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世界一安い、から学ぶ

世界一安い星付き店から学ぶ

世界一安いミシュラン星付きレストランと呼ばれている香港の添好運(ティム・ホー・ワン)

その日本の旗艦店となる添好運 日比谷店に行ってきた

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週のど真ん中、夜21時前に行ったにも関わらず店の前には長蛇の列

土日は1時間半待ちが当たり前という超人気店である 

日比谷シャンテという立地の良さや、点心中心のリーズナブルなメニューが人気の秘密のように語られるが、飲食店経営はそんなに甘いもんじゃない 

この超人気店とのライセンス契約を結び、日本でも本国に負けないほどの人気店に育て上げたWDI GROUP の経営手腕には頭が下がるばかり 

大変学びが多かったので今回は客として、そして飲食店経営の側面からの意見を書き綴りたいと思う 


海外の人気レストランを日本に誘致して運営を行うライセンス契約の方法はいくつかあるのだが、最もメジャーな方法は 

①売上から数%のライセンスフィー
②料理人の派遣(直接雇用)
③オープニングとメンテナンス 

の3点を条件にしたものだ 

今回の添好運(以下、THW)に関しても、ぼくの予想だとこの形でのライセンス契約を結んでいるのではないかと思われる 

このライセンス契約だと出店側、つまりTHW側にはリスクがない

日本進出に失敗したところで金銭的なダメージは負わず、失敗した際のデメリットを敢えてあげるとしても他国でのわずかなブランド毀損くらいである 

だから
この形での出店を望む海外の人気レストラン、人気シェフは多い 

仮にTWH日比谷が月商4000万円だとして(あの安価な価格帯でも集客人数を考えるとあり得る数字だと思います)
その5パーセントをライセンスフィーとしたら、本国のTWHにとっては何もせずとも年間2000万円以上の純利益が約束されて、さらに派遣しているシェフの本国よりも良い条件の給与や、ピンポイントでの定期的なメニュー開発やオペレーションチェックのたびに別途フィーが入ってくるわけだから、まあとてもおいしい 

どんどん売って、どんどん多店舗展開してくださいってな感じである 

さてTHWのメニューはこんな感じ

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ご覧いただける通り、とにかく安い

安くてシンプルである 

このメニューで通し営業
昼も夜もずっと同じメニューである

さながらマクドナルドのハンバーガーセットを運ぶトレーのように、テーブルの上にすでにこのメニューが印刷されて置かれており、そのほかに箸からおしぼり、味を変えるための豆板醤やリーペリンソースなどすべてあらかじめセッティングされている 

お客様はテーブルに案内されると、備え付けの緑色のオーダーシートにえんぴつでどのメニューを何皿オーダーしたいか書き込んで店員に渡すだけだ 

とても古典的かつシンプルなオペレーション
(香港とか上海の街中のお店ってこんな感じですよね)

でもそれはiPadだと味気なくてダメで
やっぱりこの手書きで食べたいメニューを選んで店員を呼んで渡すところからお店の「世界観作り」が始まっているわけですよ 

これって
恐ろしいことに「客育」なんですよね 

うちはこういうスタイルの店ですよと入口から着席するまでにお客さんを洗脳しているわけです 

スタッフの方は中国や香港の方、東南アジアの方ばかりでさながら香港にいるかのような雰囲気です 

青島ビールをオーダーすると

「ひとり1本ずつだと現地だとグラス使わないでそのまま飲むんだよねー、グラス使いますか?」

なんて笑顔で聞いてくるわけです 

世界観に洗脳されます 

点心ひとつひとつのクオリティは非常に高く、これ有名ホテルの広東料理のお店よりも美味しくて値段半分くらいじゃないのって印象 

高級な食材は使っていないけれど
薄い皮、(香港などに行ったことがない人にとっては)見たことがない美味しそうな珍しいメニュー、蒸籠で蒸されて熱々でスピーディーに提供されることで値段以上の満足度は確実にあります

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これは混むよな

そりゃそうだよなあ 

店内は女性客が大半
しかも若い方が多いですね 

名物のベイクドチャーシューバオは香港ではおなじみのメロンパンのようなサクッと軽くて甘い皮の焼きチャーシュー饅頭です

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これ真似してもなかなか軽く作れないんですけど本当に美味しかったですね

日本だとこのレベルで食べられる店は無いと思う 

(ちなみにぼくが一番好きなベイクドチャーシューバオは香港のフォーシーズンズホテル内にあるロンキーヒンのもの。ここミシュラン三つ星です) 

とそんな最中 

ぼくは目ざといから気がつきましたよ

世界観の洗脳によりぼくたち客はまんまと経営者の掌の上で踊らされとるのだと 

テーブルに敷かれた紙のメニュー
その下部にドリンクメニューがあります 

青島ビール 780円 

ん?
780円? 

これ客単価1万円くらいのレストランの価格設定ですよ

酒屋からのお酒の仕入れ原価はほぼ頭に入ってますからこれ1本プシュッと開けただけで500円玉が投げ銭されているということにぼくは気がつきました 

ほかにお酒のメニューは生ビールとハイボールのみ 

そりゃ
この店来たら本場の雰囲気に飲まれて
青島ビールを飲みたくなるわな、、、ふだんは飲まないけど、、

3本は行くよね、、小さな小瓶だし、、

めっちゃ儲かるよね 

点心は原価は安く儲けが出やすい商品です
ただ
そこには技術が伴います
技術というのは人件費がかかりますからそういう意味では1皿680円の点心で満足をさせてお酒で粗利を稼いでいくという典型的に飲食店経営モデル 

まさに、水商売の本質 

やるなあ
これ気づかなかったよ、、みんなで食事してたけど誰も…..

そしてさらによく見ると
サービスのお茶代含みサービス料10パーセント!?!


これもホテルとか高級レストランのレベルですね 。こいつはすべて純利益なわけですわ 

計算されてるなあ

純利益率が非常に高いモデルに仕上がってますね 

行列で並んである間に紙にオーダーを書かせて着席したらすぐに料理が提供されるモデルだから回転率も非常に高い
ワイワイガヤガヤの雰囲気でバンバン食べて飲んですぐ帰りたくなる雰囲気 

よくできてますわ 

さてさて帰宅しようと思ったらお店の横にはテイクアウトの文字 

あの名物のベイクドチャーシューバオだけ持ち帰り可能とのこと 

普通はシュウマイとかねエビ蒸し餃子とか色々売りたくなるんですけどグッと堪えて名物のベイクドチャーシューバオだけをテイクアウト購入可能に 

オペレーションも宣伝も考えて 

強かですわ 

大変勉強になりました 

安かろう悪かろうではなくて
流行る店には
上手く行っているビジネスには必ず理由があるんだぜ 

っていう話です 

ではまた〜 

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