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デジタル化を進めるために自治体ができること(2020-10-06 奈良県IoTデータ活用先進地域推進研究会講演)

これはなに?

2020年10月6日、奈良県のIoTデータ活用先進地域推進研究会(参考:https://local-iot-lab.ipa.go.jp/article/nara-pref-iot-1.html)にお声掛けいただき、「デジタル化を進めるために自治体ができること」をテーマにお話をしてきました。

その時のスライドとUDトークでの音声起こしを元にお話したことを共有します。

お話した内容

本日のお話

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今日のお話は、いただいたお題も皆さんのご期待するところもあるかもしれませんが、私が見聞きしていることで、こちらから一方的にお話しするというよりは、皆さんと一緒に考えるためのメモを共有するというものです。

従って、「デジタル」と聞いて、今世の中で一部言われているような「スーパーシティ」だとか、「スマートシティ」がどうたらとか、Society 5.0が何なんですかみたいな話、他の自治体ではどういうことをしてるんでしょう、みたいなことについては、お話しするつもりはありません。

要約

今日お話したいことは、

大きく二つです。

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一つは「温故知新」と「換骨奪胎」です。

言葉の意味は多分お分かりだと思いますが、それを仕事をするプロセスとして、これを考えて、「自ら行う」ということが一番重要です。これが全てと言っても過言ではないです。

これは、誰かに聞いてするではなくてーー聞くことはもちろん必要です。「温故知新」なので古きを尋ねて(温ねて)なので、聞くことはもちろん重要なんですがーーそこから自分たちで考えるということが重要です。

もう一つは、別にパクルのは全然構わないんですが、「パクルやり方」を考える。あくまでも自分たちの組織になり、今までやってきたやり方に合わせた形を踏まえて自分たちでやる必要があります。最近の情勢を見るとですね、改めてこういったことは強調しておかないといけないかなと思います。

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2点目は、GovTech(ガブテック)、いわゆる行政の分野でもっとテクノロジーを使いましょうということと、CivicTech(シビックテック)、市民側から見たデジタル活用の可能性だったりとか、特性を生かしていきましょうと、簡単に言えばその二つですけれども、今日のお題であるデジタル化を行政の中で進めていくときには、行政寄りの話だけでは駄目だということを特に申し上げたいと思います。

GovTechは、何かテクノロジーを入れましょうではなくてですね、サービスとしての行政のレベルアップを図るということであります。その手段として、テクノロジーが必要な場面が多いんじゃないか、というふうにみなさんお考えだと思うんですが、もう少し言えば、答えは結局はテクノロジーじゃない場合が多いよね、ということも含まれています。これがもう一つの軸です。

また、シビックテックっていうときに、これはCode for Japanのポリシーでもありますが、「ともに考え、ともにつくる」と言うことが重要です。最近はそれにあわせて、「ともに学んでいきましょう」ということも申し上げてますが、大きく言ってしまえば、コロナになって、みんな考える時間ができましたよね。この間に、いろんなことに気づいたことと思いますけれども、それは良いきっかけでありまして、とはいえ、じゃあどうしようっていう試行錯誤の状態がなんとなく今終わりつつあって、世の中もなんとなく平時モードに戻りつつありますけれども、このタイミングだからこそ改めて考え直すということは重要じゃないかなと思ってます。

温故知新〜完全に新しいことなどない〜

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なので、温故知新である訳です。改めて思いますけど、やっぱり新しいように見えていて、実は何に取り組むべきかみたいなことを考えたときに、完全に新しいことはないということです。

なんだ、そうなのか、と、それは安心していただいて結構だと思うんですけども、例えば、私さっき、こうした取り組みを始めたのが5年前と申し上げましたが、皆さん5年前の自分に戻ってですね、今のことを振り返ったときに、何か変わったこと、あるいは変わってないこと、考えてみてください。・・・Zoomでいろいろやるようになったねっていうのはあるかもしれませんが、日常の仕事だったり政策の具体的な中身のレベルでも考えていただいて、何か変わったことってありますでしょうか。

それがもし変わってないなと思い当たる節を思い浮かべたとしたら、それは現時点で結構やばいというふうに思っていただいた方がおそらくいいと思います。それは後でまたご説明します。

二つ目は申し上げた通り、現状は確かに厳しいシチュエーションでありますが、今何すべきかということを、全部教えてくれているようなことであるというふうに思ってます。であるからこそ、今日もこうして何かお話してっていうふうに呼ばれたのかなと私は前向きに考えてます。そして、みんなで考えることを地道に行うことが重要です。

もう1つ、「デジタル」って話がずっと出ています。これデジタルって何ですかって結構考えると難しいんですけれども、その意味を履き違えると全然違うところに行ってしまいます。特に行政は結構そういうところがあるので、それは気をつけた方がいいと思います。例えば官民のデータを利活用してっていうのが言われています。

そういったことをするときにですね、行政側はまず、紙の仕事が多いとか、紙で住民さんからいろいろいただいてるからっていうのをまず電子化していきましょう、っていうことをよく言うんですが、これは実は違うと思ってます。話し出すと長いので、端折ってお伝えしておくと、官民データを活用しようと謳っている官民データ活用推進基本法において、そこにはこうした紙のものを電子化するということは、実は謳ってないですのです。

行政手続のオンライン化とかですね、言ってますけれども、それは紙を電子化することそのもの、そんなこと一言も書いていないので、まずそれから取り組みを進めるみたいなことをすると、全然違うところに行ってしまいますので、ぜひ気をつけていただきたいなと思います。

それではこうしたことを、なぜ温故知新の話としているのか、と言いますとですね、皆さん多分紙を使った仕事のやり方はもう古くて駄目だっておっしゃってるかもしれませんが、そうなったその前はそうではないやり方があったんですよね。結局、そう切り替わった後のことしか見ていない訳ですが、じゃあ紙で何をやりとりしてたかっていうことをまず考えることが一番ポイントです。それを十分考えずに、そのまま電子化しましょうと言ってもですね、昔の仕組みのうち、本当はきちんと引き継いでいたものをきちんと連れて行けず、ツールを単に変えただけということになる訳です。その紙をやりとりする手続きそのものをなくしてしまうとか、他の手続きとがっちゃんこするといった、その制度が生まれた前後で何があったのかなどをきちんと見ていないと、その制度を温存し、そのために住民も職員も迷惑する状態が全く変わらないとか、例えば件数がごくごく少ない手続きのために何か「古めかしい」作業を残していませんか?

そうしたところを考えたときに、今申し上げた例えば何かをデジタルにするではなくて、答えはもちろんそれが一番いいでもいいんですが、アナログのままなのが実はいいだろうみたいなことの方が、結構答えだったりします。デジタルを履き違えず、こうしたところをもう一度考え直すっていうのが一番大事だと思います。

“AI-Ready”に向かう民間セクター

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そうしたシチュエーションにある中で、ときに民間セクターの人たちって今どういったことをしてるかっていうと、今後、AIがどんどん活用するってこれそんなに異論はないところだと思うんですが、そういう状態に持っていくため、これをAI-Readyと言いますが、何をするかっていうことをステップを分けて考えています。

この図、細かくはまた元資料を見ていただければと思いますが、経営・マネジメント層、専門家とか従業員とかいろいろありますけれども、各層のいろんな人たちがこれに取り組まないといけないよねっていうことを定義して、レベル5からレベル1に区分し、今自分たちがどこにあるんだろうということを提言しています。

ただ、では日本企業がどこにあるのかと言えば、レベル1や2だということを言っているわけで、レベル5だというのは数えるほどしかない。ですので、考え方としては、あらゆる民間の活動が、こういったレベルで評価してですね、自分たちがどこにいるんだろうということを考えて、次に何をすべきかということをstep by stepで行こうということで理解しましょう。

その上で、これができたのは2019年でありますから、今この時点で、もうすでに行政はビハインドしているということがおわかりいただけると思います。

企業におけるデータ利活用状況

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こうした企業の取り組みが背景にあるのか、今年度公表した情報通信白書を見ていくとですね、こういったことに向かっていく企業が、今どういう立ち位置にあるのかっていうことを、結構なページを割いてですね、書かれています。

ここで指摘しておきたいことは2つです。一つは、この右側の図のように、民間企業がが何をしてるかっていうことをまず知るということが重要です。

今日は、県庁からいろんな部門の方が来ていらっしゃいますけれども、直接企業さんとやりとりする部署もあれば、そういった企業さんへお仕事をお願いをするような部署の方もいらっしゃると思いますが、彼らがどういった存在かっていうことを考え直すことが重要だからです。

もう一つは、ここに書かれているのはあくまで企業における状況でありますけれども、翻って自分たちの組織はどういう状態なのか、データ活用の現状とかDXの取り組みの内容、その内訳として、業務慣行を改善しましょうとか職場組織をどう考えるかっていうようなことが見出しとして出ています。そういった観点で自分たちの組織を評価する必要がある。ここには「管理職」って書いてますけれども、もちろん現場で業務を担当する職員さんがそういう大きな枠組みの中で自分がどう位置付けられているかみたいなことを考えることも重要でありますが、むしろそういった管理職の方、組織をマネジメントする人たちが自分たちチームの仕事を、あるいは組織を見直すっていうことが求められていると思っています。

GovTech-Ready?

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もっと言えば、それがないとですね、その次やるべき先ほどの各レベルの中身の話が全然話ができないと思います。行政でもDX、デジタル化でもいいんですが、そうしたことができないうちにですね、例えば今日もいらっしゃってますが産業政策の有効な打ち手が果たしてできるんだろうかっていうことは、非常に危惧されているところでありまして、そういう意味では行政に関わる人たちも、いわゆる民間企業がAI-Readyに向かっているということとパラレルにGovTech-Readyできてるんですかっていうことを考える必要があるんじゃないかなと思います。

民間企業の方から見ると、行政何やってるんだっていう話でありますし、行政組織の部局同士でもあいつら何やってるんだということになりかねないと思いますが、今日はさまざま関連する部局の方がこうしてお集まりになっているということで、そういったことはないんだなと、ちょっと安心しました。

第3のプラットフォーム?

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話を進めて、GovTech-Readyできていますか?、という話をするとき、改めて「第3のプラットフォーム」の話、これが基本的な出発点として振り返る必要があります。

その理由として、まずは、今、目の前でいろいろなことが取り沙汰されているようなことばかりを見てもあんまり意味がなくてですね、そもそも何なんだろうなっていうことを振り返るのがまず出発点だと思います。

なぜ「第3のプラットフォーム」の話を、GovTechと結びつけるのかっていうのは、この話が行政特有のことではないというのが私の言いたいことの二つ目です。

三つ目は、とは言ってもですね、行政は特殊領域とは言わないまでも対象とする領域が広くて、例えば農業とかですね、インフラ部門とかいろいろある政策分野ごとに、どこから進めていくかを一度考えないと、いつまでたっても進んでいるような気がしないようなことになりそうですよね。しかし、そういう考え方ではなくて、まずそれぞれの組織で得意なとこから進めていくということが一番重要じゃないかと思います。

その上で、ここの図で言いたかったことは、第3のプラットフォーム、これはまさに5年ぐらい前に言われてたことですけれども、一番真ん中にあるクラウドだったり、ビッグデータの分析、あるいはモビリティだったりスマホの類、ソーシャルの技術といったものをベースにして、IoTのデータがどうとかですね、アルゴリズムを組み合わせる。そして、一番外側にある産業特化型でいろんな分野で、花が開くでしょうっていうことが言われてきた訳です。

今日はお話しないって言いました、スマートシティという文脈で言えば、どういう分野でどういったことが今後必要になるんだろう、って言われてることが、この一番外の話です。しかし、そこばかり見ても意味がない、ということに気がついていただきたい訳です。

それは、もともとの第3のプラットフォームがどういったものであるかっていうのをまず理解することが重要でありまして、そこがないうちにですね、5年経って、一番この外側のところがたくさん目にする訳ですけれども、この根幹は真ん中のところなのです。裏を返せば、企業がこの5年で、真ん中のところに投資をしてですね、一番外側のフェーズが出てきている訳です。

もちろん、まだレベルとして出来てる出来てないっていうのは、AI-Readyのところで申し上げた通りですが、こうしたプロセスを経た上でようやく出てきた話をですね、GovTechの領域で考える際に、外側のとこばかり見てもあまり意味がないですよね、というのが申し上げたかったことであります。

デジタル変革と自治体DX?

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そうしたときに、残念ながらというかですね、来年度の概算要求で、総務省のものを見ていると、「次世代型行政サービスを強力に推進します」というようなことを謳っていますが、これってここまでお話聞いていただいてお分かりの通り、そうしたプロセスをきちんと経たものなのかどうかっていうのが、私は非常に疑問に思っています。言い方が難しいですが、あんまりその話に乗らない方がいいとすら思ってます。

奈良県さんは奈良県なりの温故知新があるので、国のこういったこと言ってることを換骨奪胎してですね、面従腹背でもいいんですけれども、その取り組みの方が価値があると思います。

なぜなら、まず第一に、自治体DX進めるんだって言ったときに、RPAの活用って書いてますが、こんなものは全然DXじゃないです。なので、RPAをこういった枠組みの中に入れてしまうと、問題が矮小化するので、これは絶対に気をつけた方がいい。むしろ自治体DXにとっては有害だと言ってもいいように思っています。

次に、行政システムの標準化を2025年度までに移行するように義務付けるとかって言われてますが、彼らはその移行するアジェンダセットまでが仕事です。自分たちがシステムを作るわけではなくてですね、住民サービスを提供する自治体がやるべき話であって、国の役割としたらそれだけだというふうに割り切った上で言っています。一部で誤解があるようですが、国が何かしてるくれるというふうに考えるのは大間違いです。

その上で自治体DX計画を作ってくれって国は言っているそうなんですが、奈良県には、すごくわかりやすい情報最適化計画を官民データ活用推進計画として作られています。そういうものができてるのに、DX計画をもう一度作るって謎だな、と多分お感じだと思いますが、そういったことが起こるわけです。地方分権を進めた結果、地方の取り組みに統一性が失われた、なのでそれは地方分権には逆行しないけれども、それまでの議論とは違う形を持ち込まないといけない、このようなセレモニー的なものが必要とされているように見えます。

官民データ活用推進計画の法定化の際にもこうした地方分権との関係で議論がありましたが、別の計画を同計画にみなすといったことを許容し、あくまで2020年度までにすべての都道府県が策定するように国の実行計画に記載したり、同計画策定が補助金の交付条件のように運用したりと、中途半端になっています。今回もその繰り返しかもしれません。

自治体DXはそのような手続き面の話ではない訳でして、国がやろうとしてることをあんまり真に受ける必要はないんじゃないかと思ってます。

国においては、検討状況の落差が激しい

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さらに言えば、国が考えようとしている「地方のデジタル化(DX)」は、このスライドの左側が総務省が言っていること、右側が今ちょうど内閣官房で、デジタル庁といわれているものの中で考えようとしていることですが、この両者が検討状況や、取り組む内容、プロセスなど全然違うものになってます。落差と言ってもいい。

政権が変わって、猛烈な勢いで議論しているところですので、我々のような外からは見えにくくなっていますが、いずれにしても、「国が何か言ってくるんだろう」と皆さんお感じになってしまう構図になってます。実はそうではなくてですね、こういった議論の中にぜひ入っていかないといけないということであります。

さらには県庁の立場であれば、普段市町村さんも県庁がそう見えているということでありますので、自治体DXと言った時に、市町村と県との関係でも同じようなことが起こりうるっていうのは十分気をつける必要があると思います。

GovTechは、スピードが一番〜早く失敗しよう〜

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以上、GovTechと呼ばれているものの概観をしてきましたが、これは早く失敗することに価値があります。すなわち、何をしてきたかということ、やってることにどういった意味があるかというのは自分たちで実感を得ることが一番の価値であります。もう少し予算を作る時間が欲しいとか事業を作ってからといって後発になればなるほどですね、先進事例がある分「何でできないんだ」というように、だんだん失敗に対するプレッシャーが出てきます。

また、いろいろな事例を見ているとですね、「正しい答えはなんだろう」っていうので、いわゆる複雑性が増大してですね、何をしたらいいんだろうっていうふうにジレンマに陥ると思います。そこは、もう割り切ってですね、もう見えているもので、やりたいことをスパッてやるというのが一番です。

もう一点はその財源の話です。むいた話で言ってしまえばですね、企業さんも、実証実験をするとしても、その先を見るフェーズに入りつつあります。そういうときに行政とのリレーションはすごく重要で、というのは行政の先にいるいろんなユーザーとですね、「やっても失敗するかもしれません」みたいなサービスをなかなか実験としてはやりにくいわけで、行政とやることでその信頼性を担保したい訳です。逆に言えば、行政が関与する価値はそこにあります。

そうしたものを行政側から見たときにですね、何をするのが住民にとっていいのか、あるいは、フィールドとなる市町村が抱える課題の解決との関係で何がいいのかみたいなことを確かめる必要がある。そして、それをやるにも先立つものがないとできません。あるいは、実証実験をやろうと言ったときに、しっかりその手綱を取って進めないと、やること等の複雑性も増大している中では、失敗、すなわち費用対効果が出ない確率が高まってくる訳です。

そして、そうした先進自治体の事例が世にいろいろ出ていますが、これはいいことばっかり結構言っています。直接お話を伺うと、そうは言っても…っていうことがすごく多くて、どうしても綺麗に見せようというふうに思いがちです。しかし、今日先ほどお話いただいた事例の中でもうまくいってないんですけどねっていう話はありました。では、なぜそれがいかないのかっていうことを考える方がむしろ重要でありまして、そのためにもぜひ上役の方々は「失敗していいよ」というようにぜひ言ってください。でないと、みんな忖度をして萎縮してしまいますので、そうした組織には、ぜひならないようにする必要があると思います。

とはいえ、何をやればいいかは割と正解ルートがある

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とは言ってもですね、自治体がこういうことをし始めて5年ぐらい経ちましたので、割と正解ルートが見えてきてます。

時間もあるので、簡単に申し上げますと、誰と組むかっていう話が大事でして、これを決める要素は簡単です。相手方の意思決定の速さで決めたらいいと思います。

彼らも早く失敗したいと思っているので、そうしたスピードをうまく活用して、そういった世界にどんどん連れてってもらうような考え方でよろしいかと思います。例えばここでは3つ挙げましたが、他にもいらっしゃいますけれども、彼らはGovTechをもっと進めないといけないと腹をくくっているように見れますので、そうした方にどんどん付いていくっていうのが重要です。

でも一方で、例えば既存システムとか、いろんな事業でお付き合いしているベンダーさんいらっしゃると思いますが、その付き合い方は見直す必要があると思います。それも、意思決定の速さの違いで考えれば分かることです。

どうしても今までの投資効果をどう考えるとか、GovTech領域で新たな取り組みを進めるにしても、彼らも彼らの事情がすごくシビアにあります。なので、結果として意思決定が遅いように見られますが、それに引きずられては早く失敗できません。

あとは最近気がついたんですが、意思決定が速い人たちも既存ベンダーさん使おうという気がすごくあります。今後面的に拡大していく中では、彼らだけでもできないので、エンジニアを抱えているプレーヤーもうまく使おうというふうに考えているようです。であれば、既存ベンダーさん通じて何かしましょう、じゃなくてですね、意思決定の速い人たちを通じて既存ベンダーさんのビジネスモデルも変えてもらうような付き合い方をすると、うまくいくんじゃないかなと思います。

また、最近言われてますけれども、その行政の既存のシステム全部を一新できるかがトピックスになってきていますが、まだ時間もかかる話です。その一方で既存システムの更新はどんどん迫ってくると思います。それを担うエンジニアの方々が少なくなってきます。ただ次のシステムに入れ換えることを考えるときには、その先の先ですね、次次回の変わるときに、各地域に保守も含めて担当されているベンダーさんがいらっしゃると思いますが、その方々が本当に5年後なり10年後も存続できるかっていうことはちょっと考えておかないといけない。そういうことを頭の片隅に置いておく必要があると思います。新たなシステムに今回はちょっと乗り換えられないな、みたいなことで先送りしたら先送りした後にドボンていく可能性が高くなってくると思っています。

変わるユーザー像?

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もう一つの話題提供は、これも情報通信白書から取りますけれども、「お年寄りは、スマホとか使わないんで、使い方がわからない」ってよく聞いてましたけども、そんなことはなくなりつつあるっていうのが、ちょっとずつ見えてきてます。これはSNSを使っている方の年齢階層別の割合ですが、2018年と2019年の1年で80歳以上の割合がすごい変わってますよね。この調査は数字が振れるものですが、それを割り引いても、16.9%から42.8%ってすごい変わってて、これなんだろうとか思いますよね。

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そして、そういった方々がインターネットで何を使ってますかっていう調査ですと、棒グラフの高さが全体の利用率、そこに年齢階層別にポイントで置いている。注目すべきは、利用率そのものというよりも、利用率が高い年齢層の順番ですね。

例えば一番右の電子政府、利用率としては全然使ってないじゃんということは問題視すべきですが、この中で誰が一番使ってるかっていうと、これ30代から39歳なんですね。他も含めて、みなさんの思っているイメージとどう同じか違うか考えてみてください。それぞれのサービスを使ってる人たちの年齢層がこういう順番になってるっていうことをよく考える必要があるように私は思いました。例えば何かサービスを提供するときにですね、どういった経路でお伝えすると届きやすいかとか考えが及ぶ訳です。そして、これは彼らが日常インターネットで何をしてるかっていうことですから、彼らの日常生活の中で何に触れる機会が多いのかっていうことを起点にして、デジタル化される政策を考える必要があるということになります。

さきほどのグラフもそうでしたが、数年先には今の年齢階層がそのまま年齢を重ねるので自然と増えてくることは分かっている訳ですが、ここの変化が激しいのではないか、ということです。ですので、前提が違ってきているのではないかと、的確にリサーチする必要があるということです。これは全国調査なので、奈良県は世論調査みたいなことをですね、某知事が政治意識に関する調査をするとおっしゃって、一部いろいろ物議をかもしたってありましたけれども、そうしたリサーチにもっと自治体は、お金をかけて、スマホはお年寄りは使わないからみたいな一般論ではなくて、実際に県民がどういった状況なのかっていうのは、まずリサーチをしないと前提とすべきユーザー像を見間違える、すると間違ったシステムに投資をする可能性も出てくると思います。届くと思った経路で政策が実は届いてないということになりがちです。

シビックテックとは

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そうしたときに若干宣伝のようなこと言いますが、Code for Japanでは、シビックテックの活動として表現しているのは「ともに考え、ともにつくる」という言い方をしていまして、簡単に言えばシビックテックのアプローチは、ある市民と行政は向かい合っている存在ではありません。同じ地域課題解決のためにともに考えるプレイヤーの一つであるというふうに考えています。

シビックテックの幕開け〜東京都コロナウイルス対策サイト〜

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それが一番如実に出たのが、東京都のコロナウイルス対策サイトを立ち上げたっていうところでありまして、これは自画自賛みたいになるのである程度割り引いたとしても、シビックテックの幕開けだというふうに、評価いただいているようです。「幕開け」と書きましたが、このシビックテック活動が日本に始まった2013年、実際の活動は、東日本大震災のときを契機に始まっていますけれども、Code for Japanを始めとするシビックテック団体が立ち上がったのは、2013年でありまして、そこから7年かかったんだなというふうに我々も思っています。

そのときに何をしたかというと、この新型コロナの感染状況のサイト、毎日更新するための仕組みを作ったっていうところを評価いただいてまして、それを実現するために、データをオープンデータにするということとそのサイトのソースコードも公開して、都庁サイトが最初ということですが、他の県でも同様に必要になるだろうということを見越して、他の自治体もクイックにサイトが立ち上げられるようにプログラムを誰でも使えるようにしたということです。

その結果奈良県さんでもそうですけれども、京都もそうですが、70ぐらいのサイトが立ち上がり、それを自治体が運営しているものもあれば、いろんな地域の方々が運営しています。特に今回、強調しておきたいのは、大学生、高校生あるいは高専生といった学生の皆さんがですね、休校期間中で自分たちができることなんだろうと考えて、東京都もそうですけれども、各地で取り組んでいただいているっていうのが大きな特徴であろうかと思います。

シビックテックの幕開け〜標準データ化と公開に関するスキーム〜

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また、シビックテックが具体的に貢献したという事例として、新型コロナを受けていろんな支援情報が出ていましたが、自分にとって役に立つ情報はどのようなものがあるのかなと、これ全部で今400ぐらいあるんですけど、400の情報から探すってなかなか見つけられないですよね。ですので、同じ情報の形式で集めようということで、右側にある通り、いろんな業界団体さんが支援策持ってるんですけども、それを国が用意する標準データのフォームを作って、そこにみんな入力するとサイトにも展開できるし、オープンデータですからシビックテックがそこから必要な分を例えば地域なりで、アプリケーションを作ろうみたいな形が柔軟にできるようになりました。こうしたスキームとして作り上げたのは、以前から基礎となるものはありましたが、今回がここまでクイックに立ち上がった。これまでだと、なかなか業界団体の都合とか、国の都合とか、あとシビックテックがやりたいことみたいなことがなかなかうまく合わなかったんですけれども、こういった関係者が連携できるスキームがようやくできました。

こうして分かりやすい事例として形になったということにも、着目すべきです。すなわち、ここから行政が何を学ぶべきことがもっと重要でありまして、これは、たまたま業界団体とか、外部のプレーヤー同士の情報を連携させようという形で見えていますが、例えば、例えば奈良県のそれぞれの政策分野でも、こういった枠組みスキームをなぞって、スキームのここに当たる人は誰かっていうのをそれぞれの皆さんが考えられるようになったのではないかということです。この仕組みを使えば、こういうことができると分かりました。であれば自分たちのやりたい政策を進めるときにそれぞれのプレーヤーに当てはまる人は誰だろうって考えたりとかできますよね。

もちろん対外的な政策ではなくても、庁内の連携をもっと進めましょうというときに、もちろん縦割りであることを前提にしてですね、誰と誰が向き合っているのかとか、そういったことを考えるお手本として使えるんじゃないかなと思います。今日お話伺っていても、縦割りでお互いの情報が連携できてなくて、何か政策を進めるにも分断されてしまってるみたいな話として聞こえるものもありました。それは仲良くしやっていこうね、というような話でなくてもですね、具体的に仕事のやりとりとして何と何を共有すべきか、誰が何をすべきかみたいな話をこの枠組みの中に入れて考えればですね、何か知りたいことを聞きたいときに誰に聞けばいいのではなくてですね、みんなが何をすべきかっていうのを決めて、それぞれの担当さんが何をすべきかというふうに考え直すそういったスキームとして、こうした研究会をベースにしてやっていただけるといいんじゃないかなというふうに思います。

シビックテックは、種を育てることが一番

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そうした際には、シビックテックを進めるにも、やはり時間がかかります。今わかってることとしては、やはり同じ目線・マインドセットを持つ人たちでチームをつくることが重要でありまして、その際に注目すべきスキル・マインドセットは表の通りです。例えば経産省のDXオフィスであれば、外部人材を入れるみたいな話ありますけれども、奈良県さんの場合はどういった形であればチームが作れるのかなということを考えるといいんじゃないかなと思っています。

Code for Japanの取り組み

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ここから先はちょっと宣伝なので、飛ばし飛ばしでいきますが、そうした中でCode for Japanがご提供できるのは、行政職員向けのICT体験型セミナー、通称「sunabar」と呼ばれてるものです。いろいろなツールが今、出回っている一方で、Zoomは皆さん使えるようになったと思いますけれども、他にもすごく便利なツールがあります。決してツールを推すためのセミナーではなくてですね、ツールを使うときにどういったことがポイントなのか、
仕事の進め方もそうですけれども、そうしたところが、これらのツールにははっきり示されていて、それを使って生産性を上げているから、それを使う方々が増えてきたという流れがあります。

ただそういったことを言ってもですね、「何がポイントなのか」は、なかなかピンとこないと思うので、セミナーの方法論としては、そういったツールを触っていただきながら、そこで何のポイントとなっているかっていうのをお話しすることで、「自分の仕事で使ってみるとどういったことになるかな」あるいは「自分の仕事をどう見直さないといけないのかな」っていうのが、よりビビットにというか、解像度を上げた状態でお分かりいただけるじゃないかなということです。

自治体の方でも、こういったものを使い始めている方々がどういったことを感じているかってことを登壇いただいてリアルなお話をさせていただくことで、これからやろうという人にとっては庁内での説得材料みたいなものを、作れるようになるんじゃないかなというふうに思ってます。現在ここに示した5つのツールでやってますが、まだ予定中なのが2つ3つありますし、こちらのセミナーは、当日のYouTube等、ファイルは全部無料でご提供しておりますので、皆さんもぜひフォローして追いかけてやっていただくといいかなと思います。

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「なんだかよさそうだけど、実際にやるの大変だよ」という方は、ぜひ10月17日、18日の土日でありますがCode for Japanサミットというのをやっています。今年は完全オンラインでありますけれども、行政向きも含めて全部で50ぐらいのオンラインのプログラムを用意しておりますので、キーノートは台湾のオードリー・タンさん、新型コロナの対策で一緒に活動もさせていただいてます慶應大学の宮田先生から基調講演を土日それぞれ最初に行っていただきますので、ぜひ他のプログラムも含めてですね、ご関心のあるところを見ていただければなと思います。

最後に

「行政がデジタル化を進めるためにできること」、何をするかっていうのはしっかり見極める必要があるということと、決して今日は、私は事例という形でお話しなかったですが、それは、答えは結構みなさんご自身の中にあるっていうのが答えです。気になってるところからやるっていうので、ほとんど正解でありまして、それをきちんと諦めずにやりきるということが、今自治体に一番求められているところであります。

そのためにも今日は、管理職の方がいらっしゃったらもう1回確かめておこうかなと思いましたが、部下がやってることを絶対に止めるなというふうに申し上げたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

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