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オータム・デ・ワイルド『EMMA エマ』オースティンの世界に浸る造形美

ジェーン・オースティン『エマ』七回目の映像化作品であり、写真家やMV監督として知られるオータム・デ・ワイルドの長編デビュー作品。グレタ・ガーウィグが『若草物語』のラストを改変して現代性を帯びさせた『Little Wpmen』公開された半年後に、原作を特に改変せずとも、色彩や衣装や音楽や演出によってどこか現代的な雰囲気を持った映画が登場したのだ。特に『Meek's Cutoff』以降のケリー・ライヒャルト作品の撮影を担当するクリストファー・ブローヴェルトが作り出した、どこか人工的な色彩の美学は目を見張るものがある。そもそもの物語は他人同士をくっつけようとする自称"恋のキューピッド"エマ・ウッドハウスの精神的な生長譚であり、現代版として製作された『クルーレス』でも大筋に改変がなされなかったなど既に物語が現代的であるという話は、この際取り敢えず置いておく。

本作品の魅力は、自身の過信しながらも過ちに気付けば謝ることの出来るエマを演じた気品溢れるアニャ・テイラー=ジョイ、そんな彼女に従う純朴な少女ハリエットをコミカルにドタバタと演じたミア・ゴス、エマのライバルとして落ち着いた同年代の女性ジェーンを演じるアンバー・アンダーソンなど、個性豊かな女性陣にある。特に、やらかす度に甲高い声で改まって"ミス・ウッドハウス!"と呼びかけるハリエットの姿は実に可愛らしいし、書かれた同時代から見た"現代的"という目線は我々が本作品に感じる"現代的"という目線に近いのかもしれないと思わせるチャーミングさがある。

ちなみに、原題にピリオドが付いているのは、これが歴史(ピリオド)ものであることを示しているらしい。『エマ』を知るというより、その豪奢な世界観に浸ると言ったほうが正しいように思える、実に華やかな映画だ。

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・作品データ

原題:Emma.
上映時間:124分
監督:Autumn de Wilde
製作:2020年(イギリス)

・評価:60点

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