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『新すばらしきこのせかい』アートな世界の中にあるリアル

※ストーリーのネタバレ有・体験版有(switch&PS4)

■作品概要:
仲間と共にチームを組み、自らの生死をかけた『死神のゲーム』へと挑むRPG。

■公式サイト:https://www.jp.square-enix.com/shinsubarashiki/
■クリア時間:40時間くらい

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 凡そ10年ほど前「すばらしきこのせかい」なるゲームが面白いという話を言伝に聞いて以来、興味自体はあったものの機会に恵まれず長い時間が経ちました。
 その為、2021春の「すばらしきこのせかい」アニメ化と新作発表は望外のことであり、この機会に新作に触れてみようと思いプレイすることにしました。

 この記事は、夏休みの折にクリアした『新すばらしきこのせかい』の感想を備忘録がてら綴るものとなっております。

『新すばらしきこのせかい』のあらすじ

画像2  いつもと変わらないはずの渋谷。
  主人公のリンドウにとって、その日の渋谷は何かが違い、
  何かがおかしかったのかもしれない。

  スクランブル交差点で始まったサイキックバトル。
  そこから逃れたはずのリンドウの前に、死神を名乗る少女が現れる。
  死神のゲームへようこそ、と彼女は言った。

  まさかゲームで酷い目に遭わされることはない…
  軽い気持ちで参加したリンドウ、そして友人フレットの2名。
  しかしゲームを始めた2人は、違和感を覚え始める。

  自分たちがいるこの渋谷は普通じゃない!

独自のアートで再現された渋谷

 新すばらしきこのせかいでは一貫して、ストリートアートのようなセンスのある乱雑さを醸し出す雰囲気を持ったデザインが徹底されています。

 あらゆる輪郭はカートゥーンのように線が太く、街の建造物はパースが狂ったように歪んでおり、音楽はラップのようなセンスのある歌詞つき曲ばかり、あまつさえADVパートはコミック調とその作りこみに余念はありません。

画像2ADV(会話)パートは立ち絵と文字列のある一般的なものではなく,コミック調

そのこだわりの一つ一つが渋谷という舞台を鮮明にさせ独特な雰囲気を作っており、不思議な世界の没入感を高めています。

一週間を繰り返すストーリー

今作のストーリーではサイキックと呼ばれる超能力&タイムリープ&群像劇&デスゲームと多くのジャンルを掛け合わせていますがその土台には一日を積み上げた「一週間」という枠組みが設けられています。

画像2リンドウのサイキック「リスタート」
画像2未来を変える分岐点に戻ることが出来る

 主人公リンドウはタイムリープに目覚めてから、ストーリーの中で様々な逆境を覆すために奮闘しますが、その能力は限定的で日をまたぐことはなく、又週に数回しか使えない連発不能な代物です。
 デスゲーム的な趣のある死神ゲームに関しても一日一つのミッションをクリアし一週間で最大のポイントを手に入れることが目的であり一週間が終われば前回の成果諸々は殆ど帳消しとなってしまいます。

 こういった明確な区切りが複雑なストーリーを分かりやすくし、漫画の一話のようなコンパクト感を生み出しているように感じます。

現代の若者の心を写すキャラクター達

 「新すばらしきこのせかい」のストーリーは多ジャンルのごった煮のようと言いましたが、一貫して現代の若者の苦悩や葛藤を描いています

 前作”すばらしきこのせかい”での主人公ネクはひねくれた少年でしたが、今作の主人公リンドウは自己主張が薄く受動的、責任を取るのを非常に恐れる静かめの性格として描かれており、一つの失言や失敗が許されない最近の風潮によって生まれた現代の少年を意識しているように感じます。

 今作はこのような、昨今の風潮によって生まれた人々の解像度が驚くほど高く。ふと現れる言葉に胸を突かれます。

 とくに死神ゲームにおける対抗チーム”ピュアハート”にいるモトイさんは、数年前良く聞かれるようになった「意識高い系」のビジネスマンを想起されるキャラクターであり、脇役とは思えない程キャラが濃いです。
 言ってしまえばモトイさんはうざいし悪賢いヘイトキャラなのですが、そのデフォルメのうまさで可笑しさと棘が同居しているためにストレスに感じないのは素晴らしいと思いました。
 勿論、その中にある苦悩も見ものです。

画像2モトイさんのチーム”ピュアハート”の攻撃、意識の高さが滲み出る

 又、リンドウの友人フレットは序盤はその陽気な性格からチームのムードメーカー的な役割を果たしていましたが、ストーリーが進み精神的主柱が現れると彼の他の一面を見ることが出来ます。

画像2陽気で明るいが、滅多に踏み込んだ話をしないフレット
彼の苦悩は普遍的ながら、現代ではより刺さる

 ゲーム中にいながら、現代に生きる人の描写はリアルな痛みがあり、心揺さぶられました。

多くが型破りなゲームシステム

 今作はシブヤの独特な雰囲気を生み出すため、ゲームシステムも今までのRPGにない尖ったものになっています。

 まず、レベル対して上がるステータスはHPしかありません
 幾ら戦闘しても攻撃力や防御力は上昇することは無く『満腹度』が減っていく特殊な仕様をしています。

 ステータスを永続的に上げる唯一の方法は食事であり、色々なお店の料理それぞれに上げられる上昇幅と満腹度が異なる為、何を食べるかで成長の仕方が変わるのは他にない面白い要素です。

 ストーリー進行度や特定の条件を満たすことで派生し、能力を手に入れることが出来るスキルツリーシステムも今作ではかなり独特なものになっています。
 なにしろ、キャラクターボードがそのままスキルツリーに直結してるのです。

画像2スキルツリーには難易度選択のような基礎的なものまである

 人と知り合い、繋がりが増える程、リンドウ達の能力が上がっていくのは見てて面白いですし、能力を得るごとに各キャラの情報が開示されるのはストーリーの解釈が段階的に上がっていくのは非常に良くできています。

 また割とオプションにあるような難易度設定や所持金の最大値上昇といった基礎的な要素がスキルツリーに入ってるのも面白いです。
 特に所持金は、序盤は9999¥が上限ですぐにお金が貯まってしまうので、服や食事のシステムに気づけるいい誘導でした。
 ダッシュが音楽に連動しているのも良かったですね、DJ的な感じで特によかった。

『バッジ』で戦局の変わる斬新な戦闘

 「新すばらしきこのせかい」のバトルも、今までの独自性に違わぬ特殊さを見せています。

 何しろ「1ボタンで一つのキャラが動く」という奇怪極まりない、操作スタイルが採用されているためです。

画像2ド派手でアクロバティックな戦闘←(※写真引用)

 今作のバトルはバッジによってサイキックという能力を引き出し、色々な攻撃が出来るシステムになっています。
 一つのボタンに一つのバッジ、ひとつのキャラが連動しており、A,B,X,Y,L,R,ZR,ZL全部をガチャガチャ動かす忙しないバトルが楽しめるのは今までにない面白さです。

画像31バッジにつき一キャラが基本

 又、バッジそれぞれに属性と種類があるのが今作の戦闘を面白くしている要因の一つとなっています。
 属性は相手の弱点を突いてダメージを上げられるのは分かるかと思いますが、より重要なのはサイキックの種類です。

画像3体当たりや、銃撃、打ち上げ攻撃まで種類は様々

 敵によって、装甲が硬かったり地面に潜って出てこなかったり、姿を消すような特徴を持ったモンスターが出てきて、中々倒せず時間がかかることが多いです。
 そういった敵に対して攻撃の種類を変えることで、戦いを有利に進められます。
 装甲の硬い敵には内側から攻撃できる『ダーツボム』潜って来る敵には打ち上げ力の高い『ピアシングピラー』姿を消す敵には追尾力のある『ゴーストソード』など有利に進めるサイキックが存在しており、相互の補完や属性相性を考えるのはRPGのパーティー編成を考えるような趣きを感じます。

 慣れてくるとガチャガチャボタンを押すだけでなく、攻撃を避ける為に敢えてボタンを押さないようにしたり、シンクロを上げて必殺技を狙ってみることが出来るようになると更に面白くなります。

ちょっと気になった点

 奇抜ながらしっくりくる操作感は今作独自の面白さであることは間違いありません。ストーリー的な良さ、シブヤの圧倒的密度も素晴らしいです。
 でも、気になる点も少しだけあったのでつらつらと。

・ストレスキャラ『シイバ』の存在
 
今作のキャラ描写は秀逸ですが、死神ゲームの主催者『シイバ』に関しては違和感が大きいです。

画像2どう考えてもフェアじゃないゲームを持ちかける畜生、シイバ

 ストーリーを進めれば分かるのですが、今回の死神ゲームは勝っても生きて帰ることの出来ないデスゲームとして破綻しているものであり、それを隠蔽する為に内部の者が勝ち続けるようにしむけるセコい奴がシイバです。
 ゲーム主催側がゲームに参加し、リンドウ達が勝てないように仕向け続けるのは中々悪辣です。

 何より、この卑劣な男の口癖が「アツいゲームを期待する」的な奴なのが納得いかん。本心らしいから手に負えない
 終盤に唆されていたとか、洗脳されていたらしい描写はあったものの、被害者に対しての感情が軽く、最後までキザっぽさを取り繕っていたのが気に食いませんでした。…そう思ったのは多分自分だけじゃない筈。

・一部の遅延系ザコ敵
 今作のバトルはバッジの相性が重要な場合が多々ありますが、相性が悪いととんでもない遅延を起こしてきます。

画像2潜って中々出てこないサメ、小回りが利きすぎるサイ
爆発しないと死なないフグ、消え続けるカメレオン

 装甲部分に当たるとダメージのないサイは、後ろが弱点だが小回りが利きすぎるために中々攻撃できず。地中に潜るサメはノックバックを与えられないと殆ど攻撃できない。カメレオンは攻撃する時以外姿を隠し、攻撃を与えることが出来ません。

 なにより、フグだかハリセンボンだか分かりませんが、あの魚介類は許せない。
 最後に爆発しないと死なない、自爆型モンスターなんですが、自爆するのが遅い上に追尾してきます

画像2フグ これだけ離れても追いついて爆発する
対処法はない

 この追尾力が意外とあり、ダメージも大きいのでHARDモードでは「逃げたのに当たって死ぬ」事故が多発し萎えてしまいそうになりました
 負けてもやり直しは戦闘前なので、強いストレスには感じませんでしたが、この理不尽さはどうにかして欲しい部分ではありました。

他にもUIがちょっと面倒な部分はありました。

総評

 良い作品でした
 爽快感はあったし、ストーリーは現代らしさが満載。多少は不満点はありましたが、この作品の雰囲気を損ねることはありませんでした。

 PS4とswitch両方で体験版が出ているので、やって面白いと感じたら買う価値はあります。是非どうぞ。


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