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「仕事楽しい?」って訊かないで欲しい

日雇い派遣で段ボールに何かを積める流れ作業をしていたときのこと。

工程は

①段ボールに商品を詰める

②フタにノリをつける

③フタを押さえる

こんな感じだった。私は①の工程だった。

正直、面白くない。

どの工程も面白くないハズだ。ずっと同じことしてんだもん。

仕事開始から3時間くらい(体感時間は10時間)経ち、脳みそが徐々に溶け始めた頃、③のヤツが信じられないことを言った。

「コレ楽しいッス!」

③のヤツはウイニングイレブンをしていたワケではないし、酒池肉林のパーティを繰り広げていたワケではない。

段ボールのフタを押さえていただけだ。

「この仕事めっちゃ楽しいッス!」

どうやらその職場の社員に「仕事楽しい?」と訊かれて答えていた模様。

私は腹が立った。楽しいワケがないからである。

そいつは社員の人に好印象を持ってもらうため、そんなウソをついたのだろう。

こんなモンが楽しいって、普段は独房にでも入れられてるんですかね?

答える方も答える方だが、主に悪いのは訊く方である。

★★★

「仕事楽しい?」

私はこの質問が嫌いだ。

仕事というのは楽しくない。本質的に楽しいものなら、「ブルーマンデー」とか「サザエさんシンドローム」みたいな言葉も生まれないだろう。

本質的な嫌いなもの、という意味では、

「ゴキブリ好き?」

と訊いているのと同じようなことだと思う。だから「仕事なんて嫌いです。大っ嫌いです。とってもしんどいです」と答えたいところ。

でも、そんなことを言うと必ず怪訝な顔をされ、こう言われる。「皆、楽しくないんやで! しんどいんやで!」

ほな、訊くなよ。そんなこと。

こんな人が大概、役職の上の方にいるため我々はウソでも「楽しいです!」と答えるしかない。残念ながらこういう人は頻繁に訊いてくる。「仕事楽しい?」と。「楽しくなけりゃイカンのか?」と腹が立ってくる。

仕事なんて楽しくなくていい。

なんかのビジネス書で読んだことがある。「仕事というのはオトナの遊園地なのです!」

んなワケねーだろ。

楽しいものは「楽しいハズだ」なんて思わなくても、そのうち楽しめるようになる。その時点で楽しくないなら、それは楽しくないもの。

私も営業マン時代にたくさんの本を読んで、意識転換を図ったり、やり方を模索してみたりしたけど、全然楽しくならない。「本の通り考えて、やったけど、楽しくならねーじゃねーかよ」とフラストレーションが溜まる一方だった。

「仕事はツライもの、楽しくないもの」と最初から思っていれば、仕事で嫌なことが起こっても「ふーん、まあ、仕方ないよね」と、思える。

仕事なんて楽しくなくて当たり前。楽しければラッキー、という態度で働くのが健康的でいいと思う。

だから「仕事楽しい?」なんて訊かないで欲しい。我々は「楽しいです」と答えるほかないんだから。

訊くなら訊くで、ウソを強要しないで、本人の正直な気持ちに寄り添ってやってほしいです。「皆しんどいんやで!」や、のうて。「そうか。ま、そんなもんや」みたいな。

#エッセイ #仕事 #楽しい

働きたくないんです。