20230301

 晴れて気温も二〇度近く上がる行楽日和だった。朝から渋谷のパルコにある映画館で『イニシェリン島の精霊』を観た。『スリービルボード』のマーティン・マクドナー監督による作品で、アイルランドの孤島で妹と同居しているパードリックと親友だったコルムが突然「お前と話すのをやめる」と宣言したことから、理由が分からずなんとか関係を修復しようと試みる中で島の人々をも巻き込み、事態は思わぬ方向へと向かっていく。パードリックを演じたコリン・ファレルは二〇ほど前に大ブレイクした後、これといった代表作に恵まれていなかったが今作では教養ある妹シボーンと違い、大した取柄のないつまらない男という難しい役を上手く演じている。俳優として素晴らしかったのは、パブでも出禁をくらう発達障害らしき男ドミニクを演じたバリー・コーガンだ。これからの伸びしろを見せたと思う。そして、何より今作で印象的なのはロバのジェリーとコルムの飼っている犬だ。ジェリーはかなり人懐っこく、食卓に入り込む度に妹に叱られ、それをなだめるという場面に何度も癒される。犬も利発で愛らしい表情を見せる。さらに馬車を引く馬や冒頭で登場する海鳥、が乳牛として飼われている牛など動物たちのカットが効果的に使われていて、彼らはクライマックスに重大な意味を持つ。

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