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カスアパートで捌くクソデカ淡水魚

「街中の水路」って言葉、とても興奮しませんか?ゾクゾクしませんか?しますよね。 そう、街には流れの緩い水路が多くて、しかも大抵魚がいるのですごく興奮するんですね。先日ザリガニを探していた時にそういう水路を見つけました。綺麗な水路です。欲を言えば水深の分からないくらいの汚く濁った水路が良かったですが、これで充分です。

鯉が沢山いました。いままで鯉釣りに挑戦するも不発だった自分にとって最高の水路です。雨上がりを見計らって出かけます。

餌は粉砂糖のようなカビの生え方をしたパンを使います。おいしそうですね。

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半額だったのでとりあえず買いましたが、自分にパンを食べる習慣がありませんでした。齧ってみたら酸っぱい味がしました。程よい発酵を噛み締めながら水路へ向かいます。

パンを水路に投げると、ごぽっ、という音と共にすごい勢いで捕食します。完璧です。
パンに針を刺して投げますが、パンだけ食べられて、なかなか掛かりません。何度も挑戦しているうちに暗くなってきました。鯉の活性も日没と共に落ちていきます。「これで帰ろう」という最後の一投で掛かりました。

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物凄い引きです。めちゃめちゃ楽しいです。あちこち走り回られ、10分あまり格闘した末、針が外れて終わりになりました。

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鯉専用の針が曲げられました。物凄い力ですね。指の力では戻せません。


翌日、昨日の要領で餌を入れます。網を出し忘れていました。あわてて竿を置いて網を出しますが、こういう時に限って鯉が掛かります。

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と、いうわけで鯉に竿をもっていかれました。
こうなると大変です。追いかけながら水路に飛び込みます。

この日は買い物に行った直後です。白パーカーに買いたてズボンという、とても釣りする奴とは思えない格好でした。

なんとか竿を確保した僕は、引き上げるためにタモのある場所まで戻らなければなりません。水路を上がります。

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足を掛けるブロックは苔でぬるぬるで頼りになりません。左腕と電線カバーに自分の全てを委ねて力ずくで上りました。筋肉は全てを解決します。

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数時間前までお店に並べられていたおニューのズボンです。哀れですね。

この日はスマホを家に置いて来てしまったので写真はありません。あのレベルの絵を描くのに1時間とか使ってしまいました。哀しいですね。

鯉を風呂に入れます。やたら水漏れをするビニール袋に入れて持ち帰りました。バイクの後ろからずっと水が垂れていました。

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75cmくらいです。釣り上げてきた魚の中で過去一でかいです。家に着いた頃には袋の水もかなり抜けて、少し弱っていました。でも浴槽に入れるとすぐに復活します。恐るべき生命力。オタクは外に出るとすぐ死ぬのに……。



泥ぬきはしてないので内蔵は食べません。鯉の苦玉は毒なので潰さないよう特に気をつけて捌きます。

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鯉を食べるにあたって色々調べましたが、総評「おいしい」でした。地元ではイワナ、アマゴ、アユが食卓を占領していてコイ科の出る幕はありませんでした。今は夏、鯉の旬は冬です。どうなんだ……?


外は雨、しかも真夜中なので家で捌かなければなりません。でもわが家は一泊3000円くらいのビジホみたいな狭さで、鯉を置く場所すらほとんどないです。一番広くて処理の楽そうな風呂場で捌こうと思います。風呂掃除のときの腰に悪そうな姿勢のまま血抜きをしたらすぐに内蔵を出します。ここを素早くしないとあっという間に臭みが出るそうです。

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殺害現場じゃん。

自宅を事故物件にしてしまった……。次の入居者から「夜中に風呂場から水音がする」「パンがすぐカビる」というクレームが付いたら僕のせいです。

ブツが排水溝に流れないように全て回収したら、腰に負担をかけながら鯉をおろしていきます。


隣の部屋からはゴソゴソと生命反応があります。まさか隣人は僕が風呂場で鯉を解体しているとは思わないでしょう。隣人には僕の方から何度か意図しない壁ドンをしてしまったため、一方的に気まずい感情を持っています。一度挨拶された時も、まさか自分宛だと思わず、「アッ」とだけ返すなどした事もありました。

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ざっと解体しました。アホほど疲れました。身がものすごく赤いです。出刃包丁に刃欠けが目立ってきましたが、デビューしていきなりスッポンやらナマズやら骨の硬すぎる生き物で酷使させられていたため仕方がありません。砥石を注文しました。

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台所に頭を置くと大きさが分かると思います。「自炊?袋麺茹でるやつでしょ、知ってるー!」くらいの頭で設計されたような台所ではとても捌けないことが分かります。普段の自炊でさえ苦労します。調味料と洗剤などがごっちゃで置かれているので、歯ブラシに胡椒をかけたり下味付ける時に歯磨き粉を投入しそうになったりします。

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奥に見えるボトルはコンタクトレンズの保存液です。まな板を敷く時スペース確保の為に移動させて、そのまま忘れてIHを使っています。写真を見返して気づきました。

鯉こくを作ります。塩揉みの後、塩水処理をして牛乳、酒に漬けました。これで臭かったらおしまいです。


できました。

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おしまいです。

出汁(出てるかは不明)は美味しいですが、身がやたら血くさいです。とりあえず作った分を飲み干します。

続いて味噌漬けを作りました。二日漬けます。さすがに臭みも抜けるでしょう。

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おわりです。

外側は味噌で味を殺すことでなんとかいけます。でも味噌の浸透してない部分が非常に前述の通りです。鯉は非常食ですね。体の割に可食部が少ないため、作った分は食べて、あとは釣り餌に転用します。捨てる訳にはいきません。

泥をよく飲むため、やはり環境に大きく左右される魚のようです。しかし「泥臭い」というより「血臭い」といった感じのため、もしかしたらまだ処理に問題があるのかもしれません。今後は職人に頼ろうと思います。ごちそうさまでした。

純粋な釣りとしてはとても楽しいです。着ていた白パーカーはものすごいシミが付いて何をしても落ちなくなりました。
よく見かける陽キャファッションをパクって買ったパーカーでしたが、やはりオタクに白系は向いていないようです。服のチョイスが黒っぽくなる理由がわかってきたような気がします。

服を選ぶのは面倒だし、お金掛かるし、買ったら汚れを気にしなければいけません。いっそ全裸の方が楽なんじゃないでしょうか。

街中の水路、全裸、鯉釣り……興奮してきましたね。

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