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あるとき・ないとき

好きなエピソード(*)。

Netflix経営会議。2003年。最高マーケティング責任者レスリー・キルゴアは直近で数千人の新規顧客獲得を達成していた。共同創業者兼CEOリード・ヘイスティングスは大いに褒めた。今後もまた同じような成果を挙げると、どれだけ高額のボーナス(成果連動型)を手にできるかを言おうとした・・・レスリーが遮った。

「ありがとう、リード。確かに素晴らしい成果だし、私のチームは頑張ってくれた。でも、現時点で新規契約者数を追うべきではないと思う。重要な指標ではないので」

レスリーはつづけて、たしかに、前四半期には新規契約者数が重要な目標だったが、現在本当に重要なのは顧客定着率(リテンションレート)だと言った。

このやりとりでリードは次のことを学んだ。ボーナスという仕組みそのものが、「未来は予測可能であり、ある時点で設定した目標はその後も重要であり続ける」という前提に基づいていることを。

しかし環境は秒速で変化している。迅速に会社の方向を修正していかなければならないNetflixにとって、社員の12月のボーナスをその11ヶ月前の1月に決めた目標に応じて決める、というのは一番やってはいけないことだ。社員がその時点で会社にとって何が最善なのかではなく、目標を達成することに集中してしまうリスクに転じる。

*NO RULES RULES (c)Netflix, 2020

そう、マーケティングは瞬時に変わらなければならない。

あなたは何か新商品を出そうとしている。りんごのない世界だと仮定して、りんごをどうやって広めるか。世の中にはりんごが「ない」。「ない」から、人々は「ないもの」を想像できない。だからりんごがいかに美味しく、栄養豊かで、おやつにも、料理にも、そして調味料にも幅広く使える魅力的なフルーツだと力説されたところで、「そうですか」程度だ。

そういう時、「あるもの」との比較で話すと良い。たとえば、みかん。みかんはすでに「ある」。みんな食べたことが「ある」。

なので、みかんとの食感の違いや、レシピなど、「使い勝手」を伝える。腐るまで日持ちするから、りんごを部屋に一個置いておくだけで消臭剤の代わりになります、というのも刺さるだろう。

こうしてりんごが広まり始めた。これまでは「どれだけたくさんのりんごを売るか」がマーケティングのフォーカル・ポイント(焦点)だったが、ある程度まで行くと、焦点が変わる。変えなければならない。多くのミスはここで発生する。これまでの延長をやってしまうのだ。これまでの延長を仮にやったとしても1が1.2になる程度で、10や100にはならない。Netflix最高マーケティング責任者レスリーの慧眼はここにある。

広まったりんご。では、誰が買ってくれて、どのように使って(食べて)くれているんだろう。顧客とのパイプの場作りが焦点になる。

このように、マーケティングは「あるとき・ないとき」で変わっていくべきなのだ。

ステイホームでコンテンツストリーミングサービスを契約した人が多いと思う。ぼくも複数契約している。でも、仮にアマゾンプライムを「なし」にしたとしても、他で代替できる。U-NEXTも代替可能だ。しかし、Netflixは代替が効かない。オリジナルコンテンツを多数保有しているから。

「ある」が「ない」になったら困るように作る。これも大事な仕事やね。


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ビジネスの世界に「JOY+WOW+LOVE and FUNの総量」を増やしたい作家・哲学起業家(フィロソフィー・アントレプレナー)です。JOYWOW創業者。https://twitter.com/kjoywow 僕のnoteは全て無料です!