であれば実現可能だなと思いました。
訪問美容師は、介護施設にいる方の髪を切る仕事です。シンプルかもしれませんが、とてもやりがいのある仕事なんです。
━━”やりがい”を感じたエピソードを教えてください。
伊東:意思疎通が出来ず、いつも無表情のおばあちゃんが、私のカットをきっかけに笑顔になってくれたことがありました。込み上げるものがありましたね。
時には、ほぼ寝たきりのおじいちゃんの髪を切ったりすることもあります。とても貴重な瞬間を、共にしているなと痛感しますね。
モットーは「やってみないとわからない」
━━美容師の中でも、かつての伊東さんのように「美容師だけにとどまりたくない」と思う人もいると思います。そういった人に向けて、伝えたいことはありますか?
伊東:もし、自分が描いている理想像があるのなら、まずは行動してみてはいかがでしょうか?
結局、やってみないとわからないですし、やったからこそ見えてくれるものがあるはずです。
私は、ニューヨーク研修をきっかけに、ブライダルの仕事をはじめました。そして、ブライダルの仕事をきっかけに、フリーランス美容師に転身しました。
すべての出来事は点と点になっていて、いずれは線になります。
━━挑戦したくても、なかなか挑戦できない人もいると思います。伊東さんはいつもどういった心構えで、新しいことに挑んでいますか?
伊東:実は、あまり失敗を考えないようにしています(笑)。
もちろん、失敗したことは一度や二度ではありません。たくさんあります。
ただ、実際に動いてみて、失敗も成功も体験したからこそ、視野も選択肢も広がっていきました。
私がアシスタント時代、ある先輩の一言に救われました。
なにかに挑戦する時、いつもこの言葉がよぎります。
最近、結婚をしました。子育てもしたいですし、美容師も訪問美容師も両立していきたいです。
ぜひ一緒に、理想を叶えていきましょう。これまでの話が、なにかのきっかけになれたら嬉しいです。
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取材・文/ヌイ(@nui_nounai)
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