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いつものコーヒーが飲みたいんだ

JOYWOWが得意としているのは「本質をつかみとること」。本質とは何かというと、たとえば、古い昭和な喫茶店があるとしよう。カウンター挟んでママと常連客男性。

常連客に、聞く。「ここより美味しいコーヒー飲ませる店、他にいっぱいあるでしょう?」

「オレはね。美味しいコーヒーが飲みたいんじゃないんだ。いつものコーヒーが飲みたいんだ」

ママに、この常連客、どう思うか。

「店を閉めるその日まで、いつもカウンターにいて欲しい人」

この話、ドラマ『俺の話は長い』からいただきました。

「コーヒーが欲しいんでしょ? 安い方がいいよね? じゃ、コップ渡すから、自分で淹れて」コンビニコーヒー、実は客が100円で買っているのは紙コップである。この、「コーヒーが飲みたいというのだからコーヒーを安く与えればいいでしょ」という味気ない商いになったのが90年代。昭和が終わり、平成になってから。以来、商いに色気がなくなった。

巣ごもりが1年以上になり、いま、ネットショップはどこもこの世の春である。続かない。残念ながら、二極化する。色気のない商いは長く続かないのだ。いったん二極化し、やがて一つだけになる。

「その店でしか買えないもの」と「安いだけのもの」。

「安いだけのもの」ネットは価格比較道場であり、ネットの本質は「遠いところへ商品を届けられる」ではなく、「価格が広まる」だ。以前もどこかで書いたけど、Googleレンズでパシャ、とすれば簡単に価格が出る。他の店の。今やプライシングを手放さなければならないのがネットショップなのである。経営はプライシングだ。経営の根っこのねっこを手放すと、それはもう経営とは言えない。だから「安さだけが売りです」というのは、やがて資本力あるショップ「だけ」に淘汰されていく。現時点でそれはアマゾンであり、ヨドバシだ。

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マンションの一室でやってるパパママショップは経営リソース上でも太刀打ちできない。「いったん二極化し、やがて一つだけになる」というのはこういう意味だ。

そうなると、「その店でしか買えないもの」を提供できるショップしか残らなくなる。冒頭ご紹介した喫茶店。

「オレはね。美味しいコーヒーが飲みたいんじゃないんだ。いつものコーヒーが飲みたいんだ」つまり彼はコーヒーという液体ではなく、「いつものコーヒー」という記号を消費しているのである。

「その店でしか買えないもの」ショップは、自分の提供している商品をどのように「記号化」するか。そこが腕の見せ所であり、それこそが本質なのである。

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