社会を知りたい①人工知能と経済と予想される未来
本を読んだのでアウトプット。今回読んだ本は、自分たちが暮らしていく社会について人工知能(AI)と経済の視点から考えた本。AIはどんなものなのか、AIによって人は失業するのか、そのとき国がどう政策をだすか、資本主義は無くなるのか、なんてことが書いてある。
論理として繋がりがわかりやすく、AIや経済についての現状の課題も書かれているので、頭に入ってきやすい本。著者の井上智洋さんの専門は経済を広く捉えるマクロ経済学なので、AIによる経済システムの構造変化や、それによって雇用や経済成長がどうなるかといった視点が主になっている。
(一つの記事だと長くなりそうなので、多分パート2までは行きます。)
人工知能(AI)ってそもそも何?
というわけで、まずはそもそも論のAIとはなに?から。ざっくりは知っていたけど、おさらいがてら。
人口知能(AI)とは知的作業をするソフトウェア(≒プログラム)のことで、コンピューターを使って人の代わりに知的作業を行うもの。例えばエクセルで計算システム、ルンバの掃除プログラム、googleの検索システムなんかがそう。日々高性能になっていくAIは、単純な処理能力で言うと、2045年に全人類を合わせた処理能力と同じになると予想されている。近くの電気屋で買ったパソコン1台で、全人類と同じ処理性能。すごい。
ただ、全人類の処理能力を超えるAIだけど、人と同じような知的行動はできない。相手の気持ちを汲むことや、思いやること、といった精神的な振舞いはできないので、鉄腕アトムはまだ無理。現在はあくまで人間に組み込まれたプログラム上でしか動けないとのこと。
そしておおざっぱにAIについて、2種類の分類ができる。
・汎用AI … 人と同じ知的振る舞いができるAI。アトム。
・特化型AI … ある分野のみに特化したAI。東ロボくん。
上に書いたように、汎用AIはまだ難しく、現在世界にあるAIは全て特化型AIである。東ロボくんは、東京大学の入試合格を目指したAIで、国語の文章題を理解できずにそこで合格を断念した。例えば、特化型AIには「猫」「ごはん」のような簡単な概念は理解できても、「自由」「権利」といった高次の概念理解は難しいという言語の壁がある。だから、人に関わるあらゆる問題解決ができるAIが欲しいと思うなら汎用AIを作り出すことが必要になってくる。
どうやって汎用AIを作るか?
汎用AIの作り方については、世界中で色んな人が取り組んでいる。人の神経回路をマネしたニューラルネットワークや、その発展形のディープラーニングを使って、人が教えなくても勝手に認識を手に入れさせようという試みがある。人間と同じような神経回路を作ったらどうかな?という方法だ。
そして、さらに有力な2つの作り方がある。名前は、
・全脳アーキテクチャ
・全脳エミュレーション
このふたつは、人の脳機能を作り出そうとするんなら「脳をまるまるコピーしちゃおうよ」という方法。
全脳アーキテクチャは、人の脳の「機能」のみを再現するやり方。例えば、記憶を司る海馬、感情を司る扁桃体、運動パターン等の基底核などの脳機能をひとつひとつプログラムして、最後に合体させるやり方。世界中の有志が同時並行で作業できることや、すでに実際に計画が動き始めているので現実的な方法。
全脳エミュレーションは、人の脳を丸ごとスキャンして隅々まで同じにする方法。人の機能をそのまんま再現できそうだけど、人の1000億のニューロンと、100兆のシナプスを解析することが必要なので、できても21世紀後半になりそうとのこと。
(※量子コンピュータが最近ニュースになっていたけど、完成すればエミュレーションももっと早く完成するかもしれない)
ただ、どちらの方法で作ってもなお、AIには身体の感覚がない(感覚の共有性)こと、生命がないことによる、どうしても埋められない壁、「生命の壁」があるのではとも言われている。
今の仕事をAIが代わりにやる、技術的失業とは
さて、実際にAIがどう未来の社会に入ってくるか。AIが仕事を奪う、代替する。人の仕事が無くなるかも、といった内容だ。テクノロジーによって、人が失業することを『技術的失業』と言い、AIが発展することでも起こり得る。というかほぼ確実に起こる。
テクノロジー(AI)によってなくなる仕事ってどんなもの?今ある仕事は全部なくなるの?というような疑問がでてくる。結論から言うと、近いうちに技術的失業が起こり得るのは特化型AIができる仕事だけ。上記したように、現在のAIは全て特化型AI。だから、人のふるまいが必要な仕事は無くならず、単純作業やパターンで行えるものについては先に無くなっていく。
わかりやすく仕事をざっくり3種類に分けると、肉体労働、事務労働、頭脳労働があり、この中で一番先にAIが代替するのは「事務労働」であるとされている。
事務労働は書類の作成や解析、事務手続きなどで、プログラム組みやすく、コンピュータが得意とする分野。だから代替が起こりやすくなっている。逆に、介護や看護などのホスピタリティ的な肉体労働や、研究開発や商品開発といったクリエイティビティ、マネジメント的な頭脳労働には人の知的振る舞い要素が必要になってくる部分が多いので、特化型AIは苦手な分野。
ここまでは現実に起こってきていることだが、全脳アーキテクチャ型汎用AIが入ってくると今あるほぼすべての仕事を代替する可能性がある。著者はそうなった場合、2030年あたりを境に急速に雇用が崩壊するかもしれないとしている。
今回はここまで。次回はAIが現在ある多くの仕事を代替していく社会について、経済や国の政策・体制などの視点からの要点を記事にしたいと思う。
追記:本を読むとき、経済やAIという基礎知識を知りたいということの他に、他者を理解したくて読む。知らない社会を知って、その環境に身を置く人の心情を理解したい。前回の宗教学も。多分それがアイデンティティなんだなあと、書きながら感じている。なんかこれも書きたいな。自分得。
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