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運命査定額

「役所で"運命"を買い取ってもらえる」
ドロイド賭博で大負けした日、学府の頃の先輩に相談するとそう教えられた。

ケイオスフィアが一定期間後の未来の自分に起こる出来事を量子演算して、その価値や実現可能性やらを掛け算して値段を決め、売買に応じて未来調整が行われる。
子供の頃から災害やテロの予測と防止に未来調整が使われていたが、こうした個人向けサービスも始まったらしい。
売った未来は”起こらない”が、買った未来はただの可能性なのが曲者だと思った。

査定窓口には、色々な未来の情報が空中に投影されていた。申請フォームを埋める俺のすぐ横を、法外な値段の”アイドル”の未来が通過していく。

……時間係数を退屈そうに調整する窓口のおやじが途端に血相を変え、俺が当局に拘束されるまで2分とかからなかった。奥に連れ込まれながら、俺は査定画面に表示された文字を盗み見た。

《……蜊√Ω月後 ケイオスフィアを破壊し世界を滅縺シ縺�》

【続く】

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