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都市型で可能性広がる「大阪ワイン」

私はワインが好きなので、SNSのタイムラインにはよく、ワイン関連の広告が流れてきます。最近は、EPA発効の影響で、あちこちで欧州ワインの値下げアピール合戦が繰り広げられていますね。関税分が安くなっただけとはいえ、「欧州産」とつくだけでプレミアム感があった商品が値下がりすると、他の商品が割高に見えて売れない、もしくは、値段を下げざるを得なくなる状況が目に見えています。値下げはワイン好きとしては嬉しいことですが、以前ここで書いたように、私は、大阪・柏原のブドウ農園を応援していて、すっかり大阪ぶどう/大阪ワインの「関係人口」になっている今、この状況を手放しで喜んでいいことなのかと考えさせられました。価格競争に陥る産業は疲弊してしまうもの、良いものが作れなくなるのでは・・。

ここ数年、国産ワインが美味しくなっていると思います(実はチーズも同様なのですがこれはまた別途)。ヨーロッパの真似ではなく、日本の土地に根ざしたオリジナルが育まれてきたような感じでしょうか。国も“メイド・イン・ジャパン”を世界に売り込もうと、「日本ワイン」の表示や原産地呼称のルールを定め、昨年10月から適用が始まりました。しかし現実的には、味や品質といったワインそのものでは勝ち目がなく、生き残りの道をどこに見つけるかが課題になっています。

しかも、山梨や長野と違って、大阪のブドウ園は山の斜面に広がっており、IT化はおろか機械化すら実現するのが難しいそうです。生産効率を大きく向上させるのが難しいのであれば、付加価値をつけて収益を上げるしかありません。ブドウ栽培の体験サービスで、私のような「関係人口」を増やすことも一つですし、フジマル醸造所さんのようにワイナリーを併設したレストランを運営し、大阪ブドウの消費量を増やすようなアプローチも一つです。大阪を代表するカタシモワイナリーさんのブドウ農園には、地元レストランが自家栽培する区画がいくつかあり、そこで収穫されたブドウのワイン醸造を受託するそうですが、そういった取り組みで耕作放棄地を増やさない対策も有効ですね。

さらに今後、都市型だからこそのメリットを活かしたサービスも考えられそうです。農園やワイナリーの多くは郊外にあり、車がないと行きにくい場所にあるのが普通ですが、ここは大阪市内から電車で30分、駅から徒歩圏内という立地。気兼ねなく飲酒できるのは大きなメリットです。伏見や灘の酒蔵巡りのように、市内のホテルと提携したオプショナルツアーや、山の眺望/身近な自然を活かした施設も企画できそうです。可能性はまだまだ広がる気がします。

長期的にみると、温暖化影響で平均気温が高く、雨が多くなるため、気候変動に対応した品種改良が喫緊の課題だそうです。また、日本だけでなく、世界的に高齢化が進行していく中、食事は淡白になり、ワインも軽いものが好まれるようになると予想されています。もしかしたら、重いフランスワインが敬遠される時代が来るかもしれないなんて、ワインの世界でもゲームチェンジが起こりそうですね。

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