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フレッド・ケレメン『Fate』現実と地獄との距離はあまりにも短い

主に近年のタル・ベーラ作品における撮影監督として有名なフレッド・ケレメンの監督二作目で、『Frost』『Nightfall』へと連なる三部作の第一章。夜の街を歩くロシア人移民アコーディオン弾きの人生最悪の日と題せばいいのか、地獄のような画質の悪い映像の中で、台詞少なに転落していく男とそれに巻き込まれた女の姿をねっとりと克明に描写している。タル・ベーラに比べると暴力やセックスといったむき出しの過激描写が先鋭化しており、1994年のドイツという土地の、様々な背景を持つ人々が醸造する負の雰囲気の中でも生き延びようとする不滅の意志を感じることができる。特に視点人物が入れ替わってからの後半における、女性の立ちすくむ、走る、踊る、煙草を吸うといった所作が非常に美しい。

・作品データ

原題:Verhängnis
上映時間:80分
監督:Fred Kelemen
製作:1994年(ドイツ)

・評価:80点

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