見出し画像

プラネタリウムのリラックス&クリエイティブ効果

プラネタリウムのリラックス効果


近年、キャンプやグランピングが大人気ですが、プラネタリウムは、満点の星空を都会で手軽に味わえる魅力があります。また、最近は家庭用プラネタリウムも登場しており、家でも満点の星空を楽しめます。星空を眺めて宇宙に思いを馳せると、しばし日常を忘れ、ストレスを低減できそうな気がしますね。

ある調査データ*によると、世界には3,500を超えるプラネタリウム施設が存在し、日本は施設数でアメリカに次ぐ世界第2位のプラネタリウム大国だそうです。また、日本プラネタリウム協議会によると、日本では年間800万人以上の人がプラネタリウムを訪れます**。

プラネタリウムの運営は、地方自治体等が担うケースが多い中、民間企業として存在感があるのはコニカミノルタ社です。私の会社(WINフロンティア)では、コニカミノルタ社が運営する「コニカミノルタプラネタリウム “天空” in東京スカイツリータウン®️」で上映されるプログラムのリラックス効果を、20代から40代の働く女性20名を対象に、生体センサ(胸に装着する小型心拍センサ)でリアルタイムに測定し、プログラムのどこで「癒されているか」を分析しました***。

その結果、鑑賞前後の体表温度の変化から、プログラム全体のリラックス効果が見られ、特に雄大な自然の場面夕暮れや夜空を中心とした場面、そして、流れ星の場面で、副交感神経が有意に高まり、リラックスしている傾向が見られました。プラネタリウムで癒されるという感覚は、生体反応からも確認ができたということですね。


心理的距離とクリエイティビティ


ここでちょっとプラネタリウムから話題が逸れますが、以前にもこのnoteで記載した、心理的距離とクリエイティビティの関係について説明します(詳しくは、「クリエイティビティを上げる科学的だけど簡単行動(その1)」をご覧ください)。なぜなら、心理的距離はプラネタリウムにとても関連があるからです。心理的距離とは人が感じる主観的な距離のことで、以下の4種類があります。

① 時間的距離
 
近い将来に起こる出来事ほど心理的距離は近くなります。例えば、明日の飲み会と1年後の記念パーティを比べると、明日の飲み会の方が心理的距離は近くなります。

② 空間的距離
 
今いる場所に近いほど心理的距離は近くなります。例えば、地元で起きた事件と遠い外国で起きた事件を比べると、地元で起きた事件の方が心理的距離は近くなります。

③ 社会的距離
 
自分に関することは心理的距離が近くなります。例えば、自分へのご褒美と他人へのプレゼントを比べると、自分へのご褒美の方が心理的距離は近くなります。

④ 仮想的距離
 
実現性の高い出来事の方が心理的距離は近くなります。例えば、来月のボーナスと先日買った宝くじを比べると、来月のボーナスの方が心理的距離は近くなります。

私たちは、心理的距離が近いほど具体的に、遠いほど抽象的に考える傾向があり、また、抽象的に考える方がクリエイティビティが高まることが研究でわかってきています。

では、この心理的距離をプラネタリウムに当てはめるとどうでしょうか。

プラネタリウムでクリエイティビティが高まる!?


プラネタリウムは満点の星空を眺めて遠い宇宙に思いを馳せることができますが、これは先述の4つの心理的距離のうち、空間的距離に関連します。そして、何百光年も先にある星を見るという意味では時間的距離にも関連しそうですね。海外の研究では、1年先のことを数分考えただけでクリエイティビティが高まり、アイデア数が増えたという報告がありますので、プラネタリウムはクリエイティビティを高めるのに効果的でしょう。

また、クリエイティビティを高めるにはリラックスすることも大事ですが、私たちの研究が示すように、プラネタリウムはリラックス効果が期待できますので、クリエイティビティと相性が良いと思われます。

ただし、クリエイティビティを高めるには、単にリラックスするだけではダメです。過去25年間のクリエイティビティと気分に関する論文をレビューしたオランダの研究から、以下のことがわかっています(詳しくは、「クリエイティビティと気分の深い関係」をご覧ください)。

ポジティブで活性度の高い「興奮」や「熱中」の状態が、クリエイティビティを生み出すのには最適である。

ポジティブだが活性度の低い「リラックス」の状態では、あまりクリエイティビティが高まらない。

つまり、プラネタリウムで単にリラックスしただけでは、クリエイティビティを高めるのに最適な状態にはならないということです。最適な状態にするには、活性度を高める必要がありますので、プラネタリウムで遠い宇宙に思いを馳せ、リラックスした後に、軽く散歩するなどして活性度を高めると、良いアイデアがどんどん浮かんでくる状態になると考えられますので、ぜひ実践してみてください。

参考文献:
* http://www.aplf-planetariums.org/en/
** 日本プラネタリウム協議会ホームページ https://planetarium.jp/info20211011/
*** 江尻綾美, & 石上暁音. (2019). 癒しを与えるプラネタリウムコンテンツの取り組み. Konica Minolta technology report, 16, 147-151. , 駒澤真人.(2019).女性を対象としたプラネタリウム鑑賞時の リラクゼーション効果について. NATURE INTERFACE 2019年8月発行 No.76
・Trope, Y., Liberman, N., & Wakslak, C. (2007). Construal levels and psychological distance: Effects on representation, prediction, evaluation, and behavior. Journal of consumer psychology, 17(2), 83-95.
・Baas, M., De Dreu, C. K., & Nijstad, B. A. (2008). A meta-analysis of 25 years of mood-creativity research: Hedonic tone, activation, or regulatory focus?. Psychological bulletin, 134(6), 779.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?