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主人公が最初から強い物語が増えてきている

なろう系を始め、最近の若年層向け物語コンテンツには、「主人公が最初から、もしくは転生によって最強になる」ところからスタートするものが多い。
ちょっと前までは、何もできない最弱主人公が、友情、努力、勝利で強くなっていくという成り上がりストーリーがメインだったのに、なんか突然変わった印象がある。

はじめは「そういう時代なのかなー」って思ってたんだけど、ふと気付いた。「そもそも、海外のコンテンツって、そういうモノの方が多くね?」と。

わかりやすい例で言えば、スーパーマンである。スーパーマンは、強力な敵と戦うストーリーではあるが、そもそも彼らは「はじめから強い奴」だ。X-MENなんかも、彼らが異能者になる過程については最初からは語らない。スパイダーマンに至っては、特殊な蜘蛛に噛まれただけだ。

物語に限らず、エンタメにも似たような傾向がある。日本のアイドルは「未熟なアイドルをファンが応援して育て上げる」という通説があったが、今この国で一番熱を持っているのは、韓国の「最初っからパーフェクトなスキルを持つアイドル」たちだ。韓国は、完璧になるまでデビューをさせない、と聞いた事がある。むしろ未熟な状態から表立ってスタートさせるのは、日本独特の文化のようだ。

そう考えると、日本の若年層の嗜好が変わってきているのは、たしかに「時代」と言えるのもあるだろうけど、もう少し明確に表すのであれば、「我々よりも嗜好がグローバライズされてきてる」からと言えるのではないだろうか。ガラパゴスと揶揄される日本独特の嗜好が、無意識ながらより世界標準に近くなってきているのかもしれない。

しかしながら、日本の「はじめから強い奴」物語は品質としてはまだまだ未熟な感じはある。それは単に「人はなぜ作品を面白いと感じるか」という点においての思慮が足りない世代が作っている、というのもあるだろうが、今はまだ市場的にも「強い奴が主人公である作品」を世に出す経験値が足りない故に、どう練れば良いのかが定まっていないからなのではないか、と思う。なので今は、玉石混淆な状態でもとりあえず数を出し、良し悪しのパターンを見つけ出していくべきだし、実際そうしているからやたらにそういう広告が目に入るんだろうな、と思う。

ちなみにこの、変化してきた若年層の嗜好は、我々の世代でも別に理解できないものではない、ということは忘れてはいけない。我々が好きだった、ウルトラマンや仮面ライダーなんかも、まさに「はじめから、もしくは転生によって強くなった主人公」なのだ。

余談だが、「日本の作品は海外に比べてクオリティが低い」というのは、間違いであると俺は思う。それは日本の作品の品質が低いのではなく、単に「まだフィルタリングされてない」だけなのだ。海外のコンテンツが面白いのは、だれかが「面白い」と判断、つまりフィルタリングされたものだけが入ってくるため、面白いものが多いと感じるだけなのだ。

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