見出し画像

ここのところ笑える映画ばかり観ている

まだらな自粛期間も1年となり、自宅での楽しみ方のバリエーションが増えた。
その中でも今日は、映画とかドラマとかの話。
どうにも偏りまくっている話なので、あしからずご了承ください。


「笑い」は「息」を抜いてくれる

タイトルにもあるように、このところ観るのは、「笑える」作品にしている。家族で爆笑して、満足して眠りにつくのだ。
まあなんだか運動不足も否めないし、夫はかなり根詰めて働いているので、横隔膜と肺が活性する爆笑後、のため息、という形式でのリアルな「息抜き」も大切だと思ってのセレクトだ。「笑い」は免疫細胞を活性化する、とも言いますしね。

で、笑える作品というのは世界中に素晴らしいものがあると思うのですが、我が家は三谷幸喜作品一択。偏り過ぎています。

学生時代に演劇をやっていた私は、東京サンシャインボーイズ時代からファンだったので。

※役者さんでは梶原善さん、甲本雅裕さんが好きでした

演出、役者さんの演技はもちろん、そもそもの脚本の妙がたまらなくて、毎回「そうきたか~!」と思うばかり。今はもう解散してしまったので、もっぱら映画で観ているのですが。

夫はあまり観たことがなかったようなので、手あたり次第に観まくった。AmazonPrimeバンザイ。

有名な作品はたくさんあるけれど……
たとえば『十二人の怒れる男』のオマージュ作品である『12人の優しい日本人』は舞台から映画になったもの(監督は三谷さんではないが)。

演劇出身だからかわからないけれど、場面転換が少ないのは三谷さんの特徴なのでは?と私は勝手に思っているのだけど、これは陪審員裁判の話で、場面はある部屋でほぼ固定。

という流れでいくと、これは本当に面白かった!なんと100分間ノーカット。竹内結子さんがとにかく名演技。そして役者さんもすごいけれど、ノーカットで撮り続けたカメラマン(山本英夫さんほか)さんがすごすぎ。

本作は撮影のために松本空港の開業時間前2時間を貸し切りにして、9日間に渡って撮影された。最初の3日間でリハーサルを行い、残りの6日間は毎朝撮影を行なう。撮影後はスタッフ・キャスト全員で撮影されたものを見直して修正を重ねていく。最終的に最もできの良かったものを放送した。
                         (wikipediaより)

ひゃー。すごい。こんな現場、面白いだろうなあ~。三谷幸喜作品に出たいという役者さんが多いのもわかる気がする。

ワンカット作品はその後『short cut』も観て、これも面白かった。中井貴一さんと鈴木京香さんが夫婦の設定。ところで中井貴一さんといえば、『記憶にございません!』が良かった。

中井貴一さんって、シリアスなものも情けない感じもコミカルなのもできて、多才だなあと思う。そういえば、西田敏行さんもそんな感じ。『ステキな金縛り』ではお化け役をやっていた。

……と、かなりの三谷幸喜作品偏愛ぶりを発揮しているここ数ヵ月なのですが、三谷幸喜作品以外で、我が家の大爆笑をさらったのがこの作品。

こ・れ・は……あまりにも奇想天外すぎて、もう素直に受け入れるしかない設定。GACKTさんは最初、自分が高校生役をやるのは無理がある、と断ったそうだけど、台本を読んだらあまりにも無理のある内容だったので、「自分が高校生をやることくらいどうってことない」と出演を決めたそうで(笑)。

少しネタバレになってしまうけれど、ラストの方、ライバルと戦わず融合し、誰もが気づかないうちに志を成し遂げていく……なんて、なんか令和っぽいわあ、と思う私であった。
超、超!!おススメです。(マンガの絵の再現クオリティも高い。笑)

昨年は「山崎豊子祭り」だった

とまあ、こんな風に日々笑って過ごしているわけですが、実は昨年の自粛スタート時期の我が家は、山崎豊子作品ばかり観ていたのである。これも、私の趣味。

まずは『不毛地帯』。
舞台は戦後の高度経済成長期。元軍人の壹岐正が退官後総合商社に入り、ビジネス現場で奮闘、命を削って日本復興に尽くしていく物語だ。

主演の唐沢寿明さんが本当に素晴らしく、何度涙したことか……(唐沢さんは舞台も素晴らしい)。
で、唐沢さん×山崎豊子作品と言えばこちらも。

これを観ていたら、主人公・財前五郎の内面を成人発達理論(私の専門分野のひとつ)と重ね合わせてしまい、意識の発達段階がどのように表出し、どのように揺さぶられていくか、などなどに思いを巡らせていたら多重的にも楽しめた。
何より役者陣が豪華すぎて、感情移入しまくったのが本当のところ。江口洋介さん、石坂浩二さん、野川由美子さん、黒木瞳さん……みんなドがつくくらいのはまり役。『白い巨塔』といえば、昭和の名俳優といわれた田宮二郎さんが財前五郎をやっていて、唐沢さんもやりにくかったのでは、と想像したけれど、私は唐沢財前の方が好きだ。(一応、田宮版も観てみた)

それにしても山崎豊子作品は、とにかく長い。延々と観続けないと終わらない。中でも、これは本当に長かった。

映画バージョンも観たのだけど、やはりかなりの長編を3時間強におさめるのはきついなと思った。渡辺謙さん、カッコよかったけど。

途方もなく長いのが難点ではあるが、ドラマ版のがやはり、登場人物の心の機微がわかって良い。

山崎豊子さんは2013年に亡くなっている。直接お話を聞くチャンスは得られなかったので、残念でならない。この時代に、女性で、企業の裏側の問題を徹底的に取材して描く、というのは、相当の気骨がないとできないことだろう。

結局、職業病……

なんだ。タイトルに「笑える映画ばかり観ている」と書いたクセに、山崎豊子作品について書いていたら、熱があがってきてしまった。
ふう……………病気か。

その、昨年の山崎豊子祭りの時には、山崎豊子さん自身の声を聞きたくて、彼女のエッセイを読んでいた。「その人だからこそ」の仕事をする方々に共通する、こんな言葉があった。

どうしていつも、厳しく険しい題材ばかり選ぶんですかと聞かれることがあります。私自身がテーマを選ぶというより、なにものかに選ばされているというのが実感です。もっと楽なテーマを、と思うこともありますよ。
でも何かがーそう、私と同世代の、学徒動員で戦場で死んだ男子学生や軍需工場で死んだ友人たちが、私の背中を押してテーマを選ばせているような気がします。ともかく、生き残った者としては、という思いは、いつも感じています。                  
                    『山崎豊子自作を語る』より

この「自ら選んでいるわけではない」「選ばされている」「そうせざるを得ない状況に流されていく」というのが、いわゆる「使命」を生きている人の共通点だと私は理解している。彼女の場合はそこに「戦争」というあまりにも集団的な、集合意識的な痛みも加わっているのだが。
見える世界と見えない世界を行き来しながら現実を生きる人は、使命に向き合って成すべきことを成している。

もはや全然、「笑える」話にはなっていない

いやほんと。何が「笑える映画ばかり観てる」だよ、と、自分にツッコミたい。けど、ごめんなさい、noteは徒然なるままに書く、というのが私のインナールールなので、このまま突っ走らせてください(汗)。

最後に。
山崎豊子は毎日新聞の学芸部に所属している最中に小説を書き、『花のれん』で直木賞をとって新聞社を退社し、作家になった。
当時の上司であり、先に退社して小説家になっていた井上靖氏が、かつての部下の直木賞受賞の知らせにこんな速達をおくったそうだ。

直木賞受賞おめでとう
橋は焼かれた
           井上靖

そんな、退路のない現場で命を燃やした山崎豊子さんは、たとえば『不毛地帯』では現実にロッキード事件が起きる2年前にその問題を描いていたなど「未来予測ができる作家」と言われることがあった。「どんな予見をもって小説を書いているんでしょうか」と聞かれることも少なくなかったそうだが、彼女はこんな風に言っている。

これほど流れが速く、しかも変化の激しい時代にあっては、先を読むなんてできませんよ。ゲーテは、『先が見えないときは原点に戻れ』と言いましたが、私は常に自分の足元、自分の生きている時代を正確に見極めたいと思っているだけなんです。

「変化の激しい時代」という言葉はある意味、いつの時代も語られる、使い古された言葉なのだろう。(「今時の若いもんは……」と同じ)
いつだって、原点を、自分の足元を大事にして生きることが、大事なんだと思う。
だから私は毎日、大切な人たちと一緒に、笑って生きていたいのだ。
(あ、なんか元の話に戻ったかもしれない。笑)。


この記事が参加している募集

最近の学び

いただいたサポートは、良き文章が書けるよう使わせていただきます☺