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顧客は存在しない

妻の誕生日プレゼントを買おうと梅田に出た。

百貨店(大丸、阪急、阪神)、ショッピングモール(ルクア、グランフロント、三番街)はどこも人で溢れていた。
JR大阪駅前のペデストリアンデッキ歩いてたら降りてきた。

「顧客」というものは、存在しない。

今朝(May28, 2022)のWSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)記事にこんなのがあった。

見出し「買い物客はじれている。お店は彼らの声に耳を傾けている」

アメリカの消費者たちの行動がまちまちで、企業はどうしたものか試行錯誤しているさまが描かれている。イラストにあるように、ウォルマートは(買っても買わなくても生活に困らない)嗜好品ではなく生活必需品に焦点を絞り、「お値打ち」を全面に打ち出す戦略。発信もその色を出している。

マーケティングの雄P&Gは「最後の一滴までお使いいただけるボトルです」「冷たい水でも洗浄力は変わりません」(お湯を沸かす燃料費節約)と訴求する。

かと思えば、ペット関連ショップは売上がどん、と上がっている。

コストコも10.8%増収した。役員は、言う。「もちろん弊社でもインフレや不景気への対策はじっくり議論しましたよ。でも、実際にうちの店や飛行機をご覧になってみてください。お客さまで溢れてますよ」

Consumer sentiment indexというのは、早い話「買う気度数」だ。「ノリノリ指数」と言ってもいい。データを見る限りはドカンと落ちている。買う気はしぼんでいるはずなのである。

先行き不透明な場合、当然人は財布の紐をしぼる。それでもどうしても高額な出費をせざるを得ない場合もある。そんなときは貯金を切り崩す・・・これもデータに出ている。

個人の貯蓄率だが、直近の4月は4.4と、大幅にダウンしている。

データはセオリー通りなのだ。
ところが実際の消費者行動、顧客行動はまちまち。
どういうわけか。

これはあくまでアメリカの話だが、日本も、ドイツも、ブラジルも変わらない。世界中、変わらない。

顧客というものが存在せず、そこにあるのは関係だけ

だからである。

顧客というものはどこにも存在しない。ウォルマートと「関係ある人」は存在する。
P&Gと「関係ある」人、コストコと「関係ある」人、ルクアと「関係ある」人は存在する。

その「関係」という「来店する」「買う(または買わない)」相互作用が「顧客」というコンセプトの実体であり、物理的存在としては、ない。

だから、マクロで見て、「インフレ時には顧客はこういう行動を取る」というのはあくまで変数の一つとして知っておくだけで良く、それを元に戦略を立てると外す。

シャチハタスタンプという商品がある。これは「自分の名前を印として押す、ただし朱肉はいらないよ」というものだ。主な用途は宅配便ドライバーさんの受け取り状。だから玄関わきの棚に常備している。

スタンプの「関係」は「宅配便ドライバー」といえる。そこに目をつけたのがドアPETAハンコ。

ドアに磁石でくっつけておける。だからマスクなどもそこに引っ掛けて収納可能。
これは素晴らしい。「スタンプの顧客」というものは存在せず、「宅配便ドライバーとの関係」のみになっていることへフォーカスしたナイスアイデアだ。

「顧客は存在しない、関係があるのみ」をわかりやすくしてくれる、とても素敵な事例です。

さて、妻の誕生日プレゼントですが、あまりの人の多さに参ってしまい。後日あらためることにしました。

「インフレで世の中不景気じゃないの? なのにどうしてこんなに人が多いの? 高額ブランド品も人が群がっているのはなぜ?」

こう思ったのが、「顧客は存在しない」につながりました。

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