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Part7 水蜘蛛|忍者の知恵、水を渡る道具作り

今回の第7回サークル(Shinobi Design Community)では、水蜘蛛の話をベースに、水を渡る忍器(忍者の道具)「水器」について紹介します。

海や川、水を渡るための忍者道具「水器」

水器とは、川や海などの水を渡るための忍者の道具です。水器には大きく2つのパターンがあり、1つ目は水を渡るために専用に作ったもの、2つ目は急なとき、ありあわせのもので作ったものとがあります。(水を渡るという表現は、船のように濡れず水上を移動する物と、浮き輪のように水に浸かって移動する物があるからです。)

専用に作った水器には、浮橋、水蜘蛛、挟箱舟(はさみはこぶね)などがあります。ありあわせで作る水器には、蒲筏(がまいかだ)、甕筏(かめいかだ)などがあります。

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水蜘蛛は浮き輪のようにして使う

水蜘蛛の使い方として多くの人がイメージするのは、両足に水蜘蛛を履き水面を歩行するところでしょう。しかし、実際のところ水蜘蛛を履いて水面を歩くのはすごく難しいです。そもそも水蜘蛛が記載されている『万川集海』には、水蜘蛛の作り方はあれど使用法については説明されてなく、使い方は口伝で伝承されていました。(現在正確な使用法は分かっていない)

仮に、水蜘蛛を両足に履くとしても『万川集海』に水蜘蛛の寸法は外径約65cm(内径約35cm)と書かれており、両足に履くと大きすぎて足を動かすのが困難です。

そこで現在考えられている有力な使用法は、水蜘蛛の中央にある板に座って漕ぐ、または泳ぐというものです。要するに水蜘蛛は浮き輪だったということですね。

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水蜘蛛という名前の真実

蜘蛛のような平たい道具を両足に履き、水の上に浮くためではないとすると、なぜ水蜘蛛には蜘蛛という名前がつけられているのでしょうか?

私の考えでは、そこには道具の形ではなく使い方に命名のポイントがあったからだと思います。

忍者は動物や虫の動きを参考にして様々な術を考えています。狐歩きや犬歩き、牛馬の伝え、狐狼の習い、狸隠れ…など多くの動物が関係する術があります。『万川集海』には陰忍編に「穴蜘蛛地蜘蛛の術」という術があります。これは、屋敷に侵入するとき塀の根元の土を掘り起こして侵入用の穴を開けるという忍び込みの術です。(ジグモという壁際に巣穴を掘る蜘蛛から真似たものと考えられる)術名からは、蜘蛛のように這って素早く土を掻き出し、穴を四足で這って侵入する様子がイメージされます。

また『万川集海』には「蜘蛛梯」という滑車を使ったロープ昇降器具が記載されています。「下り蜘蛛」という忍術もあり、これはロープを利用して降下する術です。これらは蜘蛛が糸を吐いて下りるところから着想を得ているのでしょう。

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では水蜘蛛に話を戻してみます。『万川集海』に忍器編記載の「水蜘蛛」の後には「他流水蜘蛛」という提灯状の浮き輪のような水器があります。この2種類の水蜘蛛からわかるのは、水蜘蛛は必ずしも木板で作られた円形の道具ではないということです。しかし、形は違うのに水蜘蛛という同じ名前を使っている。なぜか?それは使い方が似ているからだと考えます。

「水蜘蛛」は中央の板に座って、ヘソ下を水につけ手足で水を掻き進みます。「他流水蜘蛛」はへそ下に提灯状の浮き具を巻いて、へそ下を水につけて手足で水掻き進みます。蜘蛛と命名された理由は、この水掻きを行う様子(上体前傾で両手足を広げて蜘蛛の足のように動かしていること)からであると考えます。

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「浮帯」水器を作ってみよう

水器に関する知識はこのくらいにして、次は作り方について説明しましょう。今回作ってみるのは「浮帯(腰帯)」という水器です。腰帯は、古式泳法(日本泳法)の小堀流踏水術に伝わる浮き具で、他流水蜘蛛に近いものです。

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伝書には小さい瓢箪を使うとありますが、ここでは280mlくらいの小さなペットボトルを使いましょう。身の回りにあるものを臨機応変に扱うのが忍びの上手です。

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