
行動を支えるデザイン 【ユーザー名編】
Connehito inc. ママリのデザイナー きよえ氏です。サービスデザイン全般を担っています。
先日、ママリの登録導線をリニューアルしました。その振り返りをしている際におもしろい改善を見つけたので、noteにまとめてみようと思います。
入力フォームのUI改善
以下はママリの初回登録時に通る「ニックネーム登録画面」です。左がこれまでのUI、右がこれからのUIです。
ボタンや文言など全面的に改善を行ったのですが、その中で特に工夫したのは「入力フォームの表現」です。
入力フォームの右側に"さん"を配置することで、ママさん同士でコミュニケーションしやすいユーザー名を登録してもらえるように体験設計をしました。
ママリはママさん同士が会話をしながら課題解決を行う場所なので、コミュニケーションのしやすさは非常に重要です。現状のママリは、匿名でありながら、その先にいるママを感じられる、いわば"2.5次元のような世界"となっています。
そのためママさん達は「○○さん」と現実のように呼び合えるような、"その人らしいユーザー名"をつけてくれる方がほとんど。ですが時折、このようなユーザー名を目にすることがあります。
1. 文字数が長く、適当なユーザー名 (読みづらい)
「あああああああああああ」「hgalskajfalkgfjk」など。
2. 数字・顔文字で表現されたユーザー名 (読めない)
「12333」「(☝︎ ՞ਊ ՞)☝︎」など。
(※実際に近い状態で加工しています)
設定することは決して悪いことではありませんが、他のママさん達とコミュニケーションを取る際に「この人は本当に悩んでいるのかな?」「本当にママなのかな?」といったモヤモヤに繋がることがあります。設定したママさんも意図的ではないはずなので、健全ではないですよね。
「推奨しないユーザー名」の定義
実際の変化を調査するにあたり、以下のいずれかに該当するユーザー名を「推奨しないユーザー名」と仮定し調査を行いました。
・10文字以上で表現されたもの
・数字・顔文字で表現されたもの
10文字以上をボーダーに仮定したのは、ユーザー名を文字数別に目視で確認したところ、"読めない・読みづらい"ものは10文字以上から目立ってくることが分かったからです。
もちろん10文字以上でも呼びやすいものは多く見られますが、それらを弾いて分析するのは大変なのでざっくり見ることにしました。
仮説立て
調査に入る前に、以下のような仮説を立てました。
仮説 : 「推奨しないユーザー名」が減る!
・10文字以上のユーザー名が30%減る。
・数字・顔文字で表現されたユーザー名が10%減る。
調査
今回の調査ツールはSequel proを使用しました。SQLを叩いてデータを見る方法を、個人的に練習しているからです。
調査その1 「文字数の変化」
リリース前後の登録ユーザー名を文字数別に集計し、10文字以上の割合を抽出しました。以下を見ると、2〜3文字のユーザー名の割合が増えていることがわかります。
10文字以上のユーザー名の割合を見ると、全体の半分、53%減少していました!仮説の30%を上回る結果に。
この調査で使用したクエリはこちらです。
SELECT CHAR_LENGTH(u.ユーザー名) AS 文字数, COUNT(u.ID)
FROM ユーザーテーブル AS u
WHERE u.登録日 BETWEEN '2017-XX-XX 00:00:00' AND '2017-XX-XX 23:59:59'
GROUP by CHAR_LENGTH(u.ユーザー名);
調査その2 「数字を含むユーザー名の変化」
リリース前後の"数字を含む"ユーザー名を抽出し、全体との割合を比較しました。こちらも2分の1まで改善されていました。仮説はそもそもの母数が少ないことを考慮できてなかったので、大きく違っていました。
今後は数字を入れられないようバリデーション制御をすればいいのでは?と一瞬頭をよぎりましたが、数字を含んでいても、例えば「3児のちびママさん」のようなユーザー名なら呼びやすいし、お子さんのステータスなどの表現はコミュニティ的にもポジティブなので、考えないことにしました。
この調査で使用したクエリはこちらです。
SELECT ユーザー名 FROM ユーザーテーブル
WHERE ユーザー名 REGEXP '[0-9]'
AND 登録日 BETWEEN '2017-XX-XX 00:00:00' AND '2017-XX-XX 23:59:59'
調査その3 「顔文字を含むユーザー名の変化」
リリース前後の"("を含むユーザー名を抽出し、割合を比較しました。こちらは3分の1まで改善されていました。仮説は同じくそもそもの母数が少ないことを考慮できてなかったので、大きく違っていました。
バリデーション制御についてはこちらも考えないことにしました。「翼ちゃん(♡´艸`)」 のようなユーザー名なら呼びやすいし、顔文字を使用したその人らしい表現も多く見受けられるからです。
この調査で使用したクエリはこちらです。
SELECT ユーザー名 FROM ユーザーテーブル
WHERE ユーザー名 REGEXP '[(]'
AND 登録日 BETWEEN '2017-XX-XX 00:00:00' AND '2017-XX-XX 23:59:59'
調査その4 「推奨されるユーザー名の変化」
最後に「推奨されるユーザー名」の表現には変化があったのかを目視で500件ずつ調査してみました。結果は、若干の文字数の変化は感じられましたが、表現自体はそこまで変わってないようでした。
この調査で使用したクエリはこちらです。
SELECT ユーザー名 FROM ユーザーテーブル
WHERE 登録日 BETWEEN '2017-XX-XX 00:00:00' AND '2017-XX-XX 23:59:59' LIMIT 500
まとめ
今回4つの調査を行いましたが、これらを見るとこのUI改善は、「ネガティブを減らす」改善だったように思います。
・10文字以上で表現されたユーザー名 = 53%減少
・数字を含むユーザー名 = 2分の1改善
・顔文字を含むユーザー名 = 3分の1改善
・推奨されるユーザー名 = 表現に変化なし
正直、ここまで変化があるとは思いませんでした。だって、"さん"を付けただけ...。小さな改善でも、ユーザーの行動に寄り添った改善は大きな価値につながるんだな、と非常におもしろさを感じました。
また、ここまで振り返ってみましたが、その先の「実際にどうコミュニケーションに寄与したか」といった所まではまだ分かっていません。
でもきっと、ネガティブな体験を減らすきっかけにはなってくれるはず。
最後に
ここまで読んでくださりありがとうございました。未熟な点もあるかと思いますが、あたたかいフィードバックをお待ちしております!