見出し画像

社会学 初学者におすすめの書籍 4選

社会学には多種多様な領域があり,それが魅力でもあります.だからこそ,社会学に触れ始めるときには,さまざまな分野・領域に触れていくと同時に,ソリッドな方法論も学ぶ必要があります.

今回は,私が社会学を学び始めたころに,読んでいた本を紹介します.ただし,先に偏りがあることは断っておきます.私自身が数理・計量社会学者であり,その領域に偏っているのは否定しません.それでも,これまで読んできた数少ない本たちの中から,初学者が読むべき本を4冊ご紹介します.


1. 長谷川公一他編著,2019,『社会学 新版』有斐閣.

社会学の入門書として,最も網羅的な入門書です.社会学は文字通り「社会の学」です.人が集団をなし,「社会」を形成する場はすべて社会学の研究の対象です.

この本は,そのような「社会」を形成する各側面を1章ずつにまとめています.本書は社会学を学び始めた人が最初に手にする本として最適です.

当時,数学科で数学書を読む訓練しかしてこなかった私は,この本を数学書と同じようにノートとペンにまとめながら読んでいました(第3章の途中以降は,そうしなかったのですが……).

画像1

図:当時のノート

第1章「親密性と公共性」は特に面白く読んでいました.社会学の礎を築いた3人(ウェーバー,デュルケーム,ジンメル)に触れながら,電車の迷惑行為から親密空間/公共空間について議論しつつ,ゴッフマンの「儀礼的無関心」の概念につながる点が,社会学を全く知らない私であっても,新しい考え方をつかむことができました.

2. 今田高俊編,2000,『社会学研究法 リアリティの捉え方』有斐閣

次に紹介するこの本は,社会学の研究の方法論をまとめた本です.社会学で卒論を書く人,大学院で社会学を専攻する人は必ず読んでほしい1冊です.

社会学の研究方法には質的・量的の2つの大分類があります.本書はそのどちらもカバーしてる上に,数理モデル・シミュレーションまで含んでいるところが非常によい点です.

この本を通読することで,社会学にどのようなアプローチがあるのか,全容を把握することができます.自分のリサーチクエスチョンを明らかにするためにどのような迫り方があるのか,一つの手法に固執することなく,見通すことができます.

3. 盛山和夫,2004,『社会調査法入門』有斐閣.

社会学の研究対象が社会や人である以上,人を対象とした調査を行う必要があります.それらの調査は「社会調査」と呼ばれています.本書は社会学における社会調査の手法や理論をまとめた本です.

社会調査の本ですが,最初の数章は「なぜ調査をするのか」「質的・量的調査の意義」など,深い話から始まる丁寧な本であるといえます.社会学をある程度勉強した人向けの記述も少し見られますが,二次分析で用いる社会調査データの特徴を理解したり,自分で調査・分析を行う際には,何度か参照することになる一冊でしょう.

4. レイモン・ブードン著,宮島喬訳,『社会学の方法』白水社.

フランスの社会学者であるレイモン・ブードンによる社会学の入門書です.

ブードンと言えば,相対的剥奪や教育達成・職業到達に関する数理モデルで有名ですが,この本は方法論,特に統計分析の仮説設定と解釈に焦点が置かれています.

疑似相関や交互作用に関する分析がクロス表をベースに説明されており,計量分析を行う人だけでなく,仮説をどう設定すればよいか悩んでいる質的研究者にもおすすめです.


今回,初学者向けの本を4冊ご紹介しました.ほかにも紹介したい本はたくさんあるので,また機会があればご紹介します.


【4/10追記】統計学のおすすめの本も紹介しています.