【連載】 第3回 こうしてとやま犬はうまれた #1

とやま犬を知っていますか?

突然ですが、あなたはとやま犬(とやまいぬ)を知っていますか?

『そんな犬種、いたっけ?』と思ったそこのあなた。大丈夫。
そんな犬種はいません。

とやま犬は、喜代多旅館のマスコット犬の名前。喜代多旅館のツイッターのアイコンにもなっています。(たまにとやま犬自身が投稿したりもしています↓ほら↓)

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今回は、この<喜代多旅館のマスコットキャラクター・とやま犬>が生まれた経緯を、旅館の一年を振り返りつつ、ご紹介していこうと思います。


2本目の柱を立てる

とやま犬の歴史を振り返るために、2020年4月頃の出来事からお話ししたいと思います。以前の記事でも書いた通り、2020年4月の緊急事態宣言を受け、喜代多旅館はおよそ2ヶ月のあいだ休館していました。リニューアルオープンから、まだ半年も経っていませんでした。

とはいえ2ヶ月の休館のあいだ、スタッフは完全に休んでいたわけではありません。主に自宅から、リモートワークという形で業務にあたっていました。

そんな当時の我々が抱えていた課題一つに「宿泊以外の事業を生み出すこと」がありました。休館期間が明けたとしても、すぐにお客さんが戻ってくる保証はないため、新規事業の開拓を進めることが必須だったのです。

そして、新規事業として選ばれたのが「お土産」でした。


獅子が守りし・・・お土産

喜代多旅館1階のフロントの横に、おみやげスペースがあるのをご存知でしょうか?「スペース」というには小規模ですが、今ではその品揃えは20を超えています。

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上の写真でも少し見えていますが、お土産が並ぶ棚の最上段に木彫りの彫刻が置かれています。これは獅子頭(ししがしら)といって、文字の通り、獅子舞の頭の部分。富山には古くから木工彫刻で有名な井波(いなみ)という町があり、この獅子頭はその井波の職人さんによる作品なのです。

そんな獅子頭が鎮座する当館のおみやげスペースには、富山由来の品が多く並んでいます。スペシャルティ・フェアトレードコーヒー専門店グッドイナフコーヒートヤマさんのドリップパックコーヒー。富山の呉羽丘陵でとれたはちみつ。そして、とやまくんワッペンなどなど。

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さらに、喜代多旅館オリジナルのお土産もけっこう並んでいたりします。宿泊されるお客様用のお部屋着として、当館では浴衣をお出ししているのですが、それをお土産としても販売しているんです。なんと、地元の着物屋さんの協力の元、生地探しからはじめたほど、情熱をかけた浴衣です。

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上の写真は旅館スタッフに浴衣を着てもらい、近くを散歩してもらった時の一枚です。(冬なのでダウンベストを羽織っています)一見デニムのような濃紺の生地が、着物のプロの協力を得て選び抜いたもの。久留米絣(くるめがすり)という生地を使っています。

久留米絣は、江戸時代の後期から福岡県久留米市を中心につくられてきた織物。丈夫かつ柔らかいため肌馴染みが良く、さらに夏は涼しく、冬は暖かいため浴衣にぴったりな生地なのです。

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このように手間暇をかけた商品は、すでに持っていた我々。しかしながら、「宿泊以外の事業」として「お土産」という柱を立てるには、まだまだな状態でした。

まさに、「まんでばやく」な我々

そんな状態を脱し、将来的に「お土産」を喜代多旅館の一つの柱にする。そんな目的のもと当館に新たなプロジェクトが立ち上がりました。その名も「商品開発プロジェクト」。2020年4月の緊急事態宣言に伴う休館とほぼ同時期のことです。メンバーはまとめ役のスタッフを含めて6名。結論を書くとおよそ半年の間で、こんなおみやげが生まれました。

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各品の詳細は最後にとっておくとして、今の人気ナンバーワンは、Cotton Sacoche / MANDE BAYAKU。この商品を手がけたのは、富山出身の20代のスタッフ。商品づくりに対する思いをnoteにも書いてくれています。

二〇二〇、インスタグラム引退元年。

さらに、これは我々が開発したわけではありませんが、このプロジェクトの一環で取り扱いがはじまったのがSIROCCO(シロッコ)です。

SIROCCO、みなさんご存知でしょうか?「しろっこ」ひらがなで書くと、日本のご当地銘菓にありそう、なんて気もしますが、実はスイスのコーヒ−&紅茶のブランドです。

SIROCCO公式サイト

当館では商品開発プロジェクトがきっかけで、このSIROCCOの紅茶を取り扱うことになりました。SIROCCOの紅茶はすべてビオ認定、フェアトレードで取引されていて、味だけでなくその理念も特徴の一つです。

個人的に初めて見たのは、すべて自然由来の素材でできたティーサッシェ(ティーバッグ)。調べたところ、一般的なティーサッシェはナイロンなどの化学繊維が主に使用されているそうです。一方、SIROCCOが使っているのは、トウモロコシを原料とした袋にコットンの糸。手作業で一つ一つ作られているそうで、これが美しいんです。ティーサッシェに美しさを感じることって、あまりないと思いますが、SIROCCOの紅茶はこれも楽しめるポイントの一つだと思います。

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※画像は公式サイトより(https://sirocco-japan.com/about/)

そういえば、SIROCCOの紅茶はフレーバーの種類がとても豊富。喜代多旅館で取り扱いさせていただいているものだけでも、10種類以上あります。それぞれの特徴などを詳しく知るために、今スタッフが定期的に紅茶を飲み身体に起こった変化や、紅茶にまつわるエピソードを書くという、ちょっと実験的なブログをはじめました。よろしければこちらも覗いてみてください。

喜代多旅館スタッフ SIROCCOブログ その1
喜代多旅館スタッフ SIROCCOブログ その2(準備中)

リアルを求めて徒歩7分

そもそもですが、この商品開発プロジェクトで作られた商品は、喜代多旅館と当館直営のオンラインショップで<KIYOTA STORE>で販売しています。(下の画像クリックでジャンプします)

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旅館でも販売しているとはいえ、ウイルスの収束のめども立たない当時(今も予断を許しませんが)、お客さんの反応をリアルで感じる機会がなかなか無いことが開発を進めるなかで一つのネックになっていました。そこで次の一手として、我々はイベント出店することにしたのです。

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出店させていただいたのは、毎月最終日曜日に定期開催されている越中大手市場というイベントです。(2021年は3月から開催予定のようです)

旅館から歩いて7分ほどの大手モールという場所を中心に、イベント当日はテントが設営され、食べ物からおしゃれな小物類など、様々なお店が並びます。こちらのイベントに、WEBショップの店名<KIYOTA STORE>として我々は出店させていただくことになりました。

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*上の写真は初めて出店した時の様子です。初回は雨が降ったり止んだりで、商品を濡らさないよう必死でした。

こうして、2020年9月の初出店を皮切りに、結果として当館は今までに3回の出店を経験。2020年最後の出店時は、当館併設のビストロカドゥーとコラボをして、『ケーキとSIROCCOの紅茶のセット』を販売をするなど、このイベントを通してさらに新しい挑戦をすることも経験できました。

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*この写真のケーキとSIROCCOの紅茶をセットにして販売しました。ケーキはイベント用の新メニューとして、ビストロカドゥーの林シェフが作ってくださったものです。

<ビストロカドゥーの林シェフ>
林シェフプロフィール
こぼれ話《荒町ぶんか小屋》/フレンチシェフと落語家の〇〇

イベントに出店したからといって、売り上げがいきなり急増するわけではありません。ただ、当初の目的であるお客さんのリアルな反応を体感できたことは、モチベーションの向上や次の目標をそれぞれが見つけるきっかけになったと感じています。

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*お客さんの反応を見る絶好の機会だ!と意気込んだスタッフによって作られた「なんTシャツ」。(こちらの「なんTシャツ」は、一部お客様にご好評をいただきました。WEBストアでの発売は未定。)

また、対面での接客によって、全体的な接客スキルの未熟さなど、新たな課題が明らかになることもありました。とはいえ、悪い面だけでなく、例えば「この人が接客すると売れる」「この人が接客に入っている時間はこの商品の売り上げが多い」など、スタッフそれぞれの個性や強みが見えてきたこともこの経験で得た気づきの一つです。

ほかにはイベント運営の方々や、他のお店の方々と関わることができたことも、非常によかったと振り返ると感じます。初出店時は、できるだけの準備はして行きましたが、それでもわからないことが多発します。その度に近くに出店している方や、運営の方に訊ねてはを繰り返しましたが、みなさん快く教えてくださいました。お客さんの反応もそうですが、こうしてリアルで人のあたたかさに触れることは、次への挑戦のエネルギーにもなっている気がします。喜代多旅館も、そんなあたたかさがある場所になれるといいなと思っています。

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今回はこの辺で。お読みいただきありがとうございます。


→次回へ 第4回 とやま犬はこうして生まれた#2


休んでかれ。