見出し画像

イノベーションの本質は新しい生活習慣の一般化

イノベーションは、何か新しい技術によっては誕生しない。新しい技術はすぐには経済的効果をもたらさない。新しい技術によって可能となった新しい生活習慣が一般化して初めてイノベーションになる。そしてイノベーションは「今日のつづき」の先には、ない。

エジソンが白熱電球を発明したのは1879年だが、20年後、1899年の統計によるとアメリカ一般家庭の電球普及率はわずか3%だった。電球の発明だけでは生活習慣はすぐには変わらなかったのだ。

身近なところでいうと、「コンビニで買い物する」というのも、新たな生活習慣として定着するまで時間がかかっている。1984(昭和59)年、広島は西区古江に住んでいた。近くにポプラというコンビニがあった。でも「コンビニは高い」という思いがあり、買い物することはなかった。家に友人たちがやってきて、氷が必要になったときだけ、買いに行った。そうそう、「氷を買う」「水を買う」というのも、いまや当たり前だが、当時はなかった。氷は家の冷蔵庫にあるし、水を買うなんて、とんでもない。もったいない。

スティーブ・ジョブズがiPhoneを発明したような、そして携帯電話を再発明したような「一夜明けたらイノベーション」という話は世の中にほぼ無い。iPhoneですら、2007年に発売された当初、持ってる人は周囲にほとんどいなかった。2009年に放映されていたテレビドラマを見ると、まだまだみんなガラケーを使ってることがわかる。

そしてiPhoneを作るのに使われている技術で突出したオリジナルなものはない。製品そのものは大半既存技術の組み合わせでできている。ユーザーインターフェースを向上させる「指で画面をタッチして操作」以外は。もちろんここが革命的なのだけど。スタイラス(専用のペン)ではなく「みんなが生まれながらに持つ世界最高のデバイス=指」を使う。

ジョブズはこのスピーチで最高にうまいプレゼンテーションをする。

「今日は3つの新製品を紹介します。1つ目はワイドスクリーンのiPod、2つ目は革命的な携帯電話、3つ目はブレイクスルー(革新的)なインターネット・コミュニケーター(通信機器)・・・もうおわかりですね。3つの別のものではなく、1つにまとめました。iPhone」(拍手喝采)

iPhoneは人類の生活習慣を根こそぎ変えた。暇つぶし(マンガ、You Tube、Tik Tok)、チケット購入、ブラウザチェック、辞書、外国語会話レッスン、デリバリー依頼(ウーバーイーツ)、タクシー手配(ウーバー)、買い物(BASE)、業務連絡(Slack)・・・・

大事なことは、「携帯電話の再発明」というジョブズのビジョンであり、それは「今日のつづき」からは生まれない。結果、「携帯電話」にとどまらず、「ポケットの中に世界との窓口」が入ってしまうという、生活習慣を革命することにつながった。

ただし、あくまでその生活習慣は「現在」を見据えたものでなければならない。レオナルド・ダ・ビンチは言うまでもなく天才だが、着想していたコンタクトレンズ、潜水艦、ヘリコプターは、彼の生きた時代1452年-1519年の人々には理解されなかった。「どんな新しい生活習慣が生まれるのか」描けなかったからだ。

iPhone製造に使われている技術は「今日のつづき(+アルファ)」、それをイノベーションにしたのはビジョンだ。そしてそれは、技術にはない。「どんな新しい生活習慣を生み出したいのか」という映像だ。そして、今日にフィードバックする。

「今日、何をしよう?」と。

画像1

iPodがこんなラジカセを不要にしたんだけど、このポスター、いまの生活習慣から見ると、この女の子の力持ち自慢に見えるね(笑)ところでこのひと、石原真理子さん?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?