20210315 上田麗奈さん1stライブ/シン・エヴァ

(※注意『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の内容に言及してます)

 厳しい日が続いていて、日記を全く書けなかったのだけれど、昨日今日でかなり復調してきたような気がする。髪を切ったり、服を買ったり、本屋に行ったりする時間はやはり大事だ。天気が良くて、暖かいのも良かった。何よりこの二日で観たものが、思った以上に救いになってくれた。

 昨日は上田麗奈さんの1stライブ『上田麗奈 1st LIVE Imagination Colors』を観た。2016年、『RefRain』というコンセプチュアルの塊のようなミニアルバムの発表に度肝を抜かれてから、ずっとライブの開催を期待していた。アイマスのライブで上田麗奈さんのパフォーマンスの表現力には魅せられていたし、なにより『RefRain』を初めとして、発表された作品たちはそれぞれが世界観を持っていて、それはステージ上の表現として観たときにただ聴いたとき以上のものを見せてもらえるだろうと期待していたからだ。
 そして、実際に観られたものは期待以上のものだった。背景にある大樹を中心に広がる森の中をモチーフにしたステージで、歌唱される曲ひとつひとつが、上田さんの感情の乗った歌声、表情と身振り手振りで表現され、ライブ、という以上に、ひとつの舞台を観ているようだった。音楽を聴いてイメージしていた世界観の奥行きを、ここまでちゃんと作ってくれたことが嬉しかった。
 どんなライブでも、歌われる楽曲は、そのときだからこその意味を持つものだけれど、驚いたのは、ただでさえ作品ごとのコンセプトが強いのにも関わらず、それが今回のライブでは分解され、もう一度解釈されて提示されていたことだ。具体的には、『Empathy』中で転調の合図のように挿入された『Falling』というインストゥルメンタル以降、大樹の葉が落ち温かさが失われたステージで歌われた『Empathy』と『RefRain』の楽曲は、それぞれのアルバムで聴くよりもより直接的に訴えかけてくるようだった。そこで歌われる世界への絶望感のようなものが、演出も含めて直接届いてくるような。そして、おそらく、上田麗奈さんのライブを観たいと思っていたのは、これがあったからなのだとも気づいた。
 そこから舞台はまた明るく転調していくのだけれど、その明るさが、さっきまで歌われていた絶望とのコントラストでとても眩しく見えた。アンコール前の最後の楽曲『あなたの好きなメロディ』では思わず泣いてしまった。この曲に、こんなにも大きなスケールの肯定が込められているとは、ライブで見なければわからなかったと思う。配信ライブというかたちで観る機会を与えられたことが本当にありがたかった。あと何回か見直すと思う。

 そして今日は『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』を観に行った。
 内容の前にどうしても思い出話になってしまうのだけれど、エヴァ序を観に行ったのは大学一年生のときで、上映している映画館が自転車で30分ぐらいの場所にあり、友人と慣れない道をペダルを漕いで観に向かったことを覚えている。そのときの友人は、もう結婚していて子どもが二人いる。そのくらいの時間は経った。
 だから、今回の映画でシンジがトウジやケンスケと再会するシーンには、そういう時間の流れを実感を伴って受け止めてしまった。そして、それは言うまでもなく、自分の変わっていなさと向き合わされることでもある。
 今回、碇ゲンドウの過去に言及されることで、改めて彼の弱さがはっきりと提示されたわけだけれど、その弱さはあまりにも既視感のある、ありきたりな類いのもので、そしてそれ以上に、そういったものに相も変わらず共感してしまう自分がいる。それこそ、最近の憂鬱について言い当てられたような気まずさがあり、内心苦笑していたりした。10代の頃よりもゲンドウのことがわかってしまえているような気がする。
 きっと、こういう類いのものを乗り越えた作品は、今となってはたくさん出てきている。むしろ、今はもはやそういう問題設定自体が成立しないかも知れない。良くも悪くも、やっていくしかなくなっているから。
 実際、本作でもその解決そのものにカタルシスは無かったと思う。それは、もはや当然乗り越えられるべきものとしてあって、そして、当然乗り越えられた。象徴としてのエヴァンゲリオンは一体ずつ、余すこと無く消滅した。自分にはそれが――振り返るとこの映画全編通してそういう印象を受けるけれど――儀式のように見えて仕方なかった。物語上そうだったという以上に、エヴァという作品を終わらせるための儀式。
 面白い、面白くない、という点で言えば、決して面白くは無かったと思う。ただ、ここまでやってくれたのだから、という思いがある。映画館を出たときに、少し身体が軽くなっているような気がした。

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