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Kersti Jan Werdal『Lake Forest Park』遺された生徒たちの物語

大傑作。シアトル郊外の街、レイク・フォレスト・パーク。都市と自然が心地よく融合した田舎町で高校生たちは、同級生の暴力的な死と向き合わなければならない。という話らしい。というのは、本作品では冒頭のラジオ以外はほとんど会話もなく、あってもそれほど重要な要素とはなりえない上に、冒頭のラジオですら音楽によって消えかかっている(普通に聞き逃しました、すいません)からだ。しかし、公式のあらすじを読み飛ばし、冒頭のラジオを聞き逃しても、本作品が持つ喪失感の予感のようなものには胸が締め付けられる。何気なく同級生たちと丘の斜面で遊んだり、トイレで化粧し合ったりという永続しない時間についての儚さもあり、ジェームズ・ベニングみたいな寂しげな風景ショットもあり(なんとクリエイティヴ・アドバイザーにジェームズ・ベニングがクレジットされてるらしい!)、固定長回しのシンプルな映像ながら、様々な感情と時間そのものが渦巻いている。生徒たちが観ている映画はベニングの『ランドスケープ・スーサイド』らしい。これも同級生を殺害した女子高生が題材の一つとなっていた。そもそも映像が事件の後の話なのか前の話なのかも明示されていないので、もしかしたら亡くなったという生徒との思い出なのかもしれない。ガス・ヴァン・サントとジェームズ・ベニングの邂逅と評されるのも納得。

・作品データ

原題:Lake Forest Park
上映時間:60分
監督:Kersti Jan Werdal
製作:2021年(アメリカ)

・評価:90点

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