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【教員志望大学生向け】 日本人学校の先生という選択肢

はじめに

ぼくは大学卒業後、東南アジア某都市の日本人学校で教員を務めていました。

この記事では、教員志望者の間でも意外と知られていない、日本人学校の先生という仕事について解説します。

特に、教員免許を取得している(あるいは取得見込み)ものの、「教員になるか迷っている」という大学生の方に読んでもらいたい記事になっています。


日本人学校とは

端的にいうと、

「海外に住んでいる日本人の子どもを対象に、日本の教科書を用いて、日本のカリキュラムと全く同じ教育を行う学校」

のことです。

場所が海外にあるというだけで、基本的には日本の学校と変わらないため、特別な技能が必要ということはありません。
日本と同様に、教員免許を所持していればOK。

海外での仕事ということで、言語の問題を気にされる方もいらっしゃると思いますが、職場ではほぼ100%日本語なので心配いりません。
ただ、買い物など生活していく上で英語や現地語が必要になることはあります。
住んでいればそのうち最低限の会話はできるようになるので問題なしです。

また、日本人学校は日本人駐在員が多い地域に設置されているわけですが、特にアジア圏に多く設立されています

欧米に住む日本人は、英語で授業が行われる現地校に子どもを通わせることが多いからです。
その場合、日本人の子どもは週末だけ通う補習授業校で、日本の勉強をすることになります。


日本人学校の先生になるには

日本人学校の先生になるには、主に2種類のルートがあります。

文部科学省派遣現地採用です。

日本人学校によって呼び方は変わりますが、この記事ではこの名称で話を進めます。

文部科学省派遣は、公立校の正規教員が自治体や文部科学省の試験を受けて、所属している自治体の代表として派遣される先生方です。
ぼくも詳しくは知りませんが、公立校の教員として数年勤務した後に派遣資格が与えられます。文科派遣の先生の中には30歳前後の方もいたので、自治体によるとは思いますが最短で5年ほどで派遣資格が得られるようです。

一方で現地採用は、学校が直接先生を雇用するという形であるため、応募条件において基本的に年齢や経験は不問です。
大学卒業後すぐに日本人学校の先生になったぼくは、この現地採用で雇ってもらいました。

責任の重い仕事は、経験や実力が豊富な文科派遣の先生が担うことが多いですが、おおむね仕事内容は文科派遣も現地採用もあまり変わりはありません。


メリット

日本人学校の先生として働くことのメリットを紹介します。
特に、「新卒で日本人学校の教員として働く」という立場で書いています。

①素直な子どもが多く、保護者も教育活動に協力的

日本人学校に通う子どもの親は駐在員であることが多く、経済的にも文化的にも安定した家庭であることがほとんどです。

そのため、素直で学力の高い子どもが多いです。

もちろん学習面や生活面で特別なサポートが必要な児童生徒もいますが、複雑な家庭環境が原因で荒れた言動が目立つというような子どもはほぼいません。

また、保護者は高い学歴を有している方が多いため、教育の重要性をよく理解し、学校の教育活動に積極的に協力してくれます。
特にビザの関係で母親が働けない家庭がほとんどであるため、子どもの教育にかける熱意は非常に高いです。

保護者からの要望も多く寄せられますが、決して無理難題という感じではありません。
教員にとってプレッシャーに感じることもありますが、常識的な対応をしていけば良好な関係を気づいて行けます。

経験値の少ない新卒教員でも、円滑に学級運営を行うことができます。


②優秀な教職員が多い

文科派遣の先生方のほとんどは、熱意があって優秀な先生です。

北は北海道から南は沖縄県まで様々な地域から派遣されているため、いろいろな自治体の教育実践について触れることができます。

ICT教育や小学校の英語教育などに精通した先生方も多くいらっしゃいます。

自分から積極的に学ぶ姿勢をもっていれば、多くのことを吸収できると思います。
ぼくはあまり熱心な方ではありませんでしたが(ごめんなさい🙇‍♂️)、それでもかなり多くのことを学ぶことができました。


③仕事量が少ない(?)

これは個人的な意見ですが、現地採用の教員は仕事量が少ないと思います。
理由は2つあります。

1つ目は、ローカルスタッフの存在です。
式典の会場設営や運動会のライン引き、印刷や備品の修繕などの作業はローカルスタッフが担ってくれます。
細かい事務作業はありますが、教育活動に専念できる環境が整っています。

2つ目の理由は、大変な仕事は文科派遣の先生方に割り振られることが多いからです。
例えば、公務分掌は文科派遣の先生が少し多めに分担されています。
主任職も大抵は文科派遣の先生が任命されます。

負担の大きな仕事を抱えることがあっても、経験豊富な先生方が全面的にサポートしてくれます。


④若い先生が多い

学校の規模にもよりますが、日本国内と比べると若い先生が多いと思います。
例えば、ぼくが4年生を担任したときの学年の先生は、30代が3人、20代が3人でした。
新卒の先生もたくさんいます。

純粋に職場に同世代の人が多いと楽しいです。


⑤長期休暇がとりやすい

学校によるとは思いますが、ぼくが働いていた日本人学校では、長期休暇の度に2〜3週間ほど連続して休暇を取ることができていました。

理由は研修がないからです。

日本の場合は長期休暇中に自治体ごとの教科研修等があると思いますが、近隣に同様の学校がない日本人学校では、他校の教員と研修をする機会がありません。
校内研修は充実していますが、それらは学期中に行われるため、長期休暇はまるまる休みを取れることが多いです。


デメリット

教員としてのデメリット、というよりは生活していく上での懸念事項と言った感じです。

①任期満了後は無職

現地採用教員は学校に直接雇用されているため、任期(3年前後)が切れると無職になります。

大半の日本人学校が最終年度で教員採用試験を受験することを認めているため、本帰国した年の4月から日本国内の正規教員として働くことは可能ですが、いずれにせよ再度教採を受けたり、就職活動をしたりする必要があるのは事実です。

ただ、日本人学校で先生をしていたという経験は貴重なので、上手にアピールすれば教採や就活で有利になるのは間違いありません。


②現地の生活に適応できないとしんどい

これに尽きます。

多くの日本人学校が設置されている東南アジアは、日本と比べると治安面や衛生面で心配なところが多いです。
また、文化面や国民性といったところで日本との違いもたくさん見られます。

潔癖な人や神経質な人は、あまり向いていないと思います。
自分の思い通りにいかないことも含めて、カルチャーショックを楽しむことが大切です。

ポジティブに捉えれば、毎日何かしらの事件が起きるので、好奇心が強い人は刺激的な日々を過ごすことができます。


③日本人コミュニティーが狭い

在住日本人が行くところは限られています。
ショッピングモールやレストランなど、休日の外出先で児童生徒や保護者と出会うことは結構あります。
また、思わぬところで人間関係がつながっていたりします。

海外だからといってハメを外しすぎると、すぐに悪い噂が立ってしまいます。
どこで誰が見ているのか分からないし、特に奥様方の間で情報が流れる速さは凄まじいものがあります。

私生活がだらしない人は要注意です。


日本人学校の先生が向いている人

まず、海外の生活に適応できる自信がある人
先生どうこういう前に、生活面でストレスを抱えてしまうとひたすら辛し、仕事にも悪い影響が出ます。

次に、教員になるのが不安な人、あるいは教員になろうか悩んでいる人。
日本人学校は日本の学校以上に、新卒の先生にとって恵まれた環境が整っていると思います。

日本人学校で先生をやってみて「学校の先生は向いてないな、嫌だな」と思った人は、日本の学校で先生をやるのは困難だと思います。

だからこそ、ぼくは教員になるのが不安な人に日本人学校を勧めます。

任期期間中の2,3年間は、自分の教員としての適性を見極める良い期間になるはずです。


まとめ

ぼくは今、学校の教員ではありませんし、今後も教員になることはないと思います。
それでも、日本人学校の先生をやって良かったと思っています。

この記事を読んで、日本人学校の先生という仕事に興味をもってくれる人が増えたら幸いです。

「じゃあ、日本人学校の先生になるにはどうすればいいのか(現地採用編)」は、後日書きたいと思います。

乞うご期待。

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