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仏壇屋の憂鬱

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仏壇屋での体験や、仏事に関する情報を書いてます。
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「元引越屋」の静子さん 2

前回までのあらすじアホの社長のせいで、華奢な静子さんと、私とで重たい仏壇配達に行くことになった。 ★★★ 静子さんを助手席に乗せ、配達先に向かうとそこはマンションだった。部屋番号から推測すると、エレベーターなしの三階である。すなわち最悪である。 「わたしで大丈夫でしょうか……?」静子さんは泣きそうな顔で言った。 「だ、大丈夫ですよ……」私は心にもないことを言った。 マンションの下に車を停め、仏壇をひっぱり出す。仏壇は本体と下台で分かれるようになっている。 下台は小

「元引越屋」の静子さん

引越屋で長いこと働いていた、静子さん(仮名)がパートとして仏壇屋に入ってきた。口数が少ない大人しい人で、年はアラフォーくらい。 華奢な体型で、ちょっと大きな段ボールすら持てそうにない人だった。 なので、静子さんは働いていた引越屋で、事務員をやっていたことが容易に想像できる。というか、男でもキツイ引越作業を女性がするのはちょっと考えられない。 そんな当たり前のことが、ひとりだけわかっていない人がいた。若山富三郎そっくりの社長である。 ★★★ ある日、仏壇の配達が同じ時