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エトランゼ編集部
2017年4月1日 00:04
著:久坂 蓮 わたしというにんげんは、ほんとうは、どこにもいない。みんながわたしのことをどう思っていて、なにを感じているか、わたしは知らない。ともすればわたしを、馬鹿みたいなやつだと考えたり、あいつ、嫌いなんだよね、なんて、飲み会で、言われているかもしれない。けれども、わたしは、だれにもほんとうのわたしなんて、見せたことがない。ほんとうのわたしとはなにか、わたしだってわからない。わかるのは、あ
2017年3月31日 23:49
著:久坂 蓮 散歩にいこうよ、アキ。 遥(はる)にそういわれて、秋人は居間のソファのうえでつぶりかけていた眼をあけた。 散歩って、これから。 うん。これから行きたい。 寝椅子に横になった姿勢で、首を反らして壁にかけられた時計に目をやる。もう十一時を過ぎている。寝そべってテレビをみているうちに睡魔がやってきて、ちょうどこのまま眠ってしまおうと思っていたところだった。 明日が、
2017年1月31日 23:12
12月初めに行った作品発表会の小説を公開します。テーマは三大噺「トランプ」「毛糸」「みち(漢字変換自由)」、分量は2000字程度です。④「覚めない」 るり紺 ジリリリリリリ 目覚まし時計のなる音が突然耳をつんざいた。ぼんやりとする頭をおこしアラームを止める。はっきりとしない視界は、まだ青色の風景を微かに写している。夢を見ていたのだ。なにか、青い物につつまれたのだけは覚えてい
2016年12月14日 22:08
著:高岡はる 柚子吉の三回忌をしようと言ったのは姉の悠で、肌寒さが残る三月の上旬のことだった。「夕方の四時からにしようと思っているから、それまでには帰ってきてね。」 そもそも三回忌って、一回忌もしたことが無いと言うのに、どういう心境の変化だろうか。柚子吉は、父が拾ってきた犬だ。毛並みはこげ茶でツヤがあり、家の庭になっている柚子の木を、大変気に入っていた。その途端懐かしい気持ちとは反対に
2016年12月14日 21:56
12月初めに行った作品発表会の小説を公開します。テーマは三大噺「トランプ」「毛糸」「みち(漢字変換自由)」、分量は2000字程度です。①貴方は私の大富豪 カザリ 手元に残ったトランプはスペードの3とジョーカー。こういう時、私はなんとなくジョーカーを手元に残す。いや、なんとなくだと語弊があるかもしれない。ただ自分に抗えないが故にジョーカーを手放すことができないのだ。しかし、これが
2016年10月25日 22:22
2016年刊行 『New Drole』掲載の各作品の、冒頭約1000字を公開します!①『少年のアルゴリズム』 著:霧原礼華 冬が深まりつつある十一月下旬。夕刻を過ぎた頃の街は華やかなイルミネーションによって彩られ、厚着をした人々の群衆によってさらに賑わいをみせていた。私は一時間前に仕事を終え、つい先ほど自宅の最寄駅に着いたところである。しかしホームに降りた途端、すぐに冷えた外気を浴びせられ
2016年8月30日 20:47
著:高岡 はる 裏庭で採れたふきのとうは、天ぷらにすることに決めた。古びた中華なべを台所の戸棚から取り出すと、お久しぶりです、とでも言うように雄々しく、その姿を主張した。持ち手ははげかけ、中の鉄板部分は、あの新品だった頃のぎらぎらとした銀色の光沢は、なくなってしまったが、年月を経て得た貫禄のようなものが、なべ全体を覆っていた。 ナベは中華ナベが、いっちゃん良いけんのおう。
2016年8月26日 18:24
著:脂腿肉無骨一本の矢ではすぐに折れてしまうが、三本の矢を束ねればサイダーパンク小説が書ける「お帰りなさいませ、ご主人様!」「いつものを、頼む」「ごめんなさいご主人様。今日はいつもの、無いんです」「何?」「ひえっ!? ごめんなさい、怒らないで! 代わりに良いもの、仕入れてますから!」「ああ、早くした方が良い。急がないとあんたの頭が吹き飛ぶぞ」「す、すいません!」
2016年1月31日 14:51
冒頭三十分、竹見氏大遅刻。急遽、編集担当者からえりなさんへのインタビューへ変更。Q 作品を読んだときの印象はどうでした? おもしろいなと思いました。外套が語り手っていうのがすごくおもしろくて…。だから、自分がイメージしたものを書き起こして竹見さんに送ったら、ご本人にもイメージがあったらしくてイラストが送られてきてそこにいろいろと加えていきました。Q 描くうえでキャラクターに対する印象
2016年1月10日 23:30
作者都合により非公開に致します。申し訳ありません。
2015年9月28日 16:15
学生時代は小説を書くことに没頭し、今は倦怠的な日々を過ごす「私」は、ある日学生時代からの友人・藤堂から鳥を飼ってみないかと言われる。『宵を待つ鳥』著・竹見名央 絵・えりな まもなく日も翳ろうとしていた頃、玄関の硝子戸が開く音がした。 そうか、もうこんな時間かとひとりごちて、伸びをする。この家に立ち寄る者は少ない。確かめなくとも、客人の正体は既にわかっていた。強ばったままの唇から無
2015年8月24日 02:27
少女が、さあ話してと言った。「なにを?」「あなたの悩みを。私たち、そのために集まったのよ」こうして鳴川の相談室が開かれた。―― 苦脳スタンプ。悩みの種たち。嘘ばかり小説。僕はこれを聞く君たちに相談したい。僕は行くべきなんだろうか?『鳴河相談室』著・修平 絵・市川正晶「小説ってのは履歴書みたいなもんだ。嘘を書きならべて、それが高度であればあるほど認められる。実体なんてもんは伴わない
2015年7月16日 18:17
猟師の話 十七日の夜だったから、そりゃあ月が明るかったよ。地面に転がった石ころまで見えちまうくらいにさ。もっと暗ければ、俺もこうはならずに済んだかな。 何ってお前さん、鬼だよ。 あの晩にな、俺は鬼を見ちまったのさ。ああ、お伽噺だと思って莫迦にしているんだろう。無理もねえ、誰だってあんな恐えもんを信じたくないもんな。 昼間に獲った猪を売りに行くのに、ひとりで歩いているところだった
2015年6月22日 12:59
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