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2020年 キャンプ業界 6つの予測①

アウトドアメーカーでプレスをしているKです。

2020年が始まり、巷ではかつてないほど冬キャンプが盛り上がり、キャンプブームの勢いを感じます。そんな中、今年キャンプ業界がどうなっていくのか、アウトドアメーカーで商売をしている私なりの視点で予測を立てましたので、どうぞご覧ください。

1.サードウェーブテントの台頭
昨年のキャンプ業界のビッグニュースと言えば、今まで無かった形状のテントが誕生し、バカ売れしたことです。

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参照:ZANE ARTS

こちらは、2018年12月に立ち上がったゼインアーツのZEKU-M。数年前からシェルターテントにはグルキャン向けに一定の需要がありましたが、どのシェルターテントもとにかく高い。しかし、ゼインアーツは価格を1レイヤー下げ、ちょっと頑張れば手に届く範囲に価格を設定しました。
もちろん鉄板のアースカラーやデザイン性に優れた形状も評価されるべきですが、Unique Selling Propositionは圧倒的にその価格だと思います。大手メーカーから独立し、ブランドを一から立ち上げたローンチ段階では、ラグジュアリー路線に舵を切ることもできたでしょう。しかし、このデザイン性のこの価格帯がブルーオーシャンであることを見定め、市場投入を実現し切った企業努力にただただ脱帽です。

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参照:サバティカル

ゼインアーツに続けとデザイナーに同じ小杉氏を擁したサバティカルも完売続出。木製家具が主戦場であったYOKAもテント製作に乗り出してきましたが、正直むちゃくちゃかっこいいですよね。何よりその価格。もはや「1代目のテントはコールマンかキャプテンスタッグです!」という業界の常識が崩壊寸前です。

そして、2020年もこの流れは加速すると考えます。

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参照:サバティカル

サバティカルは、アルニカというノルディスクのレイサを彷彿とさせるツールームテントを3月に発売しますが、これがまたかっこ良くて、何より安い。
実は日本のテントの主流は圧倒的にドーム型なのですが、ここ2年でドーム型テントの利用率は51.3%と8.0%下落(以下、キャンプに関するデータの出典元は「オートキャンプ白書2019」)し、ツールームテントの利用率が24.5%と10.3%も伸長しています。この数字を押し上げているのは間違いなくDODのカマボコテントシリーズなのですが、未だに新作は抽選販売になるほど大人気。この流れからしてもアルニカはバカ売れし、キャンプ業界を席巻します。

また、2020年は"販売店がプライベートブランドを持つ"という流れが加速します。業界の隅の方からちらほら新しい話が聞こえてきますし、テンマクデザインも企業努力を続けてヒット作品を連発しています。ここ最近だと炎幕なんて最高傑作ですよね。
"コールマン(やその他同価格帯テント)かそれ以外か"という二項対立であった業界の構造が今年崩れます。いち早く顧客のインサイトを掘り起こし、しっかりと顧客の手に渡るよう企業努力を続けるのが大事であることを新進気鋭の新ブランドが証明しつつあります。正直、ブランドパワーだけで10万円以上のテントを売り続ける商売は、テントの購入サイクル上、これ以上伸びないと言い切れます。企業努力を続けているかそうでないか、今年は構造が大きく変わりますよ。

2.バンキャンパーの増加
バンがアツいです。そして、今年もっと加熱します。
バンと言っても大きく二つ、軽バンとミニバンに分けてご説明します。

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参照:Honda

まずは軽バン。キャンプで軽と言えば、まずハスラーとジムニーが思い浮かびますが、今軽バンを牽引しているのはホンダの「N-BOX」。2019年の新車販売台数は前年比105%の25万台(出典元:日本自動車販売協会連合会)。2位の「スペーシア」に10万台近く差をつけて圧倒的に大人気です。もちろんデイリーユースが主な用途だと考えられますが、ホンダのサイトを見ても明らかにキャンプを意識した作りになっており、車とアウトドアは切っても切れない関係になっています。なぜ他でもなく軽バンがアツいかと言うと、それはソロキャンプブームと密接に関連しています。

一人でキャンプをするソロキャンパーの人口が、ここ4年で26.9万人も増えています。要因は、キャンプを題材にしたアニメやドラマ、芸人のYouTubeなどキャンプブームにあいまってマスレベルでの露出が大きく増えたことにあります。では、そのソロキャンパー達がどんな車に乗っているかと言うと、実は軽バンなのです。
2年前、ソロキャンパーの41.3%がバイク乗りで、軽キャンパーはその1/3以下。しかし、ここ2年でバイクキャンパーの割合が14.3%と急激に下がり、軽キャンパーが19.0%に伸張する逆転現象が起きてしまいました。頻繁にキャンプ場を訪れている私からすると、感覚値に近しい数字感です。

ソロキャンパーが軽バンを選ぶのは至極真っ当な選択ですが、こだわりの強いキャンパーを駆り立てるのが、カスタムのしやすさ。キャンパーにとっての軽バンは、カスタムを前提に選択をしている方が一定数いると思います。

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参照:JIMNY

某アニメがドラマ化され、さらなるマス露出が見込まれている2020年、ソロキャンパーが増え、結果的に軽バンキャンパーも増えます。また、先日の東京オートサロン2020で各社カスタム車がお披露目されたように、キャンパーが個性を出す方法の一つとしてカスタムがもっと身近な楽しみになるでしょう。

また、バンに乗ると連結テントやタープが欲しくなります。ただ、イケてる連結テント/タープは少なく、感度の高いキャンパーは自作しています。ここは現状ブルーオーシャン。ポテンシャルの大きさは未知ですが、今年伸びてもおかしくない市場でしょう。

続いてミニバンのお話。

実はミニバンもアウトドアを意識した訴求を強化しています。年末に公開されたハイエースのWEB動画でもキャンプでの活用シーンが目立っていましたね。実は今、そういったメインストリームとは別に、業界の有名人を中心にミニバンのカスタムがじわじわときています。


例えばCiel Bleuのワカさんがシボレーのシェビーバンのカスタム車に乗り始め、Neru Design Worksのneruさんもディフェンダーから同じくシェビーバンのカスタム車に昨年乗り換えました。インスタグラマーのYURIEさんもサンシー号と名付けたミニバンを昨年カスタムし、車1台で北海道から九州まで駆け回っています。他にも、バンに乗り換えているキャンパーが徐々に増えていることをキャンプ場やInstagramで定性的に確認しています。
これは「車でキャンプしながら旅したい」という機運が世間で高まりつつあるということに他ならないと思います。実際、自宅からキャンプ場までの平均所要時間は3.2時間と、4年前と比べて0.4時間も増えており、「興味のあるキャンプ場があれば時間をかけてでも行きたい」とキャンパーが考えていることを裏付けています。もちろん、遠くのキャンプ場に行けば行くほど連泊になりますし、荷物が増えると大きな車が欲しくなりますよね。ミニバンをカスタムする業者が儲かっている話を昨年よく聞きましたし、今年は一段とミニバンが盛り上がってくるでしょう。
それに応じて気になってくるのが「キャンプ×旅」という市場。これは、次の予測にも関わってくるので、後ほど説明します。

と、一気に6つ書こうとしたら2つだけでもだいぶ長文になってしまったので、3回に分けてお届けすることにしました(笑)。次回の更新までお待ちください。

K

【データの出典元】
・オートキャンプ白書2019
・日本自動車販売協会連合会 新車販売台数2019