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社会を知りたい④人工知能と経済の未来を読んで。感想。

社会をしりたい③の続き。社会を知りたい①~③全体を通しての感想回。今回読んだ本はこちら。

2つほどの記事で終わるかと思ったけど、最終的に4つの記事になった。もう少し要約できるようになりたい。

さてさて、今回読んだこちらの本は、専門的な目線から、素人の自分でもわかりやすい表現で解説してくれるいい本だった。実際に本に書いてある未来は来ないかもしれないけど、10年20年後に暮らしていく自分は、どういう背景があって、そこから作られた仕組みのある社会に生きていくのか、ヒントになった。多分、何度か見返すことになる本だと思う。

経済については、経済学そのものの基本を踏まえつつ、著者自身も述べていることだけど一般的ではない考え方が入っている。例えば、通説では貨幣量が増えても労働量や生産量は変わらないが、本書ではヘリコプターマネーが推奨されそれが日本経済の突破口例として書かれ、通説とは違う意見を述べている。実際に日本のマクロ経済政策がうまくいっていない要因も、通説から考えるもの以外のところにあるのかもしれないなと感じた。

私たちの未来と心

あと、著者はあとがきに思想家・小説家であるジョルジュ・バタイユの「有用性」と「至高性」について書いている。本書を読んだ後だと余計にしっくりきた。有用性とは役に立つこと、至高性とは役に立つ立たないに関わらず価値のあるものごとを指す。例えば『朝の陽ざし』は人によって、これがないとはじまらない…!というような至高性のあるものだろうけど、有用性で見ると資源を育てる単なるカロリーということになる。バタイユはこうした有用性を批判した。以下、ここなるほどと思ったところ引用。

資本主義に覆われたこの世界に生きる人たちは、有用性にとりつかれ、役に立つことばかりを重宝し過ぎる傾向にあります。将来に備えての資格のために勉強することはいうまでもなく有用です。(P236)
ところが、その勉強は未来の利益のために現在を犠牲にする営みであるとも言えます。現在という時が未来に「隷属」させられているのです。有用な営みに覆われた人生は奴隷的だとバタイユは考えました。(P236)

資本主義の社会、つまり有用性を重視して、それを求めるための犠牲は隷属ではないのか?と提起しているのだと思うんだけど、今回の主題であるAIと経済について考えると、脱労働化社会になったときに有用性ばかりをみていたらどうなるんだろうと思った。

役に立つこと(有用性)を重宝して、上記引用文のように価値の基準を社会から見た有用性と考えたら?その考え方は、人は社会に価値を生まなくてはいけないと考えさせる。労働者のほとんどが働かないことになるかもしれない未来、みんなが労働という社会的有用性を示せなくなる未来、そう考えている人の心は持つのだろうか。そんなことを考えるきっかけになった。

さてさて、じゃあこれを知った自分は何をしようか。どういうものを作っていこうか。そういう気分にさせてくれる良本だった。

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