見出し画像

滑り込みで確保!秋の味覚

最近の車って車内に鍵を忘れたら警報が鳴るらしいですね。なんかボタン押すだけでエンジン付くし、いつの間にかすごく進化してる。僕は原付なので関係ないんですけど。

人生3度目の原付インキーをしました。

1度目は家の前。ポケットの財布には家の鍵、家の中にはバイクのスペアキーがあったのでなんとかなりました。

2度目は家から50km先、電車は高いからって原付で目的地に向かった時です。目的地でインキー。財布の中に家の鍵があったので電車で家までスペアキーを取りに戻りました。一体何をしてるんでしょうか。 

そして3度目。

その日は南の島(九州)に上陸しつつあった台風の影響からか、こちらでは通り雨のボスみたいなのが度々現れては消え、を繰り返していました。

バイトを終えた僕は、晴れた空を見上げながら駐輪場へ向かいます。21時、夜はこれから。夏の終わりの涼しくなった外気と羽虫を肺いっぱいに吸い込んで、労働からの解放感に浸ります。

鞄をリアボックスに放り込んでしっかりロック。

鍵を回してエンジンを掛け……………?あれ?鍵は?

まあまあ、着いた時は土砂降りで大変だったから、ロッカーに置いてきてんじゃないの?

……ない。

落ち着いて考えろ。着いた時どうした?合羽を脱いでそのへんに掛けてから、鞄を出して、鞄の中に鍵を入れ………た。


そしてその鞄は今、リアボックスに入れて、リアボックスはオートロック。

やったわ。

ゆっくり深呼吸をしたら、「原付 インキー」で調べます。ずらっと出てくる鍵屋さんの広告とまとめサイト。樹脂製のシートは手で強引に開けられる、と書いてあります。シート下にはリアボックスのスペアキーを入れているので、それさえ取れれば万事解決です。

「イ゛ィ゛ィ゛ィ゛ッ……!」

開くわけがないですね。クソ。

クソッッッッ!!!!クソ〜〜〜〜ッッッッ!!!!!

あーでもない、こーでもないと2時間ほど逡巡した後、意を決して鍵屋さんに電話を掛けます。お金のことははっきりとはわかんないので、とりあえず来て貰うことにしました。

ここでゲリラ豪雨がまた冷やかしに来て、手前の道路が膝上あたりまで水没。これ解錠しても出られなくない?

インキー実況をするな

道路水没を「急展開」って言うな

あだ名がゴリラってこともバレたわ。

とにかく鍵屋に来てもらったので、裏から入って頂きました。

「ちなみに身分を証明出来るものって……」

「この中なんですよね」

「ですよね〜!」

全財産がその中です。

手際よく作業に取り掛かります。リアボックスならピッキングで開けられるのでしょう。頼もしいな〜。

「無理です」

え?

「無理です」

「え」

「ピッキングが非常に難しいように作られてます。鍵作りますね」

「あ、じゃあお願いします」

この場で作るんですか?すごいですね……、何時間くらい掛かるの?

「できました。」

早くない???????????

「これでいけると思います」と言って鍵を差し込みます。2分くらいしか経ってなくない?どうやって作ったんだ……



かぱっ、と音がしてシートが浮きます。解錠できました。やったーーーー!!!!!どうなるかと思った。

鍵を無事に回収できました。やっと逢えたね……!


「それでお値段なんですけど……」

完全に忘れていました。聞きたくないのでこのまま帰っていいですか?

「30800円です」

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ(じゃあカードでお願いします)」

鍵を作るとめちゃくちゃお金かかるみたいです。さよなら。


いつの間にか雨も止んで、道路の水も引きました。
すっきりとした空とは裏腹に、僕の行く末には暗雲が立ちこめます。震える手でクレジットカードを取り出しながら、行く予定だった同人即売会を心の中で諦めました。がんばれ、来月の僕──。




これが数ヶ月の出来事。その後「マジでアホ」「バカ」「なんで?」「チンパンジーと道具使って餌取り合戦させたら負けてそう」「シベリアとかでインキーしたらもっと面白いぞ」など好き勝手言われ続けはや数ヶ月、僕は今もお金がありません。バイト1、バイト2、更に車校も相まって忙しい日々です。

快活の300円無料券の存在を教えて貰ってフル活用したり、貰ったタダ券を使い倒したり、農業してる友人からかぼちゃを貰ったり、様々な手段で食費を削ってきました。

そんな僕にオタクからアドバイスが。


「葛って食えるらしいよ」

なるほど、時間の無い自分でも、葛なら簡単に採集出来そうです。そこらじゅうに生えています。

「蜘蛛も食えるらしいよ」

なるほど、時間の無い自分でも、蜘蛛なら簡単に採集…………出来るか〜〜〜〜っ!!!!!!!

でかい蜘蛛の巣なんて高い場所ばっかだから捕獲が大変でしょうが!

とはいえ、いつの間にかもう虫も鳴かなくなって、朝夕は気温が酷く下がる日が続き、まもなく冬が始まろうとしています。あまり選り好みもしていられません。

とりあえず葛だけでも採集しましょう。

食料がいっぱい生えてる!
葛の生えてない路肩を探してバイクを停めます。

最悪です。人類の敵。

くっつき豆を剥がすのはかなり面倒なので、そのままで葛の若葉と蔓の先っぽの柔らかそうなところを摘んでいきます。

アク抜きをします。毛むくじゃらだ……。

蜘蛛、いました!女郎蜘蛛です。秋にたくさん見るので秋の味覚とします。案外手の届く場所にいるんですね。難なく回収できたので、そのまま冷凍庫に入れて凍らせました。

家にあったシャンタン、甜麺醤などで適当に炒めました。上に乗ってるあさりみたいなのが蜘蛛です。右の白飛びは米です。

調べた時は「アスパラっぽい」「豆っぽい」などといった感想が多めでした。いただきます。

維管束ッッッ!

繊維質でいつまでも口の中にいます。気になるクセはないけど、人間が食べるべきではないな、ということはわかります。なんか……なんか……キモい……。
葛の旬は春らしく、前回食べたコカナダモの方がはるかに美味しいです。

蜘蛛
調べた時点では「豆っぽい」「レバーみたい」といった感じで、不味くはなさそうです。絶品だと賞賛するものもあれば芳しくないものもあります。ではいただきます。

「生臭い豆」でした。ギリギリ不味くはないけど、変なクセがあります。イナゴと枝豆を混ぜて、生臭みを足したような味、と言えば伝わりやすいかもしれません。常食には向いていませんね。水分の多いレバーのような食感です。

なんだか満足感がないですね。

さっきのくっつき豆です。剥がすのがどえらい大変でムカついたので茹でてやりました。こいつも秋の味覚です。いただきます。

豆だ!!!!!!!

ほとんど味はしませんでしたが、食感が枝豆でした。いちばんうまい。満足です。なんでお前がトップなんだよ……

ごちそうさまでした。


というわけで、これからも金欠生活は続きます。なぜお金が貯まらないのか?意味わからん理由で金を失いつつ、飽きもせず旅行とか行くからです。この間は月も半ばで残高が900円になりました。がんばって生きていきましょう。以上、秋の味覚最底辺でした。

追伸 : この日から甜麺醤が苦手になりました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?