
「全体をみて」取り組めるのか?:同時処理
今回は、子どもの学びや生活に深く関わる「PASS理論」の一部、「同時処理」についてお話しします。「同時処理」と聞いてもピンとこないかもしれませんが、実は日常生活や学校の勉強でよく使われているとても大切な力なんです。
※PASSという認知処理過程は、人間が考え、学習し、問題を解決するときに用いられるものです。これらの処理は読み、書き、算数といった学習に関わるだけでなく、車を運転したり、夕食を作ったりといった日常生活にも深く関与しています。
同時処理ってどんな力?
同時処理とは、分かれた情報を一つにまとめ、全体像を捉える力のことです。
例えば:
• パズルを完成させるとき:どのピースがどこにハマるかを考えながら全体の形をイメージする力
• 文章を読むとき:一つひとつの単語やフレーズの意味を理解し、それらを組み合わせて文章全体の内容や意図を把握する力
• 地図を読むとき:位置関係を考えて、道順を理解する力
このように、同時処理は物事を「全体的」に考える場面で活躍します。
同時処理が活かされる学びの場面
子どもたちは学校でたくさんの場面で同時処理を使っています。具体例をいくつかご紹介します。
1. 文章題を解く(算数)
例えば、「リンゴが3個ずつ入った袋が5つあります。リンゴは全部で何個?」という問題を解くとき、
「3個ずつ」「5つ」「全部で」という情報を理解し、状況をイメージして関連付け、「3×5=15」と考える力が必要です。
2. 図形問題に取り組む(算数・図工)
「この立体を上から見たらどんな形になる?」と聞かれたとき、全体の構造をイメージしながら、各パーツの位置を把握します。
3. 漢字の学習(国語)
新しい漢字を学ぶとき、「形」「読み方」「意味」の3つを同時に関連付けて覚えることが求められます。
同時処理が得意な子どもは?
同時処理が得意なお子さんは、次のような特徴があります:
• 複数の情報を整理してまとめるのが得意
• 図形や絵を描く活動が好き
• 地図を見て道順を理解するのが得意
こうした特徴がある場合、プロジェクト型学習(例えば、調べ学習で資料をまとめる)や図表を使った学習などで、力を活かしやすいでしょう。
同時処理が苦手な場合は?
もし同時処理が苦手なお子さんの場合、次のようなサポートが役立ちます:
1. タスクを分けて整理する
文章題なら、問題文を「条件」と「質問」に分けて読むようにする。
2. 視覚的な補助を使う
図や表、イラストを活用して情報をわかりやすく提示する。
3. 一つずつ練習する
「文章を読む」「計算する」のように、一度にやることを減らし、順番に取り組む。
同時処理のトレーニングとして、パズルやブロック遊び、カードゲームなども効果的です。
このようなことから、DN-CASを使用して同時処理を評価することで、同時処理はその子の強みなのか、もしくは弱みなのかを理解し、適切な指導方法に繋げることができると言えます。
KNOTでは学習の問題に対して、DN-CASを含めた評価パッケージ(テストバッテリー)を提供しています。丁寧に評価することで、お子さまのスキルの獲得や強化によって、認知的な弱みの影響を最小限に抑えられるような指導方法を選ぶことを目指しています。
もし、お子さまのことで気がかりがあれば、適切な評価と支援がある場所を探してみてください。大きく困る前に手を打つことが肝心です。
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Naglieri, J.A., Pickering, E.B., 久男, 前., 健, 中., & 慎治, 岡. (2010). DN-CASによる子どもの学習支援 : PASS理論を指導に活かす49のアイデア.