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Minutes

人の頭の上に数字が見えるようになった。

その日営業ノルマ未達の俺に罵声を浴びせる課長のハゲ頭の上に現れた700万そこらの数字の意味は、偶然帰り道に見かけた「1」の数字を掲げてヨロヨロと赤信号に突撃した老人と、その直後に通ったトラックがそれとなく教えてくれた。

長生きな方の人間でも、5000万分前後。人の寿命が文字通り分刻みで見えるというのはあまり良い気分ではなかった。俺はいつも以上に地面とにらめっこして歩く羽目になり、毎朝の歯磨きも鏡を見ないように目をつぶってやるようになった。髭はもう1週間は剃っていない。

だが、四六時中そうしている訳にもいかない。例えば、今みたいな時だ。((ああ、まただ))横断歩道の向かいで俺と同じく信号待ちをする学生、主婦、老人、会社員達。そしてその頭上に浮かぶ、数字。

3200万、600万、18万、2100万、1500万、

7億。

スーツ姿のその男と、目が合った気がした。

(続く)

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