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隣に咲いた向日葵

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#写真

どうせ、愛だ。

どうせ、愛だ。

それぞれの世界から忍び寄る憂鬱から逃れるようにして、恋人とお揃いのTシャツを身に纏ってみる。貰った時の感情とか、燦々とした情景とか、彼女の笑みなんかが香ってくる。身体の奥の奥の方からぽわりと温かいものが漂ってきて、彼女のことが恋しくなっては、会いたくなる。会えない時間にどうしようもなく会いたくなるのに、ないものねだりだな、会える時間を疎かにしてしまう瞬間がある自分に後になって気がつく。バイバイと手

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面影が、よすがに重なってゆく

面影が、よすがに重なってゆく

青々と咲き誇るネモフィラの中に、ぽつぽつと白い子たちもいた。それを見つけた恋人は、幸せを手に掴んだような面持ちで目を輝かせていた。

フィルムカメラを持ってきてよかったと心の底から思った。淡い写真は、今どきスマホのアプリでも簡単に撮ることができるけれど、27枚という制限付きのフィルムに、慎重に、丁寧に、彼女の全てとまではいかずとも、僕が撮ることの出来る彼女を精一杯写すことができるから。昨年と同じ場

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7%

7%

いくつになっても月を見上げる人間でいたい。月に情緒を見つけられるからよいとか、月の美しさを一瞥もしないからよくないとか、そういった類のものではなくて、ただ、月を見上げる人間でいたい。星でもいい。真っ暗な帳に穴が空いたように煌めく月や星をぼうっと眺め、綺麗だと、美しいと、そう思える心を持った人間でありたい。僕がいつ頃から夜空を見上げるようになったのか、それは覚えていない。いつの間にか、淡黄色に輝く彼

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ぬくもりとエロティシズム

ぬくもりとエロティシズム

帷が降りた夜に月がぴたりと張り付いている。
見上げた先で煌めく孤独は、とてもとても麗しい。

月を捕らえんとばかりに月暈が浮かび上がっていて、思わずスマホを取り出してデジタルの中へ押し込もうとした。
画面を六等分するグリッドの中央に、暗闇で光るボタンのように映しだされている月を収める。
光量やアスペクトを調節して、可能な限りボタンを際立たせてやる。
捕らえたッ——

美しいものを美しいと感じた時、

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