20240117

 芥川・直木賞の選考会が行われ、芥川賞に九段理恵「東京都同情塔」(新潮2023年12月号)、直木賞に直木賞に万城目学『八月の御所グラウンド』(文芸春秋)と河﨑秋子『ともぐい』(新潮社)がそれぞれ選ばれた。「東京都同情塔」はあらかじめ読んでいた。ザハ・ハディドの国立競技場が建設された歴史改変もので、都心に「シンパシータワートーキョー」と呼ばれる高層刑務所を建設するという計画が実行される。その塔を設計する女性建築家を主人公にポリコレや生成AIなど現代社会が直面している問題を批評的に描いている。わたしが読んだ実感としては、とても中途半端に終わったものだった。無理やり全てのテーマに答えを出した、つまり、単純に字数が足りていなかった気がした。それくらいありとあらゆる問題意識の高さを示していたと思うし、それが前半はぐいぐい読ませる推進力にもなっていた。普通に五〇〇枚を超える長篇として書けば、重厚な物語になったと思う。とは言え、彼女は今作がまだ六作目という駆け出し作家でもある。ぜひ彼女の長篇を読んでみたい、改めてそう思った。

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