アルツハイマー型認知症 新規治療薬~アデュカヌマブ~

こんにちは、こんばんは!薬剤師のからすまです~♪
本日は、今世界で大注目されているアルツハイマー型認知症の新しい治療薬「アデュカヌマブ」について解説いたします。

アルツハイマー病の怖さ。
アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も割が高く、超高齢化社会を迎える日本においても、今後増えてくる疾患と考えられています。アルツハイマー型認知症はハッキリした発症原因は分かっておらず、誰しもがこの疾患になる可能性があると考えると怖いですよね。(一応、アルツハイマー型認知症は遺伝が原因となる場合もあるのですが、9割以上は孤発型という原因が分かっていないパターンです。)


根本原因が分かっていない!
 疾患の根本原因が分かっていない為、アルツハイマー型認知症の治療薬は、これまでたったの4剤しかありませんでした。しかも、それらの薬剤は、記憶障害などの症状を緩和するための薬剤であり、アルツハイマー型認知症を根本的に治療するものではありません。こういった治療ニーズは高い一方で、有効な治療薬が非常に少ないということから、各製薬会社が新薬の開発を積極的に行っておりますが、開発の成功確率は約0.3%程度と非常に難しい領域となっております。


十数年振りの新薬誕生!
 そんな背景の中、2021年6月8日にアメリカの規制当局であるFDAが「アデュカヌマブ」というアルツハイマー型認知症の治療薬を久々に承認(*)し、世界中に大きなニュースとして流れました。
*正確には第4相試験をするという条件付き承認。第4相試験で有効性評価で効果が認められないと承認取り消しの可能性あり

<アデュカヌマブ>
開発会社:エーザイとバイオジェンの共同開発
適応:軽度認知障害 or 軽度認知症
剤型:点滴投与
頻度:4週1回1時間かけて投与します
条件:投与前に1年以内のMRI検査結果が必要です
主な副作用:ARIA-E 35%、頭痛 21%、ARIA-H 19%
アメリカでの薬剤費用:4,312ドル/回
*日本は未承認(現在承認申請段階)

○何が凄いのか?
今までの薬は、症状を抑えるための治療薬でした。一方で、アデュカヌマブは、アルツハイマー病の原因として考えられているβアミロイドというタンパク質を除去するように働きます。この為、根本物質に作用することから、根本的に疾患を治療できる可能性があると期待されているのです!!

○薬のタイプアデュカヌマブは点滴のお薬で、月に1回1時間かけて点滴する必要があります。こういった「○○○マブ」という名前がつく薬剤は、抗体製剤と呼ばれる薬で、近年非常に開発されている薬剤のタイプになります。体の中で問題となっている物質に作用させたい時に、その物質に対する抗体製剤を体外から注射することで、問題となっている物質を取り除く作用機序になります。


○どのくらい効くのか?
下記が治験の結果です。
★アミロイドPETの蓄積が減少していることが分かった!
 下図の通り、プラセボという何も治療を行っていない群に比べて、アデュカヌマブを投与した群では、用量依存的にアミロイドの蓄積が減少していることがわかりました。
先ほどお伝えした通り「アデュカヌマブ」はアミロイドに作用する薬剤なので、投与後脳内のアミロイドがきちんと減少している必要があります。なお、このアミロイドはPET検査というもので測定することができます。

図1

★臨床症状においても悪化を抑制していることが分かった!
 では、アミロイドの蓄積を押さえている一方で、実際の症状はどうなのか気になるところだと思います。この臨床症状は、CDRという臨床症状を評価する評価スケール(心理テストのようなもの)を用いて、下図の通り、プラセボという治療をしていない群に比べて、治療開始前からの症状の悪化を22%抑制していることが分かりました。ここでポイントは、あくまで「悪化を抑制している」ということで、症状を劇的に改善していく薬剤ではないということです。また、悪化の抑制具合も「たったの22%か。」と感じるかもしれませんが、このCDRで22%程度抑制する程の効果は、他の薬剤ではなかなかありません。こういった薬剤の作用機序の新規性と有効性が今回注目された理由の一つだと思います。

図2

○安全な薬なのか?
クスリには、期待する効果の裏に必ず副作用などの「リスク」があります。今回、「アデュカヌマブ」では下記の主な副作用が治験でわかりました。
主な副作用:ARIA-E 35%、頭痛 21%、ARIA-H 19%
このARIA(アリア、Amyloid Related Imaging Abnormalities)というのは、アミロイドに作用する薬剤で起こりやすい副作用のことで、
ARIA-Eは脳血管浮腫、ARIA-Hは脳血管微小出血というもので、MRI検査によって判明します。これは老化や病気の疾患でも見られる現象ですが、抗アミロイド療法により特異的に発現しやすい副作用になります。ただ、ARIAの発現があっても実際に症状があるケースはありません(24%ほど)。ただ、稀に重篤な症状が出ている例もあります。

○今後の問題
今後、日本でも承認され次第、使用できる可能性がありますが、費用に関して大きな課題があります。一般的に、抗体製剤は薬価(薬の価格)が高くなる傾向にあり、アデュカヌマブも1年あたり○○円ほどの費用が掛かると考えられています。日本では、国民皆保険制度により、誰しもが保険診療を受けることができますが、同時に多くの国民がアデュカヌマブを長期間使用続けると、国の負担が膨らみ、財政が破綻する可能性があります。なので、アデュカヌマブを使用できる対象の方を絞るといった対策(PET検査でアミロイドが陽性の方のみが使用できる等)が必要ではないかと考えます。

まだ課題は残っておりますが、久々のアルツハイマー病の新薬誕生によって、患者さんにとっては希望の光になることは間違いありません。最後まで読んで頂きありがとうございました。何かありましたら、コメント等頂けますと幸いです。
<参照元>
https://www.biogencdn.com/us/aduhelm-pi.pdf

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