見出し画像

法務のPMIを振り返る

現在、私が所属している会社(以下「X社」という)はM&Aが盛んな会社なので、ここ1年半ぐらいでも法務でガッツリPMI(Post Merger Integration)に関わる必要のある案件が2件ほどあった。

私は、X社に入るまではPMIという言葉もロクに知らなかったが、今は
➀買収した会社・事業と自社の差分を把握 
②買収した会社の特性を踏まえて、自社に合わせる事・合わせない事を判断 ③合理的に必要な変更を実施すること 
と認識し、勘所も分かってきた気がしている。

当時「週1回子会社に行って、法務のPMIやってきて」という指令を受けた私は、何も分からなかったので書籍を漁った。しかし、PMI関連の書籍で触れられているのは、ほとんどが人事面。「法務面」を扱う書籍は見つけられなかった。なので、ほぼ我流になってしまったが、せっかくなので記録に残そうと思った次第。

今回は、M&Aにより100%子会社化したIT企業に関するPMIを想定して、述べている。この場合、子会社が、どれだけ自立できているかによって対応が変わってくる。最近経験したのは、親会社がコーポレート機能のほとんどを担っていた会社であったため、こういう場合は結構大掛かりに変えなくてはならない。

✓法務DD結果
M&Aを検討するタイミングで実施する法務デューデリジェンスで、目立った論点は出ていて、現場も理解しているはずなので、最初はそこから手を付けるのがやり易い。とは言っても、見つけやすい些末な論点ばかりが掲載されている場合も多い。

✓利用規約・プライバシーポリシー・契約書雛形確認
ウェブサービスが多いと、この辺りのボリュームが大きくなってくるので大変だが、事業上、主要な契約がここに集約されているので、過不足がないかしっかり確認が必要。最初に弁護士などに依頼して作ったまま、ほとんど改定がなされていないことがありがちである。

少し時間をかけて後から変えても良いのだが、特に規約等は運営主体が変更するという名目で周知したりするタイミングがあるので、それに乗じてガッツリ変えておくと後が楽である。

✓サイト上の表記確認(景表法/著作権法/個人情報保護法/特商法 等)
根拠のないNo.1表記等が危うい。その他にも有利誤認・優良誤認となる表記がされていないか。サイト上の写真・テキスト等の権利関係が自社の物になっているのか。個人情報の同意取得が適切にできているか、委託や第三者提供の要件を満たす運用ができているか等を中心に確認。

✓顧問弁護士の利用状況顧問
顧問弁護士にどの程度の難易度の内容を投げているか、月額で利用できる範囲を十分に活用できているかどうか。自社法務のリソースで十分にカバーできそうであれば、顧問契約を解約する。コストカット面でバリューを出しやすい部分であるが、自分の首を絞めかねないので慎重に検討が必要。

✓リーガルチェック/相談フローの整備
法務機能が社内にない場合は、親会社側が面倒を見ることになる。自社内でどれだけ解決できる状態になっているかは早めに確認が必要。場合によっては、早めにリソースを確保しておかないとパンクする要因になる。

✓契約書管理状況の確認/押印フローの確認
契約書の原本がどうなっているか。台帳が綺麗だと嬉しい。電子契約の契約書とかも含め、しっかりPDF等にされて保管されていると嬉しい。

押印申請等のワークフローシステムを使っている場合は、そこに押印直前のものが添付されているはずなので、そのデータも移管できるか要確認。

社長が押印しているのか、親会社が代表印を預かっているのか、法務や総務が預かっているのか。ワークフローは、親会社の承認を入れた上で、押印自体は自社でしてもらいたいところである。

✓社内規程整備
ボリューミーで、あまり触りたくない部分なので、基本的にはそのまま生かしたいところである。中でも重要なのは決裁権限で、どのラインから親会社への報告や承認が必要になるかは、最初に決定しておかなくてはならない。

また、もともと自社内にコーポレート機能を持っていなかった会社(親会社がやっていた会社)は、一部の承認や報告が親会社になっていたりするので、大幅に見直し・確認が必要になってくる。

規程は、規模感や成熟状況を考えず一律にするべきものではないが、親会社側にグループ管理規程なものをしっかり容易しておいて、どの規程をどの程度合わせるべきかの基準が明確だと悩まずに済む。

✓登記
PMIとはちょっと違う気もするし、必ずしも法務業務ではないかもしれない。合併等の大きなイベントがあると、大仕事なので、スケジューリングは早めに実施。取締役会設置会社への機関変更だったり、移転だったりのイベントもありがちなので、実施日から逆算&登記時に必要なエビデンスを確認して、総会や取締役会の決議用の書面等を忘れずに手配する。

✓反社チェック方法の確認
必要以上のコストをかけていたら親会社と合わせる。実施していなかったら、以後やってもらうよう伝達。

以上、思いつくところをざっと書いたが、法務と近しい子会社の人と仲良くなっておくのが一番大事。子会社の担当者も、一方的に色々なルールを押し付けられるのかと警戒している可能性もあるので、早めに挨拶して何度か飯でも食いに行って、カジュアルかつ本音のトークをしておくのが良い。ランチも気軽に行きにくい世の中になってしまったが、雑談も大事なので対面はしておきたいところである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?