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【読書感想文】天国はまだ遠く / 瀬尾まいこ

📚あらすじ(BOOKデータベースより)
仕事も人間関係もうまくいかず、毎日辛くて息が詰りそう。23歳の千鶴は、会社を辞めて死ぬつもりだった。辿り着いた山奥の民宿で、睡眠薬を飲むのだが、死に切れなかった。自殺を諦めた彼女は、民宿の田村さんの大雑把な優しさに癒されていく。大らかな村人や大自然に囲まれた充足した日々。だが、千鶴は気づいてしまう、自分の居場所がここにないことに。心にしみる清爽な旅立ちの物語。


📚読書感想文

読了して、はじめに思ったのは
「千鶴が田村のところに居続けなくてよかった」
ということだった。
都会っ子らしくもろい精神の彼女が、
田舎でおおらかに生きる田村に惹かれるのは
まあそんなもんだろうと思ったし、
ここで結ばれてあたらしい人生を始めようとなっても
小説の終わり方としては十分に考えられた。
くだらないハッピーエンド。ファンタジーだ。
死のうとすることは、
あらゆるものから逃れようとすることだと思う。
もちろんストレスや責任からもそうだし、
しかし感動や喜びとも決別しなければならない。
死にたいほどしんどいとき、
人はうつくしいものが目に入らない。
感動することも喜ぶこともできない。感謝もできない。
千鶴は死ににきて、ずいぶん間抜けに未遂に終わって、
しばらくの休養期間を経て自分の居場所を自覚した。
きちんと生きることを選んだ。
ある意味、彼女はちゃんと死んだ。

じぶんを取り巻くすべてのストレスに辟易して
死んでしまいたいとか 消えてしまいたいとか
たぶんそういうのって
たいていの人は経験あることだろうと思う。
要は逃げ出したい。

当然わたしも考えたことはある。

いよいよ海外の果で死んでやろうと思って旅費を調べたら、
貯金で10日滞在できることがわかった。
なんだか拍子ぬけてしてしまった。
同時に、いつでも死にに行けると思ったら
いまじゃなくていいかと呑気になってしまった。

死ぬことまで考えたとき、
腹をくくったとき、
それよりも恐ろしいことなんてほとんどない。
わたしたちはほんの数十年しか生きないけど、
地球はもう何億年も続いてきた。
太陽は数え切れないくらい地球をまるごと照らしてきたし、
星たちはぎっしりと夜空を埋めてきた。
わたしたちはせまい世界で生きているから
そのなかで簡単に絶望を見つけることができる。
いちど死んでみて、世界の尊さを目の当たりにしたとき、
たいていのことは「なんちゃない」のかもしれないと思った。

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