『2周目だから好きな事を好きなだけ。伍話』
2月2日。
年明けから稽古が続き遂にプリンシパル初日。
プリンシパルはまず初めにダンス。
次に自己PRを行い。
その次には4つのグループに分かれエチュードを行う。
そして最後に演技審査。
エチュードとは中々聞きなれない単語だと思う。
エチュードとは言うなればオーディションのようなものだ。
プリンシパルではここまでを見てファンの皆さんがそれぞれの役に投票する。
それで各それぞれの役の投票数一位が本番の劇。
「銀河鉄道の夜」に出演できる。
ジョバンニ、カムパネルラ、サソリ。
わずかに3つ。
選ばれなかった10人はアンサンブルとして劇中に花を添える。
そして最後にミニライブ。
これが一連の流れである。
私は1周目では、千秋楽と8日目を見に行っていた。
今回は自分が演劇に出る側。
初日のエチュードは梅、珠美、麗乃と私で「透明人間」を行うことになった。
自己PRでは色々な事をする。
例えば葉月は側転をしたり、蓮加がソーラン節をしたり、でんちゃんがなんかもう色々盛り込みな一芸を見せたり。
ほんとに個性豊かで、何でもありな感じ。
初日の私はお見立て会でミスったリフティングをすることにした。
失敗したままじゃ納得がいかない。
1周目から持つ負けず嫌いが2週目もしっかりあった。
そして初日…私はカムパネルラの役を貰うことができた。
〇:よかった………
葉:〇〇、おめでとう。葉月はダメだったよ〜。
〇:でも葉月、敢闘賞じゃん。凄いよ。
:(Ms. 敢闘賞…葉月は役こそもらえないけど確実にこれからファンの脳裏に焼き付く演技をする。)
葉:明日は葉月が選ばれるからね!
:今日は頑張ってね。
〇:ありがとう。がんばるね。
こうして初日の「銀河鉄道の夜」は幕を上げた。
【劇&ミニライブ後】
久:疲れた……〇〇お疲れ様。緊張したね…
〇:う、うん…お見立て会とはまた違う緊張感…
吉:2人ともキラキラしてたよ。お疲れ様。
〇:あやてぃー、ありがとう。
麗:〇〇〜。はい、タオルとお水。
〇:麗乃もありがとう。ふぅ……
麗:ほんとすごかったね。
:お見立て会の時よりお客さん少ないはずなのに。
〇:全く違う雰囲気だった。怖かった。。。
麗:明日は麗乃が立つから。負けないよ!
〇:私だって負ける気ないもんっ!
3期生にはやっぱり負けた嫌いが多いらしい。
2日目、有難いことに私はまた役を頂けた。
役はジョバンニ。
【劇中】
〇:お母さん!今日の牛乳が………
2日目も何事もなく無事終演。
そしてやってきた3日目。
私が思っても見なかったことが起こる。
1周目の歴史とは大きく違う事が起きたのだ。
3日目 マチネ サソリ役 〇〇〇〇
3公演目 〇〇〇〇 三役コンプリート。
〇:え…私が…サソリ役…?
私は1周目の久保と山が達成した4公演目三役コンプリートの記録を塗り替えた。
山:〇〇すごいじゃん!最短だよ!
〇:え…私が…?
珠:〇〇すごいよ!おめでとう!
梅:ほんとにすごい事だよ!
:ほら、早く衣装着替えてきな。
3期生のみんなは祝福してくれた。
絶対悔しさもあるはずなのに、顔色一つ変えず。
心から私のことを喜んでくれた。
だか、マチネの劇中。事故が起きた。
〇:来るな!こっちにくるな!
:そうだ…君の願いは何だって叶えてやる!
劇は何事もなく進んでいるように見えた。
サソリがイタチに追われ、井戸に落ちるシーン。
ここでとある事故が起きてしまった。
〇:イタチも一日生き延びたかもしれないのに…
:どうか神様!どうか神様、この次は…
:みんなの幸せの為に僕の体を使ってください!
この台詞の後、サソリは少し飛び跳ねる動きがある。
その時だった。
〇:痛っ………!
突然脚に力が入らなくなった。
それでも私は何とか演技を続けた。
終演後、私は立てなくなっていた。
〇:痛い……
桃:大丈夫…?
〇:早く…ミニライブの用意しないと……
桃子に肩を借りて立ちあがろうとするが…バタン。
楓:〇〇!ミニラは無理だよ。諦めよ?
〇:嫌だ!お客さんが見に来てくれてるのに。
:タダじゃないんだよ!出ないなんて…有り得ない!
吉:今は無理しちゃダメだって。立ててないんだよ。
〇:大丈夫だから!はやく、行かせて!
恐らく観客席まで聞こえてたかもしれない。
それでも私は何としてもミニラに出たかった。
最速で三役に選んでくれたファンの方に感謝を伝えたい気持ちでいっぱいだった。
結局、マネージャーさんにも止められ
他の役者さんや今野さんまで裏にきて止められて
ミニライブは諦めることになった。
即日病院へ送られ。
診断結果は…膝関節捻挫。
幸い大きな怪我ではないが2,3週間は安静。
つまり、3人のプリンシパル
残り全公演 休演が決定した。
私は涙が止まらなかった。
理由は勿論、プリンシパル全休もある。
もう一つ大きなものそれは「3番目の風」
今野さんは私に非情な宣言をした。
今:〇〇、MV撮影には参加させられない。
〇:……………………………嫌です。
今:我儘を言うな。まだまだこれからなんだぞ?
〇:期別曲のMV…不参加…?
:絶対に嫌です。何としても出ます。
今:そんなこと言っても無理なもんは無理なんだ!
秋:まぁまぁ今野。落ち着け。〇〇もな。
今:秋元さん…
秋:〇〇、MV出たいよな。初めてだもんな。
〇:………はい。
秋:わかった。少し考えよう。時間をくれるな?
〇:わかりました……
秋:泣くんじゃいよ。まだ終わったわけじゃないから。
今:秋元さん、いいんですか?
秋:何とか考えてみるよ。可哀想じゃないか。
:こんなに頑張ったんだ。一度くらいバチは当たらんさ。
今:わかりました。秋元さんがそう言うなら。
:〇〇、とりあえず今日はもう帰ろう。
〇:わかりました……ありがとうございます。
秋:今野、アイツに電話しておいてくれ。
:今一番その子に必要な子だろう。
今:わかりました。
私はそのまま帰宅する事になった。
悔しさと痛みで涙は止まる由もなかった。
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