『みすって…』(ショートショート#5)
俺は試されている。
また、やってしまったのだ。
あるべきできないことを、
先方に言ってしまった。
本来であれば、
リスクを考えて、上司に報告し、
あるべき対処をとっておくべきだろう。
ただ、本当に自分は弱いと思う。
先方は、とても緊張感のある人。
少しでもおかしなことを言えば、
そこをつかまえてきて、
プレッシャーをかけ続けられる。
かといって、
上司は自分の利益を考えるだけで、
こちら側が少しでもミスをすれば、
延々と説教をしてくる。
本当に、それもねちねちと・・・
それでメンタルをやられてしまう。
だから、このままでいいのではないか、
そんな逃げることを思ってします。
実際、先方が覚えているかどうかなんて、
わからないのだから。
逃げると思っているが、
いや、違う。これは、守るためにあるんだ。
自分も、先方も、上司も、
すべてを守るために、これは
気づかなかったことにするんだ。
それが、今、最適な選択なんだ。
◆
こうやって、人は、自分に言い訳をする。
それをするたびに、
人は、自信を失い、虚勢を張って、
何かを演じることになる。
それが、大きくなっていくことで、
本来の自分というものを見失う。
だから、みすって嫌なんだ。
みすは、本当に厄介だ。
放っておくと、自分を、むしばんでいくから…