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Xデザイン学校の1年を修了して

昨年春から通ったXデザイン学校大阪分校ベーシックコースを、無事修了することができた。デザイン思考のプロセスを本格的に学んでみたい、ぐらいの気持ちで門をくぐったのだが、実際に取り組んだのは、企業のゲームチェンジを考えるという課題。企業経営そのものがテーマだったので最初から面食らった。そのギャップ感がなぜあったのか。今思えば、デザインを、ちょっとした商品サービスの開発の時に使うくらいに思っていたからだと思う。デザインを侮っていたと言うべきか。1年を通した学びは様々あるが、今、自分の中に特に残っていることをいくつか書き留めておきたい。

(1)ビジョンとサービスデザインの関係

Xデザインに行って、一番学べて良かったなと思ったことがこれ。以前は”これからはデザイン経営だ“と言われても一向にピンとこなかったが、いま、経済産業省の「デザイン経営」宣言を読むと、その言わんとしていることが理解できる。また、ベルガンティの『突破するデザイン』を読んでみても、以前なら”デザイン思考にも限界があるんだな“程度の理解に留まっていたと思うが、なぜそれをするのか、目的から始めることの重要性が説かれていて、とても腹落ちする。

浅野先生は、このビジョンを定義することを口すっぱく何度も言われていた。ビジョンは、今ならSDGsを考慮せずには成り立たない。ビジョンから始めて、ビジネスの視点、ユーザーの視点をつないでサービスアイデアに展開していくことは、変数の多い方程式を解くようなもの。何通りもの解答ができる。でも、ビジョンとちゃんと繋がっている?ビジネスは成り立つ?ユーザーがおいてきぼりになっていない?など行きつ戻りつチェックして、結果、どの道に進めていくのか、チームで考えていくプロセスはやりがいがあった。しかも、現在進行形で悩まれている企業が題材なだけにとてもリアル。これがXデザインならではの醍醐味というか、普通のデザイン講座では体験できない価値なのだと思う。

(2)アセットを活かす文脈を見つける

アセットを活かす、と言葉で書けば至極当たり前のことであるが、全体を通して、アセットについてもよく考えた。企業のアセットは事業のライフサイクル変遷やその戦略次第で、生きもするし死にもする。でも、死んでも捨てることは難しい。ゲームチェンジの際に、「新しいサービスによって職を失う人がいないか?」と問いかけるのは、すごく重たいことだと思った。そう問うだけでハッとする良い問い。

抱えるものが多い企業ほどゲームチェンジは難しいが、でもうまく活かすことができれば、スタートアップよりビジネスを軌道に乗せるのが速くなるケースもあるのかもしれない。アセットを活かすも殺すも、サービスデザイン次第。私たちのチームの検討では、アセットの棚卸しをしてみたが、文脈によってイキイキと蘇りそうなアセットを見つけることができたと思う。

(3)概念化の訓練と雑味

ユーザーインタビューから本質的な要求、そしてインサイトを探っていくところでは、様々な事象から概念化していくことが重要であった。私の中のデザイナーのイメージは、モノの見方が独特で、概念化がすごく上手くて(斬新で)、さらに言語化に秀でている、というものなのだが、自分がその域に達するにはまだまだ訓練が必要。全く歯が立たなかった感覚しかないので、日常行動を変えていくしかない。当たり前のようなこともなぜと疑問に思ってみる、似たような事象がないか考えてみる、変化に敏感になる、やってみたことがないことをやってみる、、などなど、日々の生活でアンテナを張ることを怠らずに過ごそう。この1年で少し意識づけできたと思うので、継続したい。

残念ながら年齢には勝てない。アンラーンして新しいことを吸収したとしても、若者には敵わないことの方が多くなるだろう。年をとることの唯一のアドバンテージは、人間を語れるようになることくらいだという話があったように思う。旅にでる、丁寧に暮らす、映画を見る、趣味を楽しむ。人生を謳歌して雑味のある人間になろう。

(4)デザインって面白い

デザインって、いろんな要素を繋げるからとても面白い。しかも右脳と左脳の両方を使う。ユーザーの気持ちに寄り添うこともするし、ビジネス価値も考える。社会へのインパクトも考える。そして、それを形にしていく。

今回、私たちのチームは、偶然にも役者が揃っていた。デザイナー、エンジニア、医療福祉の専門家、プロジェクトデザイナー、マーケッター(?)。全体を俯瞰するのが得意な人もいれば、ディテールを作り込むのが好きな人もいる。それぞれのスキルを提供して、うまくプロジェクトを進められた。私自身は、形にするフェーズではほとんど役立たずであったが、デザイナー任せにせず、多少、自分でも作れるようになった方が、視野も広がり、気づきが増えるのだろうと思う。Illustrator、Photoshopすら触ったことがないのはそろそろ卒業すべきか・・

まずは1年やってみて、サービスデザインの要所が分かったくらいである。筋トレのようにまだまだ続けたい。

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