部室のゲームと

ひとつ上の学年に「レジェンド」と呼ばれる人物がいた。話のまくらなのだから、その人が実際にはタカハシであったという事実はどうでもいい。ともかく、部長は彼のことをレジェンドと呼んでいた。

レジェンドのレジェンドたる所以は、その枠から外れた行動にあった。沖縄に修学旅行に行った時には、全長約60cmくらいのゴーヤのぬいぐるみを持って帰ってきた。卒業するときは、部員全員+1名分のチョコボールを1カートンずつ買ってきた。

中でも最大のものは、部室兼男子更衣室にテレビとスーパーファミコン、ニンテンドウ64を持ち込んだことであった。

テレビは小型のブラウン管テレビで、緑の画素が死んでいた。だから、画面は常に黄色がかっていた。そのせいで、私の中の聖剣伝説2は他の人が思うより黄色い。

当然、本体だけではなくソフトも大量に持ち込んでいた。スマブラ、マリオカート64、ポケモンスタジアム2、F-ZERO X、ムジュラ。ロックマンX、ロックマン&フォルテ、ドラゴンクエストI&II、III、IVもあった気がする。聖剣伝説2、大爆笑人生劇場!!〜大江戸日記〜。これだけ思い出せるということは、まだ他にもあったはずだ。

私たちは、めいめい勝手にそれらのゲームをプレイした。一番プレイしたのは私だったのではないかと思う。

レジェンドはドラクエIIIをプレイしていた。勇者のパーティーになぜかトイストーリーにちなんで、「バズ、ウッディ、からさわ」と名前をつけていた。そこからゴーヤのぬいぐるみはからさわと呼ばれるようになったが、女子の先輩は頑なにゴーヤちゃんと呼んでいた。

私は聖剣伝説2をプレイした。クリアまでプレイした。部長はたしかムジュラをクリアしていたはずだ。後輩も聖剣伝説2をプレイして「武器グローブ縛りなので『聖剣伝説』ではなく『聖拳伝説』」です!」と言っていたのだけど……スーファミのゲームはデータが飛びやすい。後輩がプレイしてる横を通って私がガタッと揺らして、データを飛ばしてしまった。

あまり多くはなかったが、部員で揃ってゲームをやったこともあった。

ルージュラのグラフィックの気持ち悪さに笑った。マリオカートで競いあった。F-ZEROはレーシングゲームかつ格闘技であることを知った。

大爆笑!!人生劇場は、私たち全員が初見のゲームだった。いや、持ち主であるレジェンドはプレイしたことがあったのかもしれない。

形式としてはマリオパーティーに近い、すごろく型のゲームだった。ミニゲームあり、イベントあり、プレイヤーキャラを育てながら進んでいく人生ゲームだった。あからさまにすこしエッチなほのめかしもあったりして、思春期の私たちはそれこそ爆笑しながらプレイした。惜しいことに、第二幕に入ったあたりでやはりガタッと振動でフリーズしてしまい、最後までプレイすることはできなかった。いつか最後までやってみたいとは思うけれど、あのときの仲間は、あのときの私たちはもういない。

楽しかった。きっとゲームが楽しかったのではなく、一緒にいることが楽しかった。いや、部活そのものより楽しかったから、やっぱりゲームは楽しかった。

時代は、ちょうどPSvitaが発売される頃の話。


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部活の思い出

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