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自分好みすぎて恐ろしいアニメ - 「ココロコネクト」感想



dアニメストアで2012年夏アニメ「ココロコネクト」全17話を観た。

数年前に11話くらいまで観てその自分好みさにものすごい衝撃を受け、なぜかそれ以降を観ていなかったものをようやく完走することができた。

以下、各話鑑賞中のつぶやきコピペ
とうぜんネタバレ全開です


1-5話「ヒトランダム」

1話
そういや初っ端君の名は。だったんだな、忘れてた
主人公の、途中で間をとる喋り方が気になる

2-3話
男性恐怖症があんな簡単に解消されるわけがない。
太一がドヤ顔してるのもキツい。
男女の入れ替わりの悪用例

こういうの観ると、やっぱり女子だけのアニメのほうが気楽でいいな〜とも思うけど、そうやって理想に逃げているだけでは何も解決しない。
男性の加害性にちゃんと向き合って、その上で男女の関係から逃げないアニメあるんだろうか。ウテナは女性同士だろうし……


4話
女子3人の悩みがどれも重すぎぃ!DVにレイプ未遂とか…
でも女子キャラはみんな凄く良いなぁ。男性陣、特に太一のドヤ顔カウンセリングがキツい。いやこれどうなんだ?

稲葉の悩みわかるなぁ。それに対し自慰告白が有効だと思ってる太一はヤバいし、それで何だかんだ背中を押されてしまう稲葉もどうなんだ。自己犠牲野郎のそういう気持ち悪さを踏まえて許したのだとしても…

仲良い同級生男女グループの恋愛のこじれを描くために、結果的に男性の加害性がものすごく強調されているのはとても好み。問題は、女子の被害が男子によってあまりに自己欺瞞的に解消されたっぽく描写されている点。

最後の稲葉の自慰告白返しは、それが本当であれ嘘であれ、「男性だけでなく女性にも加害性はあるよ」というエクスキュースとして機能してしまうのがマズい。

のだが、社会の男女一般の話ではなく、あくまで親密な間柄のこの5人の話なのだから、こうした指摘は不適切なのか?

しかし、いくら5人の物語だとしても、それを大衆に向けた作品として作っている時点で言い訳はできないのではないか。

現実で女性に「あなたをオカズにしたことがある」と告げるのは性暴力だが、この2人の間では問題にならなかった。
という描写をどう受け止めるべきか……


6-10話「キズランダム」

6-9話
うーん……面白いんだけど、問題提起までは良いのに解決方法で途端にガバガバになるの草
「欲望解放」という、本能(加害性)/理性(道徳律)の二項対立に対して、相手を傷つけたくないという倫理も本能のハズだ、という論理は脱構築っぽくて好き。だが、その結果が「ラブホ行こう」なのは……

1章の人格交替には5人の閉塞性を助長する作用があったのに対して、2章の欲望解放は「他者への加害性」というテーマに沿って、5人以外の社会との折衝が課題になっているのは、順調に問題意識が進展していてよい。

太一が相変わらずキモいが、「自己犠牲野郎」という1章からの指摘をずっと引きずっていて、本人もそのことを受け止めつつ悩んでいるから真摯なのかもしれない。
とはいえ、傷つけた伊織に謝罪するシーンは典型的な懺悔オナニーの趣がある。

あと青木が唯に「その時は……守って下さい」と言わせたのは保守思想の剛速球で引いた。
委員長も典型的な恋愛至上主義者だし、彼女に太一が相談して「傷つけあってこそ友達」という回答を得るのは完璧に筋は通っているが、あちゃ~という感じ

10話
いや〜〜、ほんっと学芸会というか下品というかそうはならんやろってツッコミどころ満載のコメディだなぁ。でもそれが面白いんだよなぁ
章ごとに稲葉が太一にキスして終わるの草
いなばんかわええ〜〜沢城みゆきさんは神


11-13話「カコランダム」

11話
伊織と稲葉が太一を取り合う展開になったここで過去退行を入れてくるのホントよく出来てるな〜
あと、同い年では男は女より力が強いが、幼児化すればその力関係が変わるという意味でも、加害性の問題を引き継いでると気付いた。圧倒的な被害者としての幼児。ほんと上手い

三角関係が始まった3人に対して、唯スキスキbotだった青木が過去退行の影響で初めて唯への恋心に疑問を抱く展開も上手い。唯も伊織もそれぞれ問題を抱えているっぽいし、ふうせんかずら2人目の介入で太一に特権性が与えられるし、5人の物語というのを保持したまま進展させるのがマジで上手い

あとそういうことが吹き飛ぶくらい幼少期の皆が可愛い。青木でさえも可愛い。絵面でもう満足できるのはアニメとして勝利が約束されている。

あと、過去退行で自己同一性とか「好き」とは何か、みたいな問題設定を引き継いでいるのも凄い。

12話
元彼に突然遠方から会いに来られてあんな対応できるわけ無くて草
青木も何かカッコつけて去ってるんじゃねーよw

抱きついた唯の顔に浮かぶ汗がとても良かったです。変な意味ではなく。

13話
伊織の母親が親失格過ぎる。娘のことを考えてDV元夫を家に上げていたって色々ダメすぎる。
まぁでもあまりにもあっさりしたギャグチックな解決は、5人の外部のことは物語ではロクに扱わない姿勢だとすれば筋は通っている。

2番目の父親が再び家に来ている状況は、幼少期に擬似的に時間退行しているようなものなので、それと実際の時間退行を重ね合わせて伊織を追い詰める展開は上手い。


14-17話「ミチランダム」

14話
意思伝達は、本音が皆に伝わってしまう点では欲望解放と似ているが、同じ場に居合わせても特定の人にしか伝わらないという限定的な秘匿性があることが決定的に異なる。
この5人は外部からすれば互いに秘密を共有する共同体だがお互いに言えないこと/聞きたくないことは当然あり、その公開性と秘匿性の狭間をうまい具合に突いてくるマジでいやらしい現象と言えよう。
また、相手に合わせて振る舞いを変え、アイデンティティに人一倍悩む伊織がもっともダメージを受けることも必然だろう

稲葉が可愛すぎる。沢城みゆきさんのファンは全員観るべき
伊織がガチで突き放すのも好きだなぁ
意思伝達が視聴者にも公開されないときがあり、伝わっていない部員を追体験するいい演出になっている。
青木の下らなさにちゃんと言及して乗り越えるくだりやるのも良いなぁ

15話
今さら気付いたけど伊織は朝比奈まふゆにどんどん似てきてるな。"本当の私"を見つけてほしがってもいない分まふゆより深刻かも。ニーゴの4人と文研部の5人を比べるのは徒労だろうが……
データベース理論・キャラクター性へのアンチテーゼとも当然とれる。

めちゃくちゃシリアスでラディカルなことになってる伊織とバランスを取るかのように、爽やか熱血少年マンガみたいなことになってる青木と唯の2人がいい。伊織もめちゃくちゃ良い。
「全部変わったとしても友達でいるって、私の何が好きなの」やが君で似たようなこと考えてたような

伊織が突如ダウナーになったの、ふうせんかずらによる乗っ取りのオマージュともとれて面白いな

黒幕周りも、人間関係を弄って面白がるって露骨にエンタメ作品の鑑賞のメタファーと見なせるし、ここからの展開に期待

16話
はい最高。完璧。ありがとうございました。

他人からの期待という糸に雁字搦めになって疲れ果ててしまった。完全にまふゆ

「全然違う私でもなぜ好きなままなのか」に唯は喫茶店で論理立てて応えようとしたが、ここは太一の「知らん!」で一蹴するのが正解。初めて太一が納得できる行動したかもしれない。

その後の稲葉の喝入れとか、欲望解放を彷彿とさせる激昂でこれまでの展開の総まとめ感もアツい。

それに対して伊織が「ちょっと時間がほしい」と答えたのも現実的というか誠実だと思う。

にしても最終話は露骨なぽっと出の敵に全員で立ち向かって仲直りして終わりか〜。
この5人のうだうだコミュニケーションで最後まで走ってほしかったのでそこは残念。まだ観てないけど。
まぁ今回で十分にうだうだコミュニケーション劇をやったから許すか〜

というか、最終話に限らず、今回の茶髪不良女子とか割と外部のちょっかいのおかげで5人の関係が好転することは度々あった。元はと言えばふうせんかずらのちょっかいが全ての元凶であるとはいえ……

17話
テレパシーを使って監禁位置を知らせる。あれ、異常現象を有効活用したのってこれが初めてでは?他人に損害を与えることはあったけど、基本的には5人内の秘密にしていたし。

うわ〜〜ここにきて男性の加害性、唯のトラウマ克服、伊織の色仕掛けで締めるのか〜〜
部活発表会、最後に特大のセクシズム&恋愛暴力かましてて草

三角関係はそういう結末になるのか〜〜〜〜〜あの謎空間なに?エヴァTV最終話?
いや最後までめちゃくちゃ自分好みでした。いなばん(デレばん)可愛すぎ

実質エヴァだった(2021年度何も言ってないのと同じ大賞)
EoEでありシン

理解のある友人くん達がいたからこその話だったといえばそれまでで、提起した伊織の問題とかに上手く解答出来ていたかと言われれば微妙だが、彼女自身が納得して解決しているのに、それ以外に何を望む?と開き直ってしまいたくもなる。

結局、フィクションもその内部に1つのリアルを抱えているわけで、本人たちが良いのなら、外部から勝手に問題設定やテーマを見出してあれこれ分析考察批評する行為に何の意味がある?と言ってしまうのは全てを台無しにする暴論だが、こうしたマジで自分好みの作品の前ではそう言ってしまいたくなるのだ


総括。ほんとにめちゃくちゃ好みのアニメだった。
もちろん、オタク向けラノベ作品で、ポリティカル・コレクトネスやジェンダーなどの観点から明らかにアウトな描写は多々あり、それを擁護するつもりは毛頭ない。だが、やはりコンテンツ鑑賞は究極的に自分の快楽のためのもので、政治的に正しくなかろうが、好きなものは好きだ。

青春群像劇に伴う自己嫌悪や反省、贖罪オナニーなど自分の好みが全編を通じて満載で、常に性感帯を刺激されているようだった。んほぉ〜〜〜気持ちえぇ〜〜〜〜って感じ。「わたしはこんなアニメが好みな人間です」と名刺代わりに使える。

作画とか全体的なチープ感と青春感は、「夏色キセキ」に似たものを凄く感じる。どちらも自分の名刺アニメ。違うのは、あっちは女子のみの友人グループである点だけど、高校生活の日常で、仲良し数人組に突如フシギ現象が起きるって展開はまんま一緒だ。こういう系譜のおおもとって何なんだろう。
(キャラの作画だけならこの前みた「ローリング☆ガールズ」みも感じるけど、背景美術やストーリーの雰囲気はまるで違う)

決して良いとはいえない作画も(そもそも派手なアクションシーンは皆無)、全体的なチープ感も、意外とクッソ重い展開ぶっこんでくるのも、でもなんだかんだコメディなのも、しょうもなさが「青春」の2文字に回収されてしまう暴力性も全部すき。太一はウザ気持ち悪いけどそれも含めて好きって言っちゃうくらい好き。結局ふうせんかずらの黒幕は大した解決がされずに終わった(多分原作は続くんだろう)が、5人の人間関係の話だから別にそこの開示は求めていない。明らかにフィクションの作り手と鑑賞者のメタファーなのはわかる。

めちゃくちゃ好きなアニメだが、他のひとにオススメはあんまりできない。沢城みゆきさんと豊崎愛生さんの演技が好きなひとは絶対に観たほうがいいと思う。そうじゃない人は別にいいかな……私のような青春群像劇、三角関係うだうだ恋愛痴話話が好きな人は好きかもしれない。マリーファンとか。

ラノベ原作読もうかな〜。あれ多分アニメ以降も続きがあるっぽかった。でもラノベを読めるか分からない(文体がキツくて一瞬でギブアップする可能性が高い)


もう少し振り返って掘り下げたり語れることがあるかもしれないけど、とりあえず今はこのままで公開しておく。追記するかもしないかも。


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