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仏壇屋の憂鬱

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仏壇屋での体験や、仏事に関する情報を書いてます。
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2018年11月の記事一覧

仏壇屋のお仕事紹介『位牌作成』

さて、すっかりモチベーションがなくなってしまった仏壇屋のお仕事紹介ですが、頑張って書きます。 今回は『位牌作成』です。 位牌というのは戒名が書かれた置物です。浄土真宗は使いません。 お客さんが店に来て位牌を作りにくるんですが、位牌作りにもややこしいルールがあり、その場ではスカっと決まることはありません。 位牌作成のルールとは…… ・先祖の位牌と同じか似た形にする ・先祖の位牌より大きくしてはいけない ・先祖の位牌と同じ文字を使う(『天寿』『行年』『享年』など)

店長の「アレ」

店長は60歳前だというのに、ボケ気味。 従業員の名前を忘れる、住職の顔を忘れる、3時間くらい話したお客さんの顔を次の日には忘れる、宗派を忘れる…… その中でも一番困るのは固有名詞が出てこないこと。 「ちょっと、アレ取って」と言います。 この「アレ」は「はさみ」だったりします。「はさみ」が出てこんのです。この店長は。 場面によってその「アレ」は「ガムテープ」だったり、「ペン」だったりします。そのときの状況を見てこちらが推測します。なにこの仕事。 これくらいなら皆さん

仏壇屋のお仕事紹介『仏壇納品』

「仏壇のご安置(納品)が一番大切な仕事」 この道35年の店長の口癖でした。 納品後、店長はさらにドヤ顔で言います。 「これからの付き合いの方が長いですから」 売って終わりじゃない。その後もお客さんとの関係は長く続く。 付き合いの始まりが『仏壇納品』。ここをしくじるとそのお客さんとの関係は途絶えます。だから店長は納品が一番大切だと言ったんですね。 今回は仏壇の納品を紹介したいと思います。 仏壇、仏具の梱包仏壇の引き出しには緩衝材を挟み、飛び出ないようにします。中の

仏壇屋のお仕事紹介『仏壇販売』

今回はいよいよメインの仕事、『仏壇販売』です。 これができて初めて、仏壇屋を名乗ることができます。 気をつけるポイントがいくつかあります。 ・宗派、菩提寺 ・置き場所 ・仏具 ・予算 順を追って説明していきます。 宗派、菩提寺宗派によって仏壇は違いますので、お客さんが来たらまず宗派を聞きます。 浄土系(「南無阿弥陀仏」の宗派)は金仏壇、日蓮系は法華壇(位牌を入れる部屋がある)、それ以外は唐木仏壇(黒いやつ)です。 モダン仏壇(家具みたいな仏壇)はどの宗派で

仏像の洗い方

「仏像を綺麗にしたってくれへん?」 こんな依頼がたまに来る。 仏具の中でも、仏像は特に触ることが憚られる。なんせ仏さんそのものだ。「触るなんて考えられない」という人も。 なので、めちゃくちゃホコリが溜まる。 そこで仏壇屋である我々が預かって綺麗にするのだ。 お客さんは「なにか特殊な方法で綺麗にしてくれるんだろう。なんてったって仏を掃除するんだから」と思うかもしれない。 ということで、仏壇屋である私がしていた仏像の洗い方を紹介しようと思う。 1.クモの巣だらけの地

住職の茶番

住職が檀家さんを連れて、仏壇を買いにくるときがある。 これは仏壇屋にとって最悪だ。 住職は檀家さんに威厳を見せつけたいので、「あれ付けろ、これ付けろ、オマケにあれも付けろ、そして半額にせえ」と無茶苦茶言ってくるからだ。 さすがにすべては無理だが、ある程度叶えられると、住職は檀家さんから感謝され「さすが先生っ! ついてきてくれてよかった!」となり、お布施が弾み、威厳も保てる。 しかし仏壇屋は儲けが減り、売った人は社長に嫌味を言われ、お局さんから3日くらい嫌がらせを受ける

仏壇屋のお仕事紹介『寺院営業のやり方』

寺院営業の目的は「住職と仲良くなり、注文につなげる」というもの。 今回は「じゃあ仲良くなるには、どうしたらいいの?」という話です。 ポイントはいくつかあります。 ・坊守さん(奥さん)と仲良くなる ・雑務をこなして、恩を着せる ・何回も訪問し、おしゃべりする ・檀家さんを大切にする です。それぞれ紹介します。 坊守さん(奥さん)と仲良くなるお寺を訪問したとき、まず対応してくれるのは奥さんです。仲の良い寺では住職が対応してくれますが、あまり付き合いのない寺では

宗派別、お坊さんのイメージ

仏壇屋では沢山の住職と接してきました。 そのなかで思ったことは「宗派別でお坊さんに特徴がある! ような気がする!」でした。 ということで、宗派別のお坊さんのイメージを紹介したいと思います。 ※あくまで私の個人的イメージです。 真言宗 「頑固」 真言は山で厳しい修行をしているからか、他の宗派以上に教えに厳格なような気がしました。 良く言えば、「教えに忠実」。 悪く言えば、「融通がきかない」。 個人的に一番付き合いにくい宗派です。(キャッ、言っちゃった) 浄土

仏壇屋のお仕事紹介『寺院営業の目的』

『寺院営業』で住職と仲良くする理由はいくつかあります。 ・仏壇の紹介をもらう(メイン) ・行事の際、大量注文をもらう ・仏具を買ってもらう。もしくは修復。 ・細々した注文をもらう ・檀家さんの仕事を紹介してもらう などです。 それぞれ紹介します。 仏壇の紹介をもらう(メイン)檀家さんが亡くなり、「仏壇がほしい」となった際、住職に口添えしてもらいます。「この店で買ったらいいよ」と。 寺院営業の最大の目的はコレです。 仏壇が決まれば、紹介料として住職に何%か払

仏壇屋のお仕事紹介『接客』

仏壇屋といってもどんな仕事をしているのか、わからないと思います。 なので、仕事のひとつひとつを紹介していきます。 今回は『接客』です。 親身な対応が必須仏壇屋はスーパーみたいにお客さんが自分で選んで、レジに持っていく。というスタイルではないです。 仏壇屋の店舗は小さいので展示するスペースが限られています。そのクセ、仏具の種類はイヤというほど多いです。お客さんの要望を聞いて、倉庫から持ってきたり、カタログを見て取り寄せたりします。 親身になって話を聞く必要があります。

とっても悲しい仏壇処分

「仏壇の処分をお願いします」店に来た男性が言った。 仏壇処分の依頼だ。これは普通のこと。しかし、次のセリフが普通じゃなかった。 「なにも喋らず、静かに、そしてできるだけ素早く仏壇の処分をお願いします」 …………意味がわからんけど、そういうならそうします。 男性は仏壇処分の代金を先払いし、帰っていった。 ★★★ 先輩の土井さんと仏壇を処分する家に行った。いたって普通の家だ。 男性が出てきて、そっと私たちに言った。「くれぐれも静かにお願いします」 私たちは中に入り