見出し画像

漂泊の思ひやまず

旅をするのが好き。知らない土地に行く時はいつでもワクワクする。まあそれが仕事となってくると同じ客先に足繁く通うこともあるわけで、しかもわざわざ土日に予定されていたり終電に間に合わなかったりしてどうにも退屈でストレスフルな事も有るのだが、乗物に乗ると一転機嫌が良くなる。これは俺が乳飲み子の頃からの習性らしく、一般に男の子あるあるである。もし身の回りに機嫌の悪い男児又はおじさん又は松尾芭蕉が居たら、何か乗物に乗せてみるといい。ピタッと治まるから。

画像2

冗談はともかく、今俺は帰りの新幹線を待ちながらこの冗談だらけの駄文を書いているのだが、ふと6年前の写真が出てきたのでここに貼っておくよ。

画像1

6年前の今頃、仕事で単身イタリアに居ました。ミラノを拠点としてあちこちを移動。男子の喜ぶ乗物は特急列車、ローカル線、トラム、バス、タクシー、船、自転車、色々あったなあ。朝早く出掛けては夜ミラノに戻って同僚と情報交換、又は帰れなくなったらその場でホテル予約。我ながらよくやってたよ。日本で自分の積み上げて来た事が100ではないと思い知らされた日々。時差ボケと疲労でクタクタなのに、五感が研ぎ澄まされるような、瞳孔全開、毛穴全開の感覚。伝わらねえか。その感覚は帰りの飛行機に乗る時に一旦リセットされ、昏睡し、次の機会にまたリストアされる。毛穴ケア。

暫くは日本から出られない生活が続きますが、この混乱が終わったらまた、あのドサ回りを再開したいものです。芭蕉の言う「片雲の風に誘われる」さまは、場数を踏んだ旅人(=変態)にのみ培われたマゾヒズムの賜物なのかもしれません。