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HYPER GAL 『AFTER IMAGE』 - 簡単には言語化されないノージャンルな音 - by 長谷川文彦

KKV Neighborhood #228 Disc Review - 2024.10.7
HYPER GAL 『AFTER IMAGE』by 長谷川文彦

HYPER GAL / AFTER IMAGE

関西を拠点にする二人組ユニット HYPER GALの3枚目のアルバムが出た。昨年配信のみでリリースした曲「Ghost」(このアルバムにも収録)がよかったのでアルバムが出るのを楽しみにしていたのだ。

冒頭、意表を突く感じでブラスの音で始まる。あれれ、こんな展開は初めてだと少しびっくりしつつも、しばらくするといつものHYPER GALの世界が始まる。ちなみに、”HYPER GAL”という名前から彼女たちの音を想像するとちょっとびっくりするかも知れない。なんか若い女の子がギャンギャンした音を出しているような感じもの(ギャルから想像される安直なイメージですみません)ではまったくない。彼女たちの音は一定の律動的なリズムとそこに被さる多彩な電子音で構成され、そこには少しドイツの香りがする。淡々としているようで、その音は力強く、不思議な中毒性がある。そして日本語の言葉が繰り返される印象的なボーカルが耳に残る。今回もその独特な世界が十分に堪能できる。セカンドより多彩な広がりのある音になったように思う。

彼女たちの音はものすごいオリジナリティがあると思うのだ。音楽のジャンルとして当てはまるものが見当たらない。オルタナティヴといえばそれまでだけど、そういう雑な言い方はしたくない。オルタナティヴでなくとも、パンクでもハードコアでもポストパンクでも、言葉によるジャンル分けは音楽を類型化・単純化していく。その方が楽で安心だからだ。ついつい「このバンドはポストパンクとしてよくできているな」とか安易に言ってしまうことがあるけど、ポストパンクなんてものは元々はニューウェイヴで、パンク以降の音の多様化であり、要するに「なんでもあり」だったはずだ。1980年代のニューウェイヴの頃は人がやっていないことをいかにやるかが勝負だった。それがいつの間にか「ポストパンク」という型にハマってしまっているのではないかと思う。なにかそういう思考から自由な音はないものか。
HYPER GALはたぶん誰もやっていなことをやっている。彼女たちのやっている音楽を何かに例えて言うのは難しい。簡単に「ポストパンク」とか「オルタナティヴ」とか言わせない何かがある。簡単に言語化されない音だと思う。

10月から海外ツアーに行くらしい。音もそうだけど、活動そのものも自由でいてくれて嬉しいな。ドラムの角矢胡桃はソロではノイズをやっている。こちらもカッコいいハーシュノイズなので、その方面に興味のある人は是非。


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